出版社内容情報
庄野 潤三[ショウノ ジュンゾウ]
著・文・その他
内容説明
田舎風のばらずしをこしらえるのに、ちょっと似ている―七十編に及ぶ随筆を一冊にまとめる工程を、著者はあとがきでそんなふうに表現した。家庭でのできごと、世相への思い、愛する文学作品、敬慕する作家たち―それぞれの「具材」が渾然一体となり、著者のやわらかな視点、ゆるぎない文学観が浮かび上がる。充実期に書かれた随筆群を集成した、味わい深い一書。
目次
1(うちのノラ公;春近し;兄のいた学校 ほか)
2(「舞踏」の時;私の代表作;「回転木馬」 ほか)
3(伊東静雄のこと;「反響」のころ;伊東静雄・人と作品 ほか)
著者等紹介
庄野潤三[ショウノジュンゾウ]
1921・2・9~2009・9・21。小説家。大阪生まれ。大阪外国語学校在学中、チャールズ・ラムを愛読。九州帝国大学卒。1946年、島尾敏雄、三島由紀夫らと同人誌を発行。教員、会社員を経て小説家に。55年、「プールサイド小景」で芥川賞受賞。57年から1年間、米国オハイオ州ガンビアのケニオン大学で客員として過す。60年、『静物』で新潮社文学賞、66年、『夕べの雲』で読売文学賞、71年、『絵合せ』で野間文芸賞を受賞。芸術員会員。80年、ロンドン訪問(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ケロリーヌ@ベルばら同盟
59
阿波徳島風の混ぜ寿司。庄野潤三さんは、単行本のあとがきで、本書をこう例えています。随筆や書評、体験レポート等々、様々な味わいと歯応えがハーモニーを奏でる七十篇の作品群は、派手さはないけれど、選び抜いた沢山の素材を、手間と愛情をかけて調理し、混ぜ合わせた、庄野家伝統の「かきまぜ」の豊かな味わいそのもの。露西亜文学者の中村白葉氏の随筆を「率直、平明、つつましい自足の喜びと、自分を生かしてくれたものへの感謝が混ざり合っている」と評されましたが、これこそ、庄野さんが目指し、実践された、物を書く姿勢でありましょう。2021/08/25
qoop
10
二十年ほどの間に書かれた随筆集で、表題作のような日常の点景、〈ラインダンスの娘たち〉〈郡上八幡〉といったルポ、あるいは交流のあった作家たちの回想など内容は多岐にわたる。雑多なのに統一感があるのは、著者というフィルターがそれだけ堅固だからだろう。揺るがず安定感があり、流れていく風景を受け止めときに拾い上げる。そこに作意は感じられず、自然体の魅力がある。2021/11/29
DEE
9
日々の暮らし、作品、作家との交流など柔らかな口調で語りかけてくるようなエッセイ。今よりもゆったりした時間が流れていたんだなと感じる。夏が好きで最高気温が更新されたというニュースを聞くと嬉しくなると書かれているが、それも今では言えないだろうな。2023/10/09
Inzaghico (Etsuko Oshita)
9
庄野の随筆は、読み終わると必ず心が暖かくなり、穏やかな気持ちになる。登場人物はみんな面白くて味があるし、何より家族がいい。とくにお子さん三人。長女の夏子さんは文章の名人で、山の上の親分さんとおかみさん(庄野と奥さん)に宛てた手紙は、父親も一目置いていたらしい。今回も本書に文章を寄せていて、また読んでいて涙ぐんでしまった。どうしていつも夏子さんの文章を読むのは電車の中なのか(苦笑)。2020/02/21
よっし~
7
第三の新人の中でも作為というものがほとんどない独自の作風でひとり境地を拓いた作家・庄野潤三。その若き日から円熟期に至るまでのエッセイを集めた一冊。家庭でのできごと、愛する文学作品、世相への思い、敬慕する作家たち……中島京子が「解説」に書いているが、この本を読むと、「第三の新人」というグループは、作風がバラバラなのに、なんと仲が良かったことだろうと羨ましくなる。この本を読んでいるときだけ、時間がゆっくりと流れている気がする。2020/03/05
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