出版社内容情報
開拓期の北海道。
命が軽んじられる場所で、生き抜こうとする者たちがいた。
騙されてタコ部屋に送られ、過酷な労働を強いられる男。
貧困にあえぎ、子のため身を売る女――。
旅でこの地を訪れた現代の就活生・上原沙矢は、
彼らの人生に触れ、己の道しるべを見いだす。
時代を超え、生きる意味を問う傑作!
内容説明
開拓期の北海道。命が軽んじられる場所で、生き抜こうとする者たちがいた。騙されてタコ部屋に送られ、過酷な労働を強いられる男。貧困にあえぎ、子のため身を売る女―。旅でこの地を訪れた現代の就活生・上原沙矢は、彼らの人生に触れ、己の道しるべを見いだす。時代を超え、生きる意味を問う渾身の一作。
著者等紹介
蛭田亜紗子[ヒルタアサコ]
1979年生まれ。札幌市出身。2008年に第7回「女による女のためのR‐18文学賞」大賞を受賞、’10年に『自縄自縛の私』(受賞作「自縄自縛の二乗」を改題)を刊行しデビュー。同作は’13年に竹中直人監督により映画化された(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ピロ麻呂
32
大正時代の網走が舞台。親に売られ、ひたすら借金を返すため遊廓で働き続ける少女たち。一方、常紋トンネル工事においては、貧しい男たちがタコ部屋に住みながら過酷な労働を強いられていた。生きるために必死で働き続ける若者たちを描く壮絶なストーリー。今を生きるの私たちがいかに恵まれているか…とても考えさせられる作品でした。2020/05/03
エドワード
24
北海道の開拓は明治時代から本格化する。原野を切り崩し、道を造り、橋をかける。大量の労働者の多くが劣悪な環境で働かされた。タコ部屋だ。そして多くの労働者が必要とするもの―遊郭―に売られた女たち。現代の北海道を旅する上原沙矢は、網走の図書館でその当時に懸命に生きた人々のことを知る。同じ汽車に乗り合わせた八重は娼妓となり、学生だった麟太郎はタコ部屋の主となる。二人を軸に、タコ部屋や遊郭の様々な人々の苛酷な生活、哀しい人生を、鬼気迫る描写で描き切る作者の気迫に圧倒される。葬儀社に就職した沙矢の回想の終幕が秀逸。2025/05/16
桜もち 太郎
16
大正時代、北海道網走の遊郭と、騙されて開拓のために北の国にやってきたタコ部屋で労働する男たちの物語。人権なんて全くない時代、親兄弟のために体を売る女たちの悲しい歴史が綴られる。それはタコ部屋で働く男たちも同じ、搾取の時代。それと並行に、平成の時代を生きる女子大生も登場する。その関連性が若干薄かったのが気になる。娼婦八重子は市議会選に立候補。公娼制度の廃止、タコ部屋の廃止も戦後GHQが絡まないと進まないのか。この国には自浄作用はないのか。それは今の時代を見ても感じるところだ。国や市井に自浄作用があるのか。2025/05/11
かんちゃん
11
『骨太』な作品でした。R 18賞受賞作の「自縄自縛の私」を読んだときは、作者が同郷の北海道という興味で読んだだけで正直記憶に残ってないですが、今作品は本当に骨太な作品だと思う。 取材も丁寧だし、描写も丁寧。作者の想いがしっかりと描かれていて、北海道の開拓時代の裏社会を真摯に描ききっている。女性の儚さと芯の太さを今を生きる女性の感性で描いている。もっと評価されてもいい作品だと思います。2020/04/03
ゆきこっち
5
大正時代北海道網走のタコ部屋で働く男たちと遊郭の話。圧巻でした。詐欺まがいに無理矢理労働させられたり、親の借金を背負わされたり、今も昔も上に立つ人間に何もかもむしり取られやり切れない。2023/07/23