内容説明
英傑・朝倉宗滴が没すると、越前の名門朝倉家の家勢は傾き始めた。後事を託された「宗滴五将」の筆頭「仁の将」山崎吉家は、押し寄せる織田勢に対抗すべく当主・義景に国を守るための秘策を何度も献言するが…。朝倉家臣団の離反、謀略、裏切りのなかで孤軍奮闘する吉家の姿が胸を打つ、本格歴史小説。
著者等紹介
赤〓諒[アカガミリョウ]
1972年京都府生まれ。同志社大学文学部卒業。私立大学教授、法学博士、弁護士。2017年、「義と愛と」(『大友二階崩れ』に改題)で第9回日経小説大賞を受賞し作家デビュー。同作品は「新人離れしたデビュー作」として大いに話題となった(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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onasu
17
当然、越前朝倉家にも、戦を取りしきる有能な重臣がいた。朝倉家でその方面といえば宗滴だが、こちらで描かれるのは、その死後、後事を託されたとされる宗滴五将の筆頭、山崎吉家。 二度にわたって信長包囲網の一端を担うも、当主の義景の愚策で水泡と帰すが、どんな苦境にも諦めず最期まで。その名は大河ドラマ「麒麟がくる」で知ったばかりだが、ここにも埋もれた逸材がいたのですね。 精強だった朝倉家が、何故かくも脆く滅んでしまったのか、期待していた浅井家との経緯は今ひとつでしたが、周辺の状況も分かる好著でした。2021/01/15
みや
14
朝倉宗滴が後継者に選んだ五将や前波吉継を中心に描く朝倉家の物語。前に読んだ朝倉本と人物設定が随分違って戸惑ったが、個性豊かで愛着を持てる人が多く、物語として格段に楽しめた。特に景鏡は乱暴な嫌われ者から物腰柔らかな美男となり、そうなると裏切った際の心証もまるで変わる。後半では視点人物が増え、前半での行為に込められた意味が明かされて面白かった。同じ歴史でも作家次第でここまで変わるのか。その中で義景だけは相変わらずクズ。義景と小少将が嫌いすぎて朝倉の滅亡を切に願った。ここまで来ると義景びいきの本を読んでみたい。2023/09/25
miyaz5
6
「酔象」とは将棋の駒の一つで、「王将」の前に置き、相手陣地に入ると「太子」と成り「王将」と「太子」の両方を取らないと勝ちにならない。現在の本将棋では使用しない駒だが、一乗谷朝倉氏遺跡で発見された駒の中に「酔象」があったらしい。本書では主人公である朝倉氏の家臣山崎吉家の渾名である。信長や秀吉を主人公にしたものには必ずといってよいほど朝倉義景は登場するが、朝倉側から見た物語は少ない。山崎吉家を主人公にしたのは良いが、時代が飛び飛びになるので、もう少しじっくりと大河のような小説にして欲しかったと思う。2023/01/04
ryohey_novels
6
小説としての完成度が高いのは分かるがあまり楽しめなかった、没頭できなかった。1つは小説の全体の軸がブレブレに感じられたところ。本物語は前波吉継など脇役の視点で進んでいくが、後半、義景、景鏡、最後には主人公の吉家まで描かれていく。脇からメインを際立たせる手法を最後まで、せめて吉家の視点は省いて欲しかった。もう1つは陰湿で胸糞悪い場面が多かった点。ここまで人間のリアルを出せるのはある種才能だが、もう一度読み返したくはない。前波という人物は非常に人間らしく感情移入しやすいため、却って共感性嫌悪を感じてしまった。2021/05/31
北之庄
6
名前は既知なるもお初の作家さんです。その昔ハマった戦国武将占いでは、自身は朝倉義景タイプとの判定、軽くショックを受けたんだっけ笑。名門越前朝倉家の重臣、酔象こと山崎吉家を通じて、覇王信長と越前家中との対決をテーマに描く本作。先の大河、麒麟がくるともオーバーラップし、非常に興味深く、かつ爽やかな読後感でした。榎木孝明の酔象(ややイメージ違うか)、ユースケ サンタマリアの朝倉義景が脳裏に浮かぶ笑笑。宗滴五将これから注目です。ただ男泣き必至との後書きやら帯への安物の煽り文句は、ちょっと違うと少々鼻白む思いです。2021/05/28