出版社内容情報
ひとつの家族には、ひとつの物語がある。妻への思いを哀切を込めて描く表題作「おもかげ抄」ほか、様々な愛を映した感動の七篇。
内容説明
何をするにも妻を優先する浪人の孫次郎。ある日、窮地に陥った武士を助けたことから剣術指南役として召し抱えられることになるが…。孫次郎の告白と夫婦の真実を、哀切深く綴った表題作「おもかげ抄」ほか、本当の優しさとは何か?その問いに向き合う「かあちゃん」など、さまざまな家族、愛の姿を描く七篇。
著者等紹介
山本周五郎[ヤマモトシュウゴロウ]
1903年6月22日、山梨県生まれ。本名・清水三十六。1926年、「文藝春秋」に『須磨寺附近』を発表し、文壇デビュー。1932年、雑誌「キング」(講談社)に初の大人向け小説となる『だだら団兵衛』を発表、以降も同誌にたびたび寄稿し、時代小説の分野で認められる。1942年、雑誌「婦人倶楽部」に『日本婦道記』の連載を開始。1943年に同作で直木賞に推されるがこれを辞退、以降すべての賞を辞退した。1967年2月14日、肝炎と心臓衰弱のため仕事場にしていた横浜にある旅館「間門園」で逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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じいじ
89
山本周五郎の「家族」を描いた7篇を選りすぐった短篇集。既読の作品も含まれいたが、いずれも秀作で面白い感動作でした。敢えてのイチ押しは【花宵】。武士の父亡きあと、女手ひとつで息子二人を立派に成人させた母子の物語。叱られるのは常に弟、兄だけを贔屓する母親。お家の跡継ぎの兄を重んじる〈長幼の序〉がその理由なのか?と弟は悩みます。最後に母の愛のムチを理解します。夫婦愛を描いた【夫婦の朝】は、とても心に沁みる作品です。【ちゃん】【女は同じ物語】は再読ですが、じんと熱いものが込みあげてきました。お薦めの一冊です。2021/02/11
KEI
36
読友さんからのプレゼント本。家族にまつわる人情話の短編7編。どの作品も甲乙つけたいが、一押しは【花宵】夫亡き後、長男を重んじる母に不条理さを覚える弟は、ちょっと耳にした「継子」と言う言葉に自分は貰い子だと思い込み兄に嫉妬するが本当の母の気持ちに気付く。【女は同じ物語】女嫌いの息子に侍女をあてがって、その侍女を好きにさせ、許嫁との婚礼を進めようとする母の思惑に気がつき大円団。【かあちゃん】貧しさに耐えケチと言われながら牢獄から出て来た友を助ける。どれも読み心地の良い話だった。2021/06/03
ひさか
22
週刊朝日別冊1955年2月:ちゃん、少女の友1942年4月号:花宵、講談倶楽部1955年1月号:女は同じ物語、キング1937年7月号:おもかげ抄、小説新潮1960年8,9月号:あすなろう、婦人倶楽部1941年3月号:夫婦の朝、1955年7月号オール讀物:かあちゃん、の7つの短編を2019年7月講談社文庫刊。ちゃん、かあちゃん以外が初読み(読んだけど忘れている?)で、いずれも山本さんらしい人情味豊かな話ばかりで良かった。2023/09/24
山内正
6
別にどこが悪いで無く気儘者でして 孫次郎は城下で噂が広まった 隠居六兵衛が手習いの話を持ち掛け お師匠斬り合いがあそこで 子供が呼び一人を五人が囲んでた 三人を打ち老侍が馬で駆け寄る 沖田家へ稽古に半月になる 士官の誘いを持ち出されて帰る 仏壇に菓子を供え椙江そなたの好きな菓子だ士官の話も 今になって叶うとは死んだ後で 六兵衛にこの地を離れると詫びを 街道で旅姿の女が待っていた 小房殿、いいえ椙江ですと手紙を 我が娘を思わしい人の再生とお連れ下され、心が変わりましたら是非 立寄りを 小房殿行かれますか 2021/04/29
山内正
5
貰えば同じようなものだ 父親城代家老が言う母は侍女を付けると反対だとでもあなた 名を紀伊と言います八月話をする様になる俺は只、只あの娘が 着換えの時紀伊が泣き出す 縁談相手は嫌だ俺は紀伊がいい 来てくれるか 翌日紀伊はお暇を取りましたと母が 置手紙にきっと戻りますと 式を挙げ横に花嫁が綿帽子を被り やがて宴は終わり寝間へ行く 言う戻るのだ紀伊 花嫁が座ってた 堪忍して下さい 紀伊が居る お側に使え気に入らなければ諦める積もりでした 母上もご存知です 紀伊は嬉しゅう御座います2021/03/01