出版社内容情報
加藤 聖文[カトウ キヨフミ]
著・文・その他
内容説明
南満洲鉄道株式会社(一九〇六~一九四五)は、初代総裁後藤新平のもと、鉄道のみならず新聞、ホテル事業、調査機関と手を広げ、大陸支配の代名詞として君臨するに至る。だが「陽に鉄道経営の仮面を装い、陰に百般の施設を実行する」実質的な国家機関の実態は、政官軍の思惑に翻弄される迷走の連続だった。年表、首脳陣人事一覧、会社組織一覧付き。
目次
プロローグ―「国策会社」満鉄とは何だったのか
第1章 国策会社満鉄の誕生(満鉄創立;政党の浸透 ほか)
第2章 「国策」をめぐる相克(松岡洋右と国家改造;山本条太郎と満鉄中興の時代 ほか)
第3章 使命の終わりと新たな「国策」(満洲事変と満鉄の転換;蜜月の終わり ほか)
終章 国策会社満鉄と戦後日本(満鉄の終焉;満鉄の「戦後」)
エピローグ―現代日本にとっての満鉄
著者等紹介
加藤聖文[カトウキヨフミ]
1966年愛知県生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後、証券会社勤務を経て、早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程修了。専門は日本近現代史、歴史記録(アーカイブズ)学。人間文化研究機構国文学研究資料館准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
103
国策とは長期的な国家戦略を立てることだが、これほど日本人の苦手な分野もない。長い目で物を考えられず、強力なリーダーがいないため明確な方向性を示せず、各方面の利害調整で手一杯になってしまう。満鉄の40年は「国策会社」と位置付けられながら、会社を都合よく利用しようとする時々の政府や軍部の思惑に翻弄され続けた。それは明確な戦略なしに中国での戦争を拡大し、結局は敗北で終わった日本の近代史と連動している。この戦略不在は、コロナ禍で迷走を続ける現在も変わらない。いわば満鉄は、日本の宿痾と悲劇を映し出す象徴だったのだ。2021/09/22
まーくん
82
日露戦争終結のポーツマス条約(1905)でロシアより取得した東清鉄道南部支線の旅順ー長春間。その運営のために設立された南満州鉄道株式会社。後藤新平総裁のもと単なる鉄道会社はではなく、植民地経営の国策会社として英国東インド会社のような役割を与えられるも、外務省、関東軍、関東庁の権力闘争に翻弄される。後の満州事変の結果、全満州の鉄道を管轄するが、完全に関東軍の隷下に置かれ、産業振興など経済活動の主導権は失われていく。敗戦による会社解散まで、40年に亘る「満鉄」の長い歴史。膨大な参考文献に基ずく詳細な記述。 2019/08/16
100
56
満鉄の誕生から終焉を辿る本書が象徴するのは、日本の法制の不備でそれは現在でも改善されていないように感じる。急速な国家の拡大と世界情勢の変革の中で、的確な現状認識の共有・一貫した方針の策定とそれを継続させる組織体制が必要だったのではないでしょうか。2021/02/28
nnpusnsn1945
53
満鉄についての概説書。国策会社として設立されたが、当初の目的と方針が次第に乖離してゆき、消滅するまでを描いている。満州国が出来たあと、関東軍の完全な言いなりになったわけではないらしい。関東軍自体も陸軍の派閥抗争に巻き込まれたようである。戦後満洲は中国にとっては皮肉ではあるが、重工業の拠点として発展したらしい。しかし、中共内部の抗争が絡んで評価は一定でないとのこと。また、日本側は引き揚げ等の国内問題としかあまり見ていない傾向があるようだ。歴史問題で揺れるのも無関係ではなかろう。2022/10/11
とくけんちょ
50
満州、傀儡国家、なにか男心をくすぐるロマン、そして悲哀を感じる。満鉄とは、単なる鉄道会社ではなく、国策機関であったと思う。軍、政治の影響を大きく受けて、敗戦とともにその役目を終える。おおむね40年。関係者はどのような人生を送ったか。一従業員のその後を残された資料から想像するのもいい。2022/11/15