出版社内容情報
「今年(2018年)読んだ本の中で、私のベスト3に入る1冊!」――宮部みゆき(単行本帯コメントより)
話題騒然のメフィスト賞受賞作。読者から届いた熱い、熱い声。続々重版出来。
子供を殺す前に。親に殺される前に。
すべての「向いてない人」に捧ぐ、禁断のオゾミス、または落涙の家族サスペンス!
一夜のうちに人間を異形の姿へと変貌させる奇病「異形性変異症候群」。
この世にも奇妙な病が蔓延する日本で、家族は。
ある日、美晴の息子の部屋を、気味の悪いクリーチャーが徘徊していた。
――冗談でしょう。まさか、うちのユウくんも・・・!!??
そこから平凡な家族の、壮絶な戦いが幕を開ける。
内容説明
とある若者の間で流行する奇病、異形性変異症候群にかかり、一夜にしておぞましい芋虫に変貌した息子優一。それは母美晴の、悩める日々の始まりでもあった。夫の無理解。失われる正気。理解不能な子に向ける、その眼差しの中の盲点。一体この病の正体は。嫌悪感の中に感動を描いてみせた稀代のメフィスト賞受賞作。
著者等紹介
黒澤いづみ[クロサワイズミ]
福岡県出身。『人間に向いてない』で第57回メフィスト賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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そら
75
社会から脱落した若者がある日突然"異形"に変異してしまう。植物の擬態、犬のような動物、優一は触覚を持つ芋虫のような物に変異した。気持ち悪さは部分的に人間の部位が残っていること。変異した人間は死亡とみなされ、その後の扱いは家族に委ねられる。虫を棄てようとする父親と息子を守ろうとする母親。グロデスクな空想物かと思いきや、最後に異形となった者たちの心からの告白に強い衝撃を受ける。自分に価値がなく生きるのが辛いと思う人の本当の本音の声をここまで明確に表現したことに。子を持つ親ならばこの声を絶対に知るべきだろう。2021/08/06
つばめ
65
タイトルで興味を惹かれ、あらすじでカフカの「変身」を思い出したので購入した作品。なんとグロテスクで、やるせなくて、闇が深いストーリーだろう。他者から追いやられ必要とされない人、馴染めない人が淘汰的に異形へ変貌していく。そこに属する家族や社会からも排斥されるが、「する側」の闇も深い。真面目に言葉一つひとつを読み取っていくと心がしんどくなる。誰からも必要とされず、自分も自分を必要としなくなっていく故の末路か。誰もがそちら側を嫌悪し、自分がそちら側へ堕ちるの事を恐れて生きてる。あながちフィクションじゃない。2021/02/09
さおり
50
異形性変異症候群。主に引きこもりやニートの若者がかかる奇病で、発症するとその姿は虫や動物、植物、アメーバ、、、とにかく人間ではない異形のものとなる。私も、人間に向いてないなぁ、猫にでもなれたらなぁとか思うことが時々あるけれど、こんな感じになるとしたらやだな。だって、犬になったら人面犬やし、芋虫(足は人間の指でできてたりする)になっちゃったりするし。受け入れられなくて殺しちゃう親もいるんだけど、簡単に殺せる大きさでもない。気持ち悪いので極力想像しないように読んだけど、怖かった。で、めっちゃおもしろかった。2022/04/07
Kazuko Ohta
46
どうしますか、自分の子どもが引きこもりで、ある日突然薄気味の悪い生き物に姿を変えたら。異形性変異症候群という病名が与えられ、戸籍上は死んだものとみなされる。異形といってもさまざまで、巨大な昆虫だったり植物だったり、顔だけ人間そのままの犬だったり。想像力がたくましい人ほど、読んでいて気分が悪くなりそう。父親がわが子の発症と同時に死亡をすんなり受け入れるのに対し、どんな姿になろうともわが子を切り捨てられない母親。切ないなんて言葉を通り越して、狂気を感じる。メフィスト賞、えげつない。好きだけど。読んじゃうけど。2020/08/15
いわし
43
ある日突然、異形の姿へと変貌してしまう奇病。ニートや引きこもりの若者ばかりが罹患する。カフカの「変身」を思わせる設定にして決定的に違うのは、変身したグレーゴル視点で描いたカフカに対し、本作は息子が虫になった母親視点で物語が進むこと。この奇病に罹ると人権を失い、家族から酷い扱いを受けるものもいるのだが、カフカの「変身」が頭にある分、異形となっても話せないだけで思考は人間の時のままなのでは?という考えが拭えず余計に恐怖を駆り立てる。家族との向き合い方が問われる怪作。最後まで気持ち悪い。だけど、最後まで面白い。2022/04/29