出版社内容情報
楡 周平[ニレ シュウヘイ]
著・文・その他
内容説明
ネット通販会社の物流センターで派遣社員として、働きはじめた大学生の百瀬陽一は、非正規労働者の困窮ぶりを目の当たりにする。広がる収入格差への不満を訴えて「バルス」と名乗る者が、物流の弱点をつくテロを仕掛けた。多くの産業が打撃を受け、経済が滞り…。日本社会が抱える危機を描いた衝撃作。
著者等紹介
楡周平[ニレシュウヘイ]
1957年生まれ。慶應義塾大学大学院修了。米国企業在職中の1996年に発表した初の国際謀略小説『Cの福音』がベストセラーに。翌年から作家業に専念(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kei302
49
昨年亡くなられた今野浩先生は、著書の中で「(某電子小売り)A・・は絶対に利用しない」と断言されていた。送料無料当り前を疑えですね。非正規派遣リストラ格差社会、ステレオタイプな切り取り方が乱暴で、扱っている範囲が狭すぎますが、言いたいことはわかります。私は性善説を信じたい。コープ宅配もあるし、訪問介護で買い物代行もしてもらえる。ネガティブに考えるの、よくないね。2023/05/30
PEN-F
35
ジブリ映画“天空の城ラピュタ”でお馴染みのあのセリフがタイトル。ラピュタではバルスは破壊や滅びを意味する呪文だが、なるほど、今作では非正規雇用が労働人口の4割を占めるまでになってしまった今の社会を破壊し、そして再生への道を歩もうとするまでが描かれていた社会派小説。“送料無料”の言葉についつい魅力を感じてしまうが、そもそもタダで物が送れることなんてありえない。必ずどこかが負担を負っている。それが派遣社員だったり下請け企業だったり。“送料無料”の呪文の魅力と恐ろしさ。2024/10/26
mayu
26
初読み作家さん。有名大学に通う陽一は大企業ばかりを就活先に選び、就職浪人。大手通販会社の物流センターで派遣社員として働いている。ノルマが達成できなければクビ、代わりはいくらでもいる。しっかり務めていても期間を越えて働く事はできない。派遣先で受けた待遇から、非正規社員の現状や闇を知る。そんな中バルスによって、通販には欠かせない物流を脅かすテロが起きる。 低価格で次の日には商品が届く現代。裏ではどういう事が起こっているのか、格差社会とやり直しがきかない社会、非正規社員の今と未来をとても考えさせられる一冊。2023/05/12
クキモン
16
消費者が安い商品を望む故のコストカットだと経営者は言うけれど、物を買うのは労働者。お金に余裕がないから安売りに走る。この悪循環を何とかしなければ日本の将来は恐ろしいことになると実感させられた社会派小説。2023/01/08
lily
14
「非正規労働者の需要を高めてんのは誰でもない、消費者なんだ」ネット通販会社のスロット(明らかア〇ゾンのことやん)の宅配センターで相次ぐ爆破テロ。犯人は『天空の城ラピュタ』の滅びの呪文バルスを名乗り、非正規労働者の待遇改善を主張していく。犯人は容易に想像できる人物でミステリー要素はほぼないが、配送料無料の裏に潜む宅配業の厳しい労働実態を描く経済小説としては一級品。ただバルスの行動が社会を変えるかは疑問符が付く。コンシューマーリテラシーというか、私たちが賢い消費をすることが大事である。これが難しいのだけれど…2024/11/26