内容説明
八世紀半ば、唐王朝を揺るがした「安史の乱」が、六〇〇年におよぶ大変動の始まりだった。一〇世紀初頭に耶律阿保機が建てたキタイすなわち契丹国、李存勗ひきいる沙陀軍閥の後唐、タングト族・李元昊の西夏、女真族・完顔阿骨打の金。多極化と流動化のはてに、歴史の統合者たる大モンゴル国が浮上する。騎馬遊牧民の興亡と、超域帝国誕生のドラマ。
目次
はじめに 世界史のなかの中国史
第1章 巨大な変容への序奏
第2章 キタイ帝国への道
第3章 南北共存の時代へ
第4章 失われたキタイ帝国を訪ねて―歴史と現在を眺める
第5章 アジア東方のマルティ・ステイト・システム
第6章 ユーラシアの超域帝国モンゴルのもとで
おわりに グローバル化時代への扉
著者等紹介
杉山正明[スギヤママサアキ]
1952年、静岡県生まれ。京都大学大学院文学研究科教授を経て、京都大学名誉教授。1995年に『クビライの挑戦』でサントリー学芸賞、2003年に司馬遼太郎賞、2006年に紫綬褒章、2007年に『モンゴル帝国と大元ウルス』で日本学士院賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Tomoichi
17
宋まで時代が進んだと思ったら、ここで唐の安史の乱から再び始まる本書は、遼・西夏・金・元と北方の草原国家の興亡を中原地域との関係性から語られる。ほとんど知識がない内容だったので、改めて支那とは何かという事を考えさせられた。本書のほとんどはキタイ帝国の話で、元の話も結構あっさり。次は元の自滅で誕生した明とそれを滅ぼした清のお話。2022/11/19
さとうしん
14
今となっては古松崇志『シリーズ中国の歴史3 草原の制覇』が完全にこちらの上位互換になってしまっている。契丹に関係する部分が多くを占めるという構成も同様。ただ第四章の現地調査記は、この手の通史としては異例の内容ながら今読んでも面白い。文庫版あとがき等、その後の研究に関するコメントがないのも物足りない。2021/02/18
maqiso
3
唐の領域は狭いが安史のようにソグド系の勢力も活躍した。耶律阿保機は遊牧部族の連合体だったキタイをまとめあげ、草原と中華にまたがる帝国を作った。中華ではキタイ・沙陀政権・唐の軍閥が互いに争ったが、キタイ帝国と北宋が澶淵の盟を結ぶと平和が訪れ、西夏・金・南宋もそれを受け継いだ。モンゴル高原を統一したチンギスは圧倒的な軍事力でユーラシアを征服した。後継者争いなどで分裂したが、クビライの大元ウルスを中心とする世界的なシステムができ、陸海の交通も栄えた。中国の正史は中華偏重が強く、特にキタイは解釈が難しい。2021/07/12
思路夢
1
モンゴル研究の大家が中国通史シリーズの唐末から元末までを担当。ただしその射程は中華を超えて,「北方異民族」を包含したものとなる。中心となるのは,「五代期」における北方キタイ帝国(「遼」)と華北の拓跋諸勢力との争いの歴史であり,専門のモンゴルについては短めの記述。このことから返って,著者の史書に対するスタンスが明確に解るのが面白い。というわけで中国「正史」の中華中心主義によるバイアスが批判的に検討され,「異民族」諸政権の再評価がなされる。なかでも『資治通鑑』とその編者司馬光の評価はほぼ歴史改鋳者扱いである。2022/11/28
山陰 柴
1
今の中国を見る時に圧倒されるのは人口、広さ、多種族民族に驚かされる。巨大である。この本では9C末〜14C末に漢族の夷狄の征服王朝を説く。世界帝国の唐帝国と歴代の学者は展開してきたが、過大評価だと指摘している。本論では今の中国よりロシア共和国、イランまでを飲み込んだ大元ウルス(元)までの歴史を辿った。契丹王国の農耕民ー遊牧民の共存政策、ユーラシア全土を多民族、多文化を受け入れていく。ペルシャ語を国際語にムスリム商人、華僑の国際通商を奨励し自由経済政策をとった。人種、宗教の差別もない大帝国だった。学ぶ事多い。2021/09/07