内容説明
青い空を沖縄に向かって飛ぶ特攻機、天国のように美しい海には死んだ兵隊さんが浮かぶ。第二次大戦末期、小さな島沖永良部島に暮らすマチジョーとカミは、大切な家族を失い、食料にも不自由する日々を過ごしていた。それでも唄い、恋をし、ひたむきに働き、生き抜く。南の島に刻まれた知られざる戦争の物語。
著者等紹介
中脇初枝[ナカワキハツエ]
徳島県生まれ、高知県育ち。高校在学中に『魚のように』で第2回坊っちゃん文学賞を受賞し、17歳でデビュー。2013年『きみはいい子』で第28回坪田譲治文学賞を受賞、第1回静岡書店大賞第1位、第10回本屋大賞第4位。2014年『わたしをみつけて』で第27回山本周五郎賞候補。2016年『世界の果てのこどもたち』で第37回吉川英治文学新人賞候補、第13回本屋大賞第3位。絵本や昔話の再話も手掛ける。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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piro
38
戦中から戦後の沖永良部島。機銃掃射に見舞われても臆する事ない少年マチジョーの視点で、戦中から終戦直後までの「日常」を描く『神に守られた島』。そしてマチジョーが恋焦がれる幼馴染のカミの視点で、戦後の本土復帰運動の様子を描く『神の島のこどもたち』の2編。島の子供達の成長と共に、戦中戦後の様々な苦難を丁寧に語る作品に心震えました。苦難の中でも必死に前を向くマチジョーの強さと明るさ、じっくりと何が正しいのかを考え抜くカミの実直さ。そして人々の島への熱い想いが突き刺さる様。これは絶対的にお薦めの名作。2022/08/08
Y.yamabuki
10
「神に守られた島」少年マチジョーの視点での沖永良部島終戦直前の様子。親族を失う等辛い中、子供らしく健気に生活を守り、友情を育む姿が、方言や風習と共に瑞々しい筆致で描かれている。「神の島のこどもたち」終戦後七年高校生のマチジョーの同級生カミの視点。米国からも日本からも援助を受けられず、制服も教科書も満足にない学校生活。日本に働きに行くには、危険を冒した密航。そこに、復帰運動が始まる。復帰を願う余り服装も言葉も日本式を強調する大人に違和感を持つカミ。ラストは進路を定めた子供達の清々しい船出。色々学んだ作品2020/09/24
めい
9
戦時中の沖永良部島での暮しが、こども達の視点で描かれていて、大きく前半と後半に分かれます。終戦までの前半が少年マチジョー、戦後の後半が少女カミ。死が身近に迫る中、どのような気持ちで日々を生きていたのか、こども視点だからとてもリアルで悲しくなりました。島言葉が中心なので、言葉がなかなか入ってこなくて読み始めは苦労しましたが、いつの間にか気にならなくなりました。この島言葉があってこその、この物語なのではないでしょうか。2022/08/27
文太
7
本書は「神に守られた島」、「神の島のこどもたち」の2部からなっており、沖永良部島が舞台となっている。「神に守られた島」では、島に住む少年のマチジョーの目線から戦時中の島の様子を描いている。「神の島のこどもたち」では、マチジョーの幼なじみの少女カミの目線から戦後のアメリカ統治時代から本土復帰を目指す様子が描かれている。時代に翻弄され、さまざまな制限、強制を受ける。しかし、古来から続く島の信仰、文化を大切に思う島民の気持ちがひしひしと伝わってきた。2020/08/19
nnnともろー
6
沖縄戦から戦後にかけて沖永良部島で生きた少年少女、島の人たち。マチジョーやカミたちの青春。とても素晴らしい小説だった。2020/09/06