内容説明
十七世紀フランスの激動を生き抜いた公爵にしてモラリストが、人間の本性を見事に言い表した「箴言」。鋭敏な洞察と強靭な思考、そして豊かなユーモアによって紡ぎ出された一行が、神からの自立を果たした近代人の抱える「自己愛」という宿命を撃ち抜き、さらには現代のわたしたちの心に深く刺さる。原文が醸す空気までをも伝える新訳。
目次
書肆から読者へ
道徳的考察
削除された箴言
没後収録の箴言
さまざまな考察
ラ・ロシュフコー自画像
著者等紹介
ラ・ロシュフコー[ラロシュフコー] [La Rochefoucauld]
ラ・ロシュフコー公爵フランソワ6世。1613‐1680年。モラリスト文学者。フランス貴族であったが、政争に敗れ、隠退する。その後はサロンで活動し、『箴言集』『回想録』などを著す
武藤剛史[ムトウタケシ]
1948年生まれ。京都大学大学院博士課程中退。共立女子大学名誉教授。専攻はフランス文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
CCC
10
自己愛は重要な要素ではあるだろうけれど、ここまで人の行動をなんでも説明できるような概念でもないだろう、と思った。すべてを説明してしまうような万能な概念は、往々にしてその実なにも説明できていないものだが、これもそのパターンではないか。とはいえそもそも愛という言葉があらゆる物事を説明してしまう万能な概念と化しているので、その裏返しという気もする。それにケースバイケース的に見るなら、女性についての単なる偏見なども混じってはいるが、的はずれなことばかり書いているわけでもない。2025/03/17
双海(ふたみ)
10
ページ構成がシンプルで読みやすい。良い。2024/09/22
刳森伸一
10
解説にもあるように自己愛などに対する批判は今でも正鵠を射るものがあると思うが、その一方で「女とは云々」などと本質論的に上段から切り捨てるものも多く、今となっては古臭いと感じずにはいられない。古典としての地位は今後も変わらないとは思うものの、これぞ「not for me」と叫びたくなる本であった。2020/12/31
トッド
9
■敵を作りたくば友に勝つがいい。味方を作りたくば友に勝たせるがいい。■情熱はどんな相手も説得する。■意見を非難されるよりも趣味をけなされる方が耐え難い。■寛大さは大抵、虚栄心・怠惰・恐れ。■気分は運より奇想天外。■誠実さとは心を開く事。■友人に騙されるより信用しない方がもっと恥ずかしい。■不信は裏切りを正当化する。■騙され合ってなければ長くは付き合えない。■謙遜は傲慢が考え出した演義。■よい趣味は知識より判断力から生まれる。■青春とは酔い。■女が男に靡くのは情熱より弱さから。★自己愛=力への意志⇒競争社会2020/05/06
植岡藍
7
今となっては古くさいものもあるが現代にも十分通用する。以前ツイッターで「SNSが名誉や名声を重視する中世のような価値観にさせている」旨の指摘を見たが、そうした価値観の中で一層今の自分を振り返るにいい本だった。2021/12/23