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出版社内容情報
ゲノム編集は、生物のもつ全ての遺伝情報であるゲノムを正確に書き換える技術である。この技術は、ヒトを含む全ての生物で使うことができることから、研究の世界だけでなく、産業界、さらには医療の世界を大きく変えようとしている。しかし一方で、ゲノム編集がどんな技術であるのか、遺伝子組換えとの違いはどこにあるのか、安全性はどのように考えられているかなど、一般への理解が進んでいないのが現状である。ライフサイエンスの研究者でも技術を十分に理解できていないのが実情だ。
このように理解が進んでいない原因は、ゲノム編集技術の開発スピートが非常に速く常に新しい技術が生まれていることや、技術が広範な分野に及ぶため様々な分野で技術の捉え方が異なることが理由として考えられる。また、研究者であれば誰でも使えること(特に基礎研究であれば)や一般の方の身近な問題に直接関係することなども、既存のバイオテクノロジーとは性質が大きく異なる点と言える。研究者の世界においても一般社会においても、これだけ影響力のあるバイオテクノロジーはこれまで例がなく、予想外の技術への対応が追いついていないのが現状である。まさに、SF映画で見ていた世界が、ゲノム編集で現実となる可能性もでてきた。
ゲノム編集の可能性は、応用分野ではアイディア次第で無限大と言っても過言ではない。これまで長い時間をかけて作られてきた有用な品種が、ゲノム編集によって意図も簡単にしかも短時間に作ることが出来る時代もそう遠くない。地球環境の変化を考えると、ゲノム編集は食糧問題を解決する重要な技術にもなるであろう。バイオ燃料をゲノム編集技術によって効率的に生み出す微生物などの開発も進みつつある。健康問題に関しても、ゲノム編集は創薬や疾患治療に有効であることが証明されている。がんを治療する技術、感染症を治療する技術、ウイルスを簡便に検出する技術など、次々と新しい技術が開発されている。
本書では、ゲノム編集とはどんな技術なのか、既存の遺伝子組換え技術とはどんな違いがあるのかを、まず紐解いていく。本書を読めば、2012年に開発されたクリスパー・キャス9が、なぜノーベル賞を取る技術と考えられているのが理解できるだろう。さらに、応用分野でどのようなことが可能であるのか、あるいは既に技術が開発されているのか、具体例をあげながら解説していく。
内容説明
「究極の遺伝子編集技術」といわれるクリスパー・キャス9。研究者であれば、特別な知識や訓練の必要もなく、生物のもつ全ての遺伝情報であるゲノムを自由自在に書き換えることができる。生命科学に革命をもたらす「ゲノム編集」を日本の第一人者が、基礎から応用まで詳しく解説する。
目次
第1章 生物の設計図はどこにあるのか?
第2章 遺伝子を改変するということ(ゲノム編集以前)
第3章 ゲノム編集の誕生
第4章 生命科学に革命をもたらしたクリスパー
第5章 さまざまな生物でのゲノム編集
第6章 ゲノム編集の産業分野での可能性
第7章 ついに始まった医療への応用
第8章 ゲノム編集が拓く新しい生命科学
第9章 ゲノム編集は本当に安全と言えるのか?
著者等紹介
山本卓[ヤマモトタカシ]
鳥取県米子市生まれ。1989年、広島大学理学部生物学科動物学専攻卒業、1992年、同大学院理学研究科動物学専攻中退。博士(理学)。1992年、熊本大学理学部助手、2002年、広島大学大学院理学研究科講師、2003年、同助教授を経て、2004年、同教授に就任。2019年から同大学院統合生命科学研究科教授。2019年、広島大学ゲノム編集イノベーションセンターセンター長。2016年4月に設立された日本ゲノム編集学会の初代会長となり、基盤技術の開発研究を先導するほか、ゲノム編集技術の支援活動や倫理問題などについても積極的に発言している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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