出版社内容情報
柳 広司[ヤナギ コウジ]
著・文・その他
内容説明
扇屋「俵屋」の養子となった伊年は、醍醐の花見や、出雲阿国の舞台、南蛮貿易の輸入品から意匠を貪り、絵付けした扇は評判を増す。すると平家納経の修理を依頼される栄誉に。さらに本阿弥光悦が版下文字を書く嵯峨本、鶴下絵三十六歌仙和歌巻の下絵での共同作業を経ると、伊年の筆はますます冴えわたる。
著者等紹介
柳広司[ヤナギコウジ]
1967年生まれ。2001年『贋作「坊っちゃん」殺人事件』で第12回朝日新人文学賞を受賞。’09年『ジョーカー・ゲーム』で第30回吉川英治文学新人賞と第62回日本推理作家協会賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
329
面白い。描写に深みはないかもしれないが、コンパクトに俵屋宗達の魅力を演出出来ていると思う。漫画チックな、ピーキーな天才型の宗達と、随所に入る現代的な注釈の雰囲気も合っている。光悦との出会いと、嵯峨本の作成が上巻のハイライトであり、ここからは作品に応じてエピソードが展開していくと予想。風神雷神の誕生をドラマチックに盛り上げきれるか期待。嫌な予感がするのが阿国と冴の存在。この二名がしっかり物語に絡んでくるのか、ただのロマンス要員で終わるのかで、この本の印象が結構変わりそう。2021/05/12
優希
61
面白かったです。俵屋宗達の描いた『風神雷神』を軸に物語は展開していきます。一枚の絵が生み出す大河ドラマとも言えますね。当時の歴史も織り交ぜられているので読み応えがあります。下巻も読みます。2023/02/04
つねじろう
60
すっごく面白い。柳広司得意の見て来たようなリアル感満載で不可思議的存在の俵屋宗達を描いて行く。霞んで、茫洋としてた絵の輪郭がハッキリして行く語り口は小気味良い。感想は下巻で。2021/05/03
yamatoshiuruhashi
54
久々の柳広司。先日読了した原田マハの「風神雷神 Juppiter, Aeolus」を登録しようとして一旦間違えたのをキッカケに知った本。柳作品は文庫化作品一挙読みをしていた中盤の頃に読書メーターを始めた。(2012年だからもう11年も経つのか)が、その後はポツポツ。単行本は2017年刊というが知らなかった。俵屋宗達は生没年など不明なところが多い人物ながら圧倒的迫力を持つ絵師であることが、作者が自由に描ける対象になるのだろう。にしてもガキっぽいイメージの原田作品に比べ、茫洋とした本作品のイメージは悪くない。2023/02/02
Nobu A
42
柳広司著者初読。17年刊行。原田マハの2年後出版された同名小説と読み比べたく手に取ってみた図書館本。原田マハは間違いなく意識しただろうな。後出しだけあって本書の方がやや物足りない。反面「茶筅」「飄逸味」等、時代を感じる単語を鏤め、硬めの表現も悪くない。でも「ボクシングの世界戦での無敗の強打者同士が足を止め、信じられない距離で拳を振りまわしながら紙一重でかわしつづけて一発も被弾しない」等、時間軸にそぐわない比喩は興醒め。徳川家康による消息不明の出雲阿国のマニラ流しや本阿弥光悦の鷹峰移住からどう動く。下巻へ。2024/02/20