出版社内容情報
上村 忠男[ウエムラ タダオ]
著・文・その他
内容説明
長らく思想の最前線を牽引してきたイタリアの思想家ジョルジョ・アガンベン(一九四二年生)。その代表作にしてライフワークである“ホモ・サケル”プロジェクトは、二〇年をかけて全四巻計九冊が刊行され、完結を迎えた。「ホモ・サケル」とは、誰もが罪に問われずに殺害でき、犠牲として神々に供されることのない「聖なる人間」のことを言う。ミシェル・フーコーが掲げた「生政治」という主題を受け継ぎ、壮大なレベルで展開したプロジェクトは何を目指していたのか?その全容を平明に解説した最良の道標となる1冊!
目次
プロローグ アガンベンの経歴
第1章 “閾”からの思考
第2章 証言
第3章 法の“開いている”門の前で
第4章 例外状態
補論 「夜のティックーン」
第5章 オイコノミア
第6章 誓言と任務
第7章 所有することなき使用
第8章 脱構成的可能態の理論のために
エピローグ 「まだ書かれていない」作品
著者等紹介
上村忠男[ウエムラタダオ]
1941年生まれ。東京大学大学院社会学研究科修士課程修了。東京外国語大学名誉教授。専門は、学問論・思想史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ころこ
34
本書を読む限りでは、アガンベンが探究する生権力は生と死の「閾」、つまり限界にあります。コロナで注目された彼の言説は否定神学的な良くも悪くもヨーロッパ的ではあっても、「例外状態」はイタリアの事態には有効であったと総括できるでしょう。彼の言説を参照するのは閾値を超えたようなぎりぎりの事態であり、最近、日本語訳の新著も出版されたように、これが全く閾値を超えていないにもかかわらず生権力にどっぷりと浸かった日本においてどう読まれているか。少なくとも日本の微温的な状況を擁護できるようなものはありません。2021/03/09
かんがく
11
最近、よく名前を聞くので興味をもって読んだ。フーコー、シュミットなど既にある程度知っている思想化との比較はある程度わかったが、難解な哲学用語を解説なしでバンバン使ってくるので半分ぐらいよくわからないままおわってしまった。特にキリスト教関連のテーマがかなり難しい。2021/12/06
mawaji
5
NHK・BS1「コロナ新時代への提言〜変容する人間・社会・倫理〜」で哲学者の国分功一郎氏が「生存以外のいかなる価値も認めない社会というのは、一体何なんだろう」と発言し人々が炎上したというジョルジョ・アガンベン氏の論考を紹介していたのを見ていたところに図書館の新初刊コーナーで目にした本書、とても難解でほぼ理解できませんでしたが「人間は語るためには言葉のなかでみずからを賭けなければならない」「哲学は今日、音楽の改革としてのみ生じうる」という言葉にグッときました。哲学とムーサmusicaは親和性があるのでせう。2020/07/05
ヒナコ
4
アガンベンによる巨大プロジェクトとしての《ホモ・サケル》についての解説書。 私個人は『ホモ・サケル――主権的権力と剥き出しの生』を理解するために、本書を読んだ。 しかし、書かれている内容がどれも高度だったのと、アガンベンの《ホモ・サケル》プロジェクトが壮大であり、すでに何冊もの著書が公刊されていることもあって、本書の解説の内容がほとんど理解できなかった。→2022/02/18
sk
3
二項対立が無効になる「閾」の思想。読みごたえがある。2020/05/20