内容説明
問題児の夏紀に手を焼く千夏子の唯一の楽しみは、育児ブログを偽物の幸せで塗り固め、かりそめの優越感に浸ること。だがある夕方、保育園から一本の電話が。「夏紀ちゃんがいなくなりました」。刹那、千夏子は彼女が夏紀を連れ去ったと確信し―。最後に暴かれる千夏子の最大の“嘘”に驚愕する衝撃サスペンス!
著者等紹介
宮西真冬[ミヤニシマフユ]
1984年山口県生まれ。『誰かが見ている』で第52回メフィスト賞を受賞し、デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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tenori
50
欲はきりがなく、執着は次の執着を生む。隣の芝は青く見えるものなのだ。悩みのない生き方をしている人はいない。置かれた環境や価値観の違い。自分にないものを欲しがり他人に求める。そこにすれ違いと軋轢がおきる。その対象が子供であることがせつない。不妊治療、特別養子縁組、産休後の職場復帰、待機児童、SNS依存、夫や恋人の不理解。自分を追い込むことで始まってしまう負の連鎖が、知らずに子供を事件に巻き込むストーリーは嫌ミスの枠を越えた問題提起としても深く刺さる。女性達が主人公だが、男性にも多く読んで考えてほしい一冊。2023/05/04
なっく
35
これはイヤミスというよりも悪趣味、人のプライバシーとか心の裏を無理やり見せられてるみたいで、気持ちが悪かった。登場するママ友たちもたいがいだが、その夫たちもみな妻の仕事や妊活や育児に無関心で非協力的で救いようがない。もうちょっと色んなキャラクターがいた方が深みが出たのではないかな。2021/11/06
JKD
35
ママ友ではなく普段の生活レベルで繋がりを持つ30歳前後の女性たちの心に潜む黒い怪物。互いの思惑のズレから派生する猜疑心が膨れ上がり険悪な雰囲気になったり、良心的に話を聞くことがやがて相手にとって依存症になりストーカーに発展する様子など思い違い、勘違いの連続で負のスパイラルが止まらない。自分のことしか考えない親に辟易し、気持ち悪さがピークになるが、やがてそれぞれが置かれた状況や価値観の違いを悪とみなしてしまうことに気付き反省し平穏な生活に戻る。家族とは何かを説き伏せる道徳番組のようなお話でした。2021/03/14
mayu
29
子供が欲しくても授からない女性、望んで出産したのに子供を愛せない女性達の心がとてもリアル。皆、闇を抱えている。 千夏子の自分の自尊心を保つ為の、偽りのブログ。自分の子供は愛さず、人の不幸を喜び、優越感に浸る姿に嫌な気持ちが広がる。 子供よりも自分の事が大切な姿、産まなければ良かったという叫びに胸が苦しくなる。そしてラストの夏紀の気持ちが辛くて涙が溢れた。自分の持っていない物を持っている人を嫉妬して攻撃する姿はとてもリアルで恐怖。ラストの展開には救われるけど、現実はこんな簡単ではないだろうなと思う。2021/06/12
ゆみのすけ
26
結婚、出産、子育て、仕事。女性はライフスタイルが大きく変化するこれら出来事を迎えた時、いかに進んでいくべきか。子供が言うことを聞かず子育てが上手くいかない。出産後働こうとしたら、自分の条件に合う仕事が見つからない。子供が欲しいけれど、仕事も忙しく思い通りに行かない。これら悩みを持つ女性達は自分と比べ、いい環境にいる友人を妬み、嫉み暮らしている。その負の感情がとんでもない事態を引き起こす。負のループに陥った時、そこから引っ張り出してくれる存在がいることの大事さをしみじみと感じた。2023/05/04