出版社内容情報
平出 隆[ヒライデ タカシ]
著・文・その他
内容説明
「いまいるこの世界よりも好ましい、もうひとつの世界」架空の国々の切手を描きつづけた夭折の画家、ドナルド・エヴァンズ。土地を移りつつ、歳月をかけて、どこにもいない画家に宛て葉書を書きついでいった詩人は、いつからか「死後の友人」となった自分を見出す。断片化された言葉を飛び石のように伝い、あるかなきかの世界への旅を試みる、一三九通の清切な消息。
著者等紹介
平出隆[ヒライデタカシ]
1950・11・21~。詩人、散文家、多摩美術大学名誉教授。福岡県生まれ。一橋大学社会学部卒業。大学在学中からリトル・プレスを構え、詩と評論を発表。90年から多摩美術大学で教鞭を執り、2010年、書物と郵便を融合させた『via wwalnuts叢書』を創刊。また近年は展覧会形式によっても詩を探究。『胡桃の戦意のために』で芸術選奨文部大臣新人賞、『左手日記例言』(93)で読売文学賞、『ベルリンの瞬間』(02)でJTB紀行文学大賞、『猫の客』(01)で木山捷平文学賞、『伊良子清白』(03)で芸術選奨文部科学大臣賞、藤村記念歴程賞などを受賞。海外での評価も高く、『猫の客』は22ヵ国語に翻訳された国際的ベストセラー。『胡桃の戦意のために』英訳版(中保佐和子訳)は09年、米国Best Translated Awardを受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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かもめ通信
20
架空の切手を描きつづけた画家へのオマージュとして、ひとりの詩人が亡き画家に宛てた葉書を束ねた不思議な紀行録を、今度は画家と詩人に魅せられた読者たちが読み解く、そんな不思議な連鎖を思う。2021/05/17
マッピー
15
子どもの頃の切手収集をきっかけに、自ら切手を描き続けた画家がいた。ドナルド・エヴァンズ。切手の図柄とするために、架空の国を創った。国を創るにあたって、言語や歴史、風物も創造した。彼は不慮の事故により、既にこの世にはいないのだが、作者はドナルド・エヴァンズに日記のように葉書を書き続ける。1ページを葉書1枚分として、ドナルド・エヴァンズの生涯を追いながら、彼の周囲にいた人たちとの交流を報告し、旅を続ける。で、どうしてこんなに行間から詩情が立ち上ってくるのだろう。葉書に描かれているのは詩ではない。なのに、なぜ。2024/02/27
。
12
既に他界した人が残していった小さな「世界」と親密になり、現実世界の稜線がぐらつく感覚が一枚一枚、葉書の文面を読むなかでふと滲み出る。彼方の世界で見た緑閃光や星降る夜、小さな世界が死後の友人に齎したもの、(澁澤龍彦、友人の詩人含めた)作家たちの遺すものたちへの愛情、敬意。いつまでも読んでいたい、そういう種の本。2021/07/11
geromichi
7
ずっと気になっていて、やっと読んだ。思ったより変化球ではなく、素敵な話でした。虚実入り乱れた仕掛けのある書簡体の散文かと思って読んでいたら、実際の体験に基づいているそうな。アムステルダムが大事な場所として出てきて嬉しかった。2024/03/08
hdk
2
親愛なるドナルド、と夭折した芸術家に宛てた親書。架空の国々の切手をつくるというドナルドエヴァンスがやっていたこと、そしてその切手が素敵。世界の創造。そして、故人との邂逅という、平出隆さんのやろうとしていることもまた素敵。2021/05/05