内容説明
ヨーロッパが「トルコの脅威」と力説するオスマン帝国は、「トルコ人の国家」でも「イスラム教徒だけの国家」だったわけでもない。宗教的寛容性と強力な中央集権体制をもち世界帝国を目指す「先進国」への恐れこそが、「ヨーロッパ」をつくり、近代化を促したのだ。数百年にわたる多宗教・多言語・多文化の共生の地が、民族・宗教紛争の舞台になるまで。
目次
プロローグ―「トルコ行進曲」の起源
第1章 オスマン帝国の起源(ユーラシア草原を西へ―トルコ系遊牧民の西漸;トルコ族のイスラム化とアナトリアのトルコ化 ほか)
第2章 ヨーロッパが震えた日々―オスマン帝国の発展(オスマン朝の興隆―ムラト一世とバヤズィト一世の時代;世界帝国への道―メフメット二世とコンスタンティノープル征服 ほか)
第3章 近代ヨーロッパの形成とオスマン帝国(普遍帝国オスマン―「壮麗者」スレイマン一世とウィーン包囲;オスマン対ハプスブルク ほか)
第4章 逆転―ヨーロッパの拡張とオスマン帝国(最初の暗雲―スレイマン一世の死;変化の兆し―一六世紀後半のヨーロッパ ほか)
エピローグ―「トルコ軍楽」の変容
著者等紹介
新井政美[アライマサミ]
1953年生まれ。東京大学大学院東洋史専攻博士課程単位取得退学。東京外国語大学名誉教授。トルコ歴史協会名誉会員。専攻はオスマン帝国史、トルコ近代史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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chantal(シャンタール)
77
ヨーロッパ、国が多すぎて、複雑過ぎて、ざっと読んだだけではとても理解したとは言えないけれど・・バルカン半島が「火薬庫」と言われてた理由は理解したし、十字軍に代表されるように、キリスト教は基本的に破壊の宗教だと言うことを再認識した。オスマントルコ、宗教や民族に拘らない良い国だったのね。「多様性」が謳われる昨今、オスマントルコを見習ってみるのもいいのでは?モーツァルトのは良く聴くのですぐ思い出せたが、ベートーベンの「トルコ行進曲」はどんなだったっけ?と思ったら楽譜があって、ちゃんと読めたことが嬉しかった。2021/10/07
hal
14
オスマン帝国を中心にしたトルコ系民族の通史。トルコの起源を遡ると、紀元前3世紀末の匈奴にたどり着くとか。元々はモンゴロイドであったのが、西方に移動するにつれコーカソイドとの混血が進んできたそうな。オスマン帝国は、古代ローマ帝国を目指したそうで、民族的にも宗教的にも寛容であったとか。オスマン帝国の歴史というより、ヨーロッパとの関係を中心にしているので、このあたりの歴史が少しあやふやなので、理解するのが難しかった。2021/04/14
若黎
10
こういう本を読むと、ヨーロッパのどの時代と繋がるのかわかっていいのよね。スレイマン大帝とフランソワ1世、カール5世、ヴェネツィア共和国とか。澁谷幸子さんの『寵姫ロクセラーナ』読んでから気になってるスレイマン大帝。篠原千絵さんの『夢の雫、黄金の鳥籠』のこの先も楽しみにしながら、オスマンとヨーロッパの関係を読ませていただきました。塩野七生さんのロードス島攻防記とレパントの海戦、買ったような気がするんだけどなあ。探して読まなきゃ。2021/06/30
刳森伸一
5
近代の入口までのトルコ史で、特にヨーロッパとの関わり合いを中心に描く。どちらか一方の史書を読みだけでは掴みづらい相互の関係に力点が置かれているため、読んでいて刺激的。2021/05/30
Yoko Kakutani 角谷洋子/K
4
イスラーム諸国は排他的なのではないかというイメージを抱きがちなのですが、ドラマ『オスマン帝国外伝』を観たら、あら意外と多国籍な文化を許容した社会ではないかと思われ、本書もその意味で多国籍国家としてのオスマン帝国を読み解く内容でした。そもそもトルコ民族は中央アジアにおいて異民族をどんどん吸収していく過程を経て成り立ったもの。キリスト教徒の盟友がいたオスマン一世、コスモポリタン君主としてのメフメト二世のエピソード、など他民族、宗教に寛容だったオスマン帝国が一大帝国を築く歴史が学べて興味深い。2023/04/09