出版社内容情報
銀行には金と秘密と謎がある。怨みを買うことが多く、ゆえに事件の犯人像は多岐に。初期傑作ミステリー短編集『銀行狐』の新装版。
内容説明
銀行には金と秘密と謎がある。いや時には、頭取宛てに「狐」から脅迫状が届いたり、金庫室から老婆の頭部が見つかることも―怨みを買うことは日常茶飯事、となれば犯人像もまた多岐にわたる。動機は金の怨みか、憎しみか、悲しみか。日常に亀裂が走り、平凡な人間に魔が差すときを描いた、ミステリー短編集全5編。
著者等紹介
池井戸潤[イケイドジュン]
1963年岐阜県生まれ。慶應義塾大学卒。’98年『果つる底なき』で江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。2010年『鉄の骨』で吉川英治文学新人賞、’11年『下町ロケット』で直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
121
池井戸さんの小説で銀行関連のものは結構読んでいたのですが初めてでした。短編集ということで5つの作品が収められています。その中では表題作が結構長くて読みごたえがありました。最近は金融庁が結構フィデユ―シャリー・デューティということを言っているのでこの中に書かれていることはないようですが自分のエゴのためには結構悪さをする行員もいるのですね。そのほかの作品も一般の人ではわからないようなことで楽しめました。2020/06/02
納間田 圭
119
僕の知合いには…この職業の方が多い。総じて…真面目の中の真面目。勤勉で頭の回転が早い。そりゃあ…たまには変テコなヤツもいたけどね…笑。これはその銀行員にまつわる五つの短編集。銀行員の常識は…世間の非常識。銀行には…金と秘密と謎がある。こんなに銀行員って恨みを買うことの多い職業なのか?。銀行に勤める人って…どう?。名ばかりハリボテの顧客第一主義。最近流行りの貸金庫問題。横領に使い込み。不正融資と圧力募集。貸し渋りや貸し剥がし。顧客情報漏洩にシステム問題。今更のように…ニュースに流れる減らない銀行不祥事の数々2025/04/19
ふじさん
104
「現金その場かぎり」は、銀行の窓口という皆の目線が集まる場所での、数百万円の現金が消失するという事件を描いており、まさに密室トリック。「銀行狐」は、銀行と顧客という関係の中に秘められたドラマをきっちりとミステリー仕立てにした作品。銀行員の悲哀が聞こえるようだ。「ローンカウンター」は、婦女暴行連続殺人事件を警察官が捜査するという作品で、元銀行員だから書ける醍醐味が味わえるミステリーだ。元銀行員が書いた作品だけに、多少の難しさはあるが、作者の丁寧な説明により最後まで、飽きることなく読み切れた。 2022/11/29
いたろう
72
池井戸さんの小説にしては、意外なことに、いきなり凄惨なバラバラ死体が出てくる殺人事件で始まる、全5編の短編集。しかし、この殺人事件も、背景に銀行が絡んでいるあたり、やはり、池井戸さんらしい。その他の短編も、銀行が犯罪の舞台になっていたり、銀行マンが事件を解決したり、全て銀行が関連する「銀行ミステリ」になっている。表題作の「銀行狐」の主人公は、「銀行総務特命」の主人公の銀行マン・指宿修平で、最終話「ローンカウンター」で、事件解決の大きなヒントを提供するのが、「果つる底なき」の登場人物だという繋がりも楽しい。2020/07/17
Carlos
60
池井戸さんの初めての短篇集。銀行勤務の知識経験を存分に活かしている。短編も良いね。2022/10/28