出版社内容情報
『すばらしい新世界』で21世紀に世界が抱える問題を先取りしたハクスレーの小説集。名訳者が精選し、訳し下ろした5つの傑作短篇。
内容説明
ディストピア小説の金字塔『すばらしい新世界』、音楽の対位法を駆使した傑作『恋愛対位法』等、その博覧強記と審美眼で二十世紀文学に特異かつ確固たる地位を占めるハクスレーの本領を示す短篇集。三人の女性との恋愛が徐々にミステリ色を帯びる「モナリザの微笑」、朝食から昼食までの間に文芸評論家が財界の巨人の人生と思想を語り尽くして圧倒する「チョードロン」他。これぞ小説の醍醐味!
著者等紹介
ハクスレー,オルダス[ハクスレー,オルダス] [Huxley,Aldous Leonard]
1894.7.26~1963.11.22。小説家、批評家。イギリス生まれ。オックスフォード大学卒業。小説、文明批評のほか、神秘思想・精神世界へも造詣が深く、精神科医の指導のもと自ら幻覚剤(メスカリン)を使用した経験を記した『知覚の扉』などの著作でも有名。代表的な小説に『恋愛対位法』『すばらしい新世界』『ガザに盲いて』『島』他がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
81
博覧強記の奇才オルダス・ハクスレーの本領発揮の短編5つ。『モナリザの微笑』はミステリのようだが、才能があるにもかかわらず無為に過ごす有閑知識人など生きるに値しないとでもいうようなラストにハクスレーらしさを感じる。「アリとキリギリス」の逆パターンのような『小さなメキシコ帽』や『半休日』は、主人公の思いとまったく逆に話が進むという何とも皮肉な話。ハクスレーはあらゆることに秀でているごく少数の天才で世界は変えられていくと考えていたというが、そういった天才が悲劇的な目に遭う『天才児』は、天才への愛が溢れている。2019/07/27
藤月はな(灯れ松明の火)
70
表題作は再読だが、ハットン、腹立つわ・・・。だからこそ、自分は高潔だと嘯きながら俗物満々で女性への敬意がない男が陥る落とし穴に意地悪くもニヤリとしてしまう。「天才児」は万有の才能を持った少年の悲劇。しかも才能の否定ではなく、才能を認められてからが悲劇だったというのは現実性がある。しかし、現実味がありながらもその苦味が強すぎずに甘やかな哀愁へと変わるのはそんな天才児への温かい視点が作者の筆から溢れているからだ。「半休日」は夢見ていた事と現実のギャップのあるあるに苦笑。2019/08/13
みつ
24
およそ半世紀ぶりのハクスレーの短篇体験。所収作品も含めきれいさっぱり忘れているため、その意味では新鮮。へたをすれば鼻につきそうな博学ぶりが小説の流れに自然に溶け込み、独自の存在感を示している印象。『モナリザの微笑』は、暇を持て余す男の度し難い行状を描きながら、結末はリドル・ストーリーのようにも読める。『天才児』は数学の証明まで盛り込まれた風変わりな作品。少年の運命に対する悲しみが、皮肉屋の作者らしからぬ共感を呼ぶ。一番面白かったのは『半休日』。冴えない男の二人の女性に対する妄想を描いて微苦笑を禁じ得ない。2023/07/03
ふみふみ
7
表題作は一人称が「おれ」の上流階級知識人。サイコパスっぽいキャラがなんだか筒井康隆の短編を読んでるような気分にさせます。「天才児」は含蓄に富んだ悲しい話。ハクスリーらしい博識とシニカルさが入り混じった短編集でした。2021/01/09
Susumu Kobayashi
7
表題作はミステリ傑作短篇集などに収録されることのある有名作。今回は再読だがすっかり内容を忘れていた。「天才児」は希有な才能を持った少年が理解のない大人に押しつぶされる話。「小さなメキシコ帽」はイタリアでメキシコ帽をかぶっていたことから画家と間違えられたことから、不思議な老伯爵と知り合いになる。「半休日」は冴えない男がロマンスを夢見て現実とのギャップに翻弄される話。未訳だった「チョードロン」は亡くなった実業家チョードロンについて、その自伝の代作者ティルニーがチョードロンの本当の姿を語る話。2019/09/30