出版社内容情報
さらし首の名所だった「暗闇坂」にそそり立つ樹齢二千年の大楠。この巨木が次々に人間を呑み込んだのか。近寄る人間たちを狂気に駆り立てる大楠の謎とは。とうてい信じられない怪事件に名探偵・御手洗潔が敢然と挑む。しかしながら真相に迫る御手洗も恐怖にふるえるほど、事件は凄惨を極めるものだった。本格ミステリーの巨匠が精力を注いだ大傑作。
内容説明
暗闇坂の上にある西洋館の屋根に跨がったままの死体が発見される。敷地内に立つ樹齢二千年の大楠が、近寄る人間を呑み込むという伝説は本当だった?巨木の周りで奇妙な事件が相次ぎ起こり、謎の解明に御手洗潔は挑む。その真相は、御手洗が恐怖に震えるほど、凄惨をきわめた!時空を奇想でつなぐ本格大長編。
著者等紹介
島田荘司[シマダソウジ]
1948年広島県福山市生まれ。武蔵野美術大学卒。1981年『占星術殺人事件』で衝撃のデビューを果たして以来、探偵・御手洗潔シリーズや、刑事・吉敷竹史シリーズで圧倒的な人気を博す。2008年、日本ミステリー文学大賞を受賞。また「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」や「本格ミステリー『ベテラン新人』発掘プロジェクト」、台湾にて中国語による「島田荘司推理小説賞」の選考委員を務めるなど、国境を超えた新しい才能の発掘と育成に尽力。日本の本格ミステリーの海外への翻訳、紹介にも積極的に取り組んでいる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
オーウェン
65
この作品から御手洗潔は新たなフィールドへと活躍の場を移す。 それは海外へと出向くことであり、トリックよりはおどろおどろしい雰囲気を重視したミステリ。 表紙の画だけでも実に不気味。 少女が楠の大木の枝に取り込まれているという図。 犯人の執念がこの犯罪を成し遂げる、と同時に手記によってすべてを終わらせようとする締めも、何とも嫌な雰囲気で終わらせる。2023/07/18
Y2K☮
37
なかなかに凄惨。直視し難い部分もあった。だがそういう歴史が存在することを普段は忘れていていいから、記憶の奥底にそっとしまっておきたい。受け手への配慮も大事だけど、タブー視してなかったことにする方がたぶん罪深いから。そして相も変わらず多種多様な角度から繰り出される謎の提示及びその解明プロセス。著者の本格ミステリィには人間そのものや芸術全般に関する深い造詣が詰まっている。ゆえにこそ探偵・御手洗潔が持つ現実離れした万能性と頭の回転の速さが不自然とは映らない。現にこんな大作を創れる島田荘司が実在するのだから、と。2023/06/05
キナコ
35
あまりの面白さに後半一気読み。700ページ越えの長篇ミステリー。人を食べるとの謂れがある大楠を中心として起こる連続殺人事件。死体の描写も生々しいため、グロさが苦手な人は注意が必要。殺人には予想のつかないことが起こるとはいうが…人によっては邪道になりそうな感じのトリックかな。最後の犯人の手記に書かれた運命に翻弄された犯人の心情が悲しすぎる。 御手洗シリーズの四番目らしいが、シリーズの途中からでも楽しめた。シリーズの他の巻も楽しみ!2023/12/16
Yuri
21
時系列で読めていないのでレオナさん、これが初登場なのかなーと感慨深い。ホラー感もある壮大なミステリー。トリックも予想外で楽しめました。2023/10/29
うーちゃん
20
「病院坂の首縊りの家」と混同されやすい作品第1位(私調べ)。ピカピカの改訂新版が出たということで15年振り位の再読。島田荘司作品自体久しく読んでなかったから、ああそうそう、この力技な感じ!と思わず笑みがこぼれました(笑)。"樹齢2千年の大楠が人を喰らう"という幻想怪奇的な雰囲気と、自由な思考でずばっと論理的帰結をしようとする御手洗の活躍、両方を楽しめる。真相に"偶然"の占める割合が大きかったのは残念だった(←案の定、力技でねじ伏せられる)。御手洗との出会いによる、松崎レオナの心の成長もみどころ。2021/04/26