出版社内容情報
〇あらすじ
ずっとクラスの人気者として生きてきた中学生の佐藤まえみ(通称:サーマ)。父親の異動に伴い、夢の東京生活がはじまった。東京生活になじめなかったのか兄の慈恵(じけい)は突然不登校に。サーマは東京でもうまくやっていけるって信じてたけど、「サーマって、なんていうか……ちょっとしんどい」と、仲良しグループにはじかれて……。
学校に行きたくないけど、両親に心配されるから休みたくもない。
葛藤しながら保健室に向かい、扉に手をかけようとした瞬間。
「ちょっとちょっと、あんたはこっち!」
手招きしてきた不気味な白衣のオバさん・銀山先生に導かれ、いぶかしみながらも保健室の隣の【第二保健室】で休むことに。その地下にあったのは、中学生専門の湯治場「かねやま本館」だったーー。
銀山先生って何者? かねやま本館って何? 温泉には効能が?
「疲れたら、休んでもいいんだ」
かねやま本館で出会う子どもたちとの交流や、温泉での休憩を通し、自分自身の悩みに向き合っていく、心温まる物語。
〇著者紹介
松素めぐり
1985年生まれ。東京都出身(東京都在住)。多摩美術大学美術学部絵画学科卒業。
『保健室経由、かねやま本館。』で第60回講談社児童文学新人賞受賞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
☆よいこ
104
YA。児童書。第2保健室の床下にのびる秘密のトンネルを降りていくと、中学生専門の湯治場「かねやま本館」がある。友達関係に傷つき疲れ果てた佐藤まみえは、温泉につかる。1日1回50分、30日間限定の湯治場で、日替わりの温泉につかることで疲れを癒していく。その効能は様々で、たまたま一緒になった他の子との交流も楽しい。嫌われたくなくて頑張りすぎてキツいとか、無視されて悲しいとか悔しいとか、許せなくてモヤモヤするとか、体にたまった汚れを少しずつ落として癒してくれる温泉。そして風呂上がりの食事。あぁ、私も行きたい!2020/09/02
へくとぱすかる
94
ファンタジー……なんだけど、かなりぶっ飛んだ設定。こんなパターンはちょっと思いつかないだろうなぁ。保健室登校というものが存在するように、保健室は学校の中でありながら、教室とは違う時間が流れている。「サーマ」こと中1の佐藤まえみが遭遇したのも、不思議な保健室。しかしそれは予測不可能な展開の前触れに過ぎなかった。「なぜそうなる?」とか不条理を思いながらも、ページは進む。クラスの中での人間関係のこじれで傷ついた心を修復したくて、まえみは通う。友情も嫉妬も中学生時代の心の過程だ。読後の不思議感覚の余韻が爽やか。2022/03/17
chimako
83
ザ、中学生向け!気持ち良く読み終われるYA。第二保健室の地下には中学生の湯治場がある。空回りして仲間はずれにされた少女や思ってもいない言葉を口にして居場所をなくした少年たちが、お湯に呼ばれて階段を下りる。迎えるのはふんわり優しい小夜子さんと元気一杯のキヨ。美味しいお水と美味しい賄い。お湯は幾色もあってからし色は〈傷心〉黒い湯は〈内省〉若竹色は〈受容〉……黒い何かが立ち上ぼり今の自分を照らし、癒す。こんな温泉があったら中学生でなくても入りたい。年はとっても達観とは程遠い。週末、どこかの温泉に行こうかな。 2022/04/14
ゆみきーにゃ
82
シリーズ一作目。読友さんの感想を読み気になった一冊。心に傷を負った中学生しか行けない湯治場。自分が中学生の時も人間関係で沢山悩んだな〜なんて懐かしくなりながら、まえみ頑張れ!と応援しながら読んだ。どんな時も一人じゃない!2021/10/23
future4227
79
2019年講談社児童文学新人賞受賞作品。この賞を獲ると2年後の中学入試問題でバンバン出題されるという法則がここ2年続いているのだけど、果たしてこの作品はどうなるか?一部の子にしか見えない第二保健室。そこへ入ると床下に穴があって、中学生専用の湯治場、かねやま本館へたどり着く。温泉の湯につかりながら、悩める中学生を癒やしてくれるこの場所は、駆け込み寺でもあり、自分を見つめ直すカウンセリングの場でもある。現実に苦しんでる中学生にもこんな場所があったらいいのに。大人たちがそういう場所を作ってあげなきゃいけないな。2020/08/09