内容説明
明治期から戦争を経て高度経済成長期に至る「国家のための建築」の一〇〇年。そして、その特異な役割から解放された建築が茫漠とした状況を生み出した、この五〇年。私たちの現在地を見定め、未来を展望するために―専門的になりすぎず、単なる建築物の羅列でもないコンパクトな建築の歴史。それぞれの時代に何が求められ、何が考えられたのか、その背景には何があったのかを鮮やかに描き出す。批評家としても知られる建築家による明快にして本格的な概説書!
目次
第1部 国家的段階(明治維新と体系的な西洋式建築の導入;非体系的な西洋式建築の導入;国家と建築家;明治期における西洋式建築受容の到達点;直訳的受容から日本固有の建築へ ほか)
第2部 ポスト国家的段階(ポスト国家的段階の初期設定;発散的な多様化と分断の露呈;新世代の建築家のリアリティと磯崎新;定着した分断とそれをまたぐもの;バブルの時代 ほか)
著者等紹介
日埜直彦[ヒノナオヒコ]
1971年、茨城県生まれ。建築家。大阪大学工学部建築工学科卒業。建築設計事務所勤務を経て、2002年、日埜建築設計事務所設立(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アメヲトコ
6
21年3月刊。明治維新から現代までおよそ150年にわたる日本の建築史を、国家的段階の100年とポスト国家的段階の50年という見取り図から描いた一冊。メチエとしては異例のページ数で、極めて多くの情報量を明快な図式のもとに整理した力作です。索引が欲しい感じ。しかし最終章でも語られるような建築界の分断と混迷状況、この先どこへ向かうのやら。2021/08/11
owlsoul
2
明治維新によって近代化を急いだ日本は、国ぐるみで西洋式建築の導入を図った。当時の建築家は国家に仕える技師として、日本国の近代化という使命を負っていた。しかし、模倣された建築様式は形式だけで思想がない。そのことに気づいた建築家たちは、やがて自らが目指すべき「日本の様式」について考え始める。大戦後の復興という莫大な建築需要は業界の産業化を後押しし、国家は建築に対してのインセンティブを失った。資本の論理で動く組織の建築家がマジョリティとなった現在、一部の建築家は独自の思想を貫いて世界的な活躍を遂げている。2021/09/20
kmori299
1
凄い情報量でとても面白かった。建築史って思想の発露としての建築のことばかり書いてあることが多いように思うけど、産業としての建築史や特筆すべきことが無い大多数の建築の歴史が合わせて記述されているのがとても良い。私はこの、建築に関する思想みたいなのがほとんど理解できなかったクチなのだけど、歴史の流れの中で書かれるとどういうことを考えたのか、少しわかるような気にもなった。2022/04/26
引用
1
一般書なので概ねよくわかるし戦中戦後の政治的イデオロギーからみたモダニズム解釈などは大変勉強になった。しかし2部に入ってからは磯崎新に寄りすぎており、たしかにラコルーニャは名作だがなにも結論めいた位置付けにしておくべきという実感はないし、隈研吾の扱いが不当に小さい印象もある2022/02/03
Go Extreme
1
国家的段階:明治維新と体系的な西洋式建築の導入 非体系的な西洋式建築導入 国家と建築家 明治期における西洋式建築受容の到達点 直訳的受容から日本固有の建築へ 近代化の進行と下からの近代化の立ち上がり 近代建築の受容と建築家の指向の分岐 総動員体制とテクノクラシー 戦災復興と近代建築の隆盛 建築生産の産業化と建築家のマイノリティ化 国家的段階の終わり ポスト国家的段階:初期設定 発散的な多様化と分断 新世代建築家のリアリティと磯崎新 分断とまたぐもの バブルの時代 日本人建築家の国際的な活躍 中間決算2021/04/26