出版社内容情報
大澤真幸・熊野純彦両氏の責任編集による新たな叢書、ついに刊行開始!「自らの思考を極限までつき詰めた思想家」たちの、思想の根源に迫る決定版。21世紀のいま、この困難な時代を乗り越えるには、まさにこれらの極限にまで到達した思想こそ、参照に値するだろう。
本書は、ニーチェの道徳批判に焦点を当てる。ニーチェは道徳を批判した。今ある道徳を改善するためではない。われわれの道徳意識を「キリスト教道徳」と規定し、これに対して一切の価値転換を迫る。では、なぜ批判したのだろうか。正義や同情をどう考えればいいのだろうか。主として『道徳の系譜学』を中心に読み解き、ニーチェ哲学の魅力と射程に迫る。
目次
第1章 歴史と系譜学(古典文献学の問題;批判的歴史と歴史的哲学 ほか)
第2章 ルサンチマン(イギリスの心理学者の道徳起源論;貴族的価値評価と価値転換 ほか)
第3章 良心と禁欲(主権的個人と疚しい良心;内攻的残虐から神に対する罪へ ほか)
第4章 生の価値と遠近法(位階秩序と生の価値;道徳の遠近法 ほか)
著者等紹介
城戸淳[キドアツシ]
1972年生まれ。東北大学大学院文学研究科博士課程退学。東北大学大学院文学研究科准教授。博士(文学)。専門は西洋近代哲学史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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あっきー
3
これは入門書なのかもしれないが、ニーチェ哲学の難解さを改めて実感し、一筋縄ではいかないと思い知らされた…道徳を批判するという異端者であるニーチェにはまだ近づけない…2024/06/19
♨️
3
『道徳の系譜学』を、①「系譜学」とは何で、なぜそれを使って道徳を考えるのか、②「ルサンチマン」概念は、我々がその内部にいる(と思っている)だけで、相当に無理があるようにも見える(たとえば「偽善」と違って(奴隷)道徳を駆動するルサンチマンはその起源が忘れられていなければならない)そうした無理が、ニーチェの中でどう描かれているか、③きわめて無理のある「ルサンチマン」は、しかし、奴隷を従わせ、貴族を従わせ、普遍的道徳を生み出したということがニーチェによって分析される、どのような戦略で無理を乗り越えたか、2022/05/03
ハッカうどん
1
ニーチェ『道徳の系譜学』のみならず、他のニーチェ書、哲学者を援用・比較・検討しながら、ニーチェの道徳理論それ自体を読み解いていく。ルサンチマンや疚しい良心など、ニーチェ哲学の鍵概念について理解を深めることができたし、着実な分析が進められるなかで「『道徳の系譜学』を書いたニーチェ」の姿がすこしつかめた(影の切れ端にも満たないかもだけど)のがよかった。著者のニーチェ→カント→ニーチェという遍歴も、本書の冷静な筆致に一役かっているのかな。本書自体が系譜学書といえるかも。テクスト内に閉じ籠ってないのがよかった。2024/08/08
takao
0
ふむ2025/01/31
森中信彦
0
私はニーチェの著書に何度も挑戦しているが読み通したことがない。箴言の連続で読者にわかりやすい解説がないためだ。だからといって、そのような著書を読まずに解説本を先に読むことにも抵抗があったため、魅力を感じながら遠い存在だった。しかしどうしても彼が考えていることを知りたいと思い、この解説本を購入した。 結論から言うと、購入して正解だった。ニーチェの言説を鋭く、しかもわかりやすく解説している。なんとなくイメージしていたニーチェの道徳批判の意義を明確にできたと感じている。 あわせて感心したのは、(続く) 2024/11/18