出版社内容情報
内容説明
神山藩で、郡方を務める高瀬庄左衛門。五十を前にして妻を亡くし、息子をも事故で失い、ただ倹しく老いてゆく身。息子の嫁・志穂とともに、手慰みに絵を描きながら、寂寥と悔恨の中に生きていた。しかしゆっくりと確実に、藩の政争の嵐が庄左衛門に襲いくる。人生の苦渋と生きる喜びを丁寧に描く、武家もの時代小説の新星、ここに誕生!
著者等紹介
砂原浩太朗[スナハラコウタロウ]
1969年生まれ。兵庫県神戸市出身。早稲田大学第一文学部卒業。出版社勤務を経て、フリーのライター・編集・校正者に。2016年「いのちがけ」で第2回「決戦!小説大賞」を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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ミスランディア本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
372
第165回直木賞候補作となったので、図書館に予約して漸く読めました。砂原 浩太朗、初読です。時代小説としては良書ですが、テーマおよび主人公が地味過ぎます。 https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=00003409072021/11/29
パトラッシュ
314
藤沢周平の『三屋清左衛門残日録』を連想した。妻を失った初老の主人公が藩の政争に巻き込まれる物語に、派閥抗争に過去の事件や旧友が絡んだり釣りや絵など趣味を始める点も同じだが、異なるのは全編に漂う空気だ。仲の良い息子夫婦と孫や友に恵まれた清左衛門の周囲は賑やかでユーモアが感じられるが、息子が急死しお家断絶が確定的な庄左衛門は深い寂寥感のただ中で生きている。庄左衛門が「選んだ以外の生き方があった、とは思わぬことだ」という境地に達するラストは、過去を悔わない諦念こそ生きる指針になり得るとの作者の思いが感じられる。2021/04/28
ひさか
255
小説現代2018年8月号おくれ毛、に書下ろしの9章分を加えて2021年1月講談社刊。長編。神山藩の郡方の高瀬庄左衛門、息子の啓一郎とその嫁の志穂という登場人物に味があります。二転三転する武家もののストーリーに惹かれ、最後まで面白く読みました。続きが読みたいです。2021/06/13
seacalf
234
ここ最近読んだ中で、ずば抜けて面白い。著者曰く『ままならない人生を、ままならないままに生きる人たちの物語』だが、これがもう読めば読むほど面白くなっていき夢中になってしまう。50を目前にして妻を亡くし、息子も事故で失った初老の武士がこのまま寂寥感を抱えたまま生きていくのかと思いきや、さにあらず。亡き夫の嫁をはじめ、様々な人物が少しずつ絡み、意外な展開へと進んでいく。同じく面白い時代小説のぼろ鳶シリーズのようなエンタメ性とは違って、庄左衛門の心持ちを上手に描いているハードボイルド小説に感触が近い。おすすめ。2022/03/27
koji
213
砂原浩太朗さんは、偶々日経新聞読書欄(6/17)の「藩邸差配役日々控」の書評で知りました。書評では、砂原さんは「歴史時代小説界の俊英」、作品は「現代と通じ合う要素を、積極的に取り入れ、人の心の奥底に迫っていく」と評されており、私の中で「期待感一杯」の人になりました。そこで、直木賞候補の本書から読み進めることにしました。一読気に入りました。葉室さん、乙川さんに連なる美しい言葉で静謐に語りを進める作風がGOOD。STORYのもたつきは一寸残念でしたが、これが2年後洗練されていくんですね。楽しみに読み進めます2023/06/25
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