内容説明
大正の東京。秘密結社「絞首商會」との関わりが囁かれる村山博士が刺殺された。不可解な点は三つ。遺体が移動していたこと、鞄の内側がべっとり血に濡れていたこと、そして、解決を依頼されたのが以前村山邸に盗みに入った元泥棒だったこと―。頭脳明晰にして見目麗しく、厭世家の元泥棒・蓮野が見つけた四人の容疑者の共通点は、事件解決に熱心過ぎることだった―。第60回メフィスト賞受賞作。
著者等紹介
夕木春央[ユウキハルオ]
2019年、「絞首商会の後継人」で第60回メフィスト賞を受賞。同年、改題した『絞首商會』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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W-G
377
えらく読みづらい文章で時間がかかった。違う意味にもとれる表現が多様されているせいでイマイチ頭に入ってこないタイプの文。物語自体はなんというか、あえて大正を舞台にしている割には雰囲気が盛れておらず、乱歩や横溝といった昭和初期の本格寄りかは大衆活劇調。そもそもタイトルに”絞首”とつけておいて、首を怪我した人すら一人もいない。私が無知なだけなのかもしれないが、無政府主義と絞首に何か因果があるのか?ラストの犯人の暴き方ももう少し盛り上げられなかったか?有栖川氏のいうような令和の柱には…どうだろう。2019/10/18
nobby
127
確かに複雑な読み心地…大正時代という独特の背景は魅力的なんだけど、秘密結社とか無政府主義者などにピンと来ないだけに物語になかなか入り込みにくいのが残念…視点変わっての語りに着いていくのに必死!本筋の殺人をほっぽり出した感じで、次々と起こる事件や明かされる事柄がちぐはぐばかり思わせるのに戸惑うばかり。それが最後には見事に繋がるのは上手いけど、そこまで長かった…とにかく真相明かされても、殺人の全貌は地味だし、『絞首商會』の存在感は完全に名前負け感じる(笑)もう一つ個人的には探偵論が語られ出すとどうにも苦手で…2023/01/28
モルク
115
著者デビュー作でありメフィスト賞受賞作。大正時代のお屋敷で起こった殺人事件。犯人探しの謎解きを依頼されたのは、以前この家に泥棒として侵入した蓮野。そして彼とその友人ワトソン的な立場の井口、井口の妻や姪も巻き込まれていく。四人の容疑者たちはお互いに牽制し会うもそれぞれの事情を抱え謎解きに異常に熱心。事件の解決は意外性がありおもしろい。時代背景のせいもあるがちょっととっつきにくい文章をクリアできれば後半謎解きの部分は一気に…。夕木作品、新作から遡って読んだが、次第に読みやすくなっている。今後の作品も期待大。2023/01/08
aquamarine
79
物語に没頭出来るまでが苦戦。とにかく前半は視点の変更と時系列についていけず、あれ?これ誰視点?と混乱して何度も戻ってしまった。読み落としたところもあるかもしれない。探偵役と依頼者の不思議な関係や、ちりばめられた余計な物のない伏線と回収は見事なのでそこがとても勿体ないと思う。メフィスト賞受賞のデビュー作なので、仕方がないのだろうが、あの「方舟」をその後書かれたことを思うと、きっとこの本も今書かれたらずっと少ないページ数で綺麗に書かれるんだろう。雰囲気も設定も大好きなので彼らの登場する他作品もぜひ読みたい。2023/07/21
がらくたどん
62
夕木作品を評判の『方舟』から逆にたどってのデビュー作。時は大正。「血液型による親子認定」の研究者が刺殺された。どうも世界的な無政府主義系テロ組織が関わっているらしい。容疑者は研究者に近しい四人。その内一人の依頼で探偵役を務めるのは人嫌いが高じて銀行員から泥棒への転職経験がある「元泥棒」と世話焼き変人画家。途中「ホントに真相を説明する気、あるんだろうか?」と心配になるほど四人皆が怪しさの大放出大会を繰り広げ、探偵側も拉致されたり怪我したりの大混乱。話があちこち行く読みにくさはあるがその分ラスト50頁は爽快♪2022/12/23