出版社内容情報
“ひとり”が当たり前になった時代に、映画監督・荻上直子がろくでもない愛すべき人々のアパート暮らしを描く、書き下ろし長編小説。
内容説明
刑務所を出て、誰とも関わらずひっそり生きていくつもりで住み始めた、変わった名前の古びた木造アパート。出会ったのは訳ありな大家と、世の中から落第した隣人たちだった。友達でも家族でもない。でも、孤独ではない。“ひとり”が当たり前になった時代に、静かに寄り添って生き抜く人々の物語。
著者等紹介
荻上直子[オギガミナオコ]
1972年、千葉県生まれ。映画監督・脚本家。千葉大学工学部画像工学科卒業。1994年に渡米し、南カリフォルニア大学大学院映画学科で映画製作を学び、2000年に帰国。2004年に劇場デビュー作「バーバー吉野」でベルリン国際映画祭児童映画部門特別賞、2017年に「彼らが本気で編むときは、」で日本初のベルリン国際映画祭テディ審査員特別賞など、受賞多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケンイチミズバ
153
生きてる限り人との関わりを持たずにいることの方が不可能だな。主人公はアパートに入居して早々に美しい大家に心を惹かれるし、ずけずけ介入して来る隣人との関係も生まれる。社会から外れたと思っても引き戻される。煩わしいことと心地よいことはともに存在していて煩わしいことから逃げてばかりでは済まないのが人生。幽霊の設定以外は隣人たちの個性がそれほどでもなく、台風一過の爽やかさもややあっさり。一人分の料理というのは作っても余ってしまうし、一緒にどうですかという経験もある。一緒にお肉をつつくのは家族の食卓にも等しいな。2019/07/28
ちょろこ
133
大事なことが詰まっていた気がした一冊。ちょっと世間からドロップアウトした人たちが繰り広げる日常。各々が見つけ感じ学びとった大事なことがさりげなく口からこぼれていく瞬間がとても良かった。それを自然と吸収して、日々変化していく山田くんにじんわりきたな。丁寧に、些細なことにシアワセを感じること、忘れがちだけどとても大事なこと。どんな人だって思いっきり感じていいよね、感じるべきだよね。桃色、紫色、今日という日が閉じていく時間の空がなぜこんなに美しい色をしているのか…一日の終わりを告げる空が今、とても愛おしい。2019/08/03
なゆ
127
荻上さんが書いたと思うと、なんとなく映像で浮かぶ。はじめは白黒の寂しげな味気ない映像、でもアパートに移ってからの生活には、少しづつ色付きはじめて、まばゆく明るくなっていく。最後はびっくりするくらい美しい紫の空がいい。川っペリに建つ、昔ながらのボロいアパート“ハイツムコリッタ”。親には捨てられ気づけば犯罪を犯し、出所してきた山田くんの辿り着いたところ。どこかワケアリそうな、世間から置いてきぼりをくらってしまったような住民たちと関わるうちに…。ささやかなシアワセくらい誰だって感じていいから、一生懸命生きよう!2019/07/28
おしゃべりメガネ
123
大好きな映画の1つ『かもめ食堂』の監督が綴る、なんともいえないヒューマンなお話。ちょっとした前科のある主人公は流れに流れて、とある塩辛工場で働くことに。住んでるアパートはちょっと不思議な入居者がいる「ムコリッタ」というところ。人と人とが寄り添い、自然の流れで伝わる優しさの描写がなんともいえないステキな作品です。ほっこりレベルが高いわけではなく、どちらかというと低めのトーンで展開していきますが、不思議とネガティブなキモチにはならないです。さすがあの名作『かもめ食堂』の監督さんだけに、ステキな作品でした。2023/01/19
nico🐬波待ち中
123
一人でよかったはずだった。誰とも関わらずひっそりと暮らしていくと決めたはずだった。そうやって人生を諦めていた彼はささやかなシアワセを実感していく内に、生きる喜びを見出だしていく。川っぺりに佇む古びた木造アパート"ムコリッタ"で。誰かと一緒にご飯を食べる。話をする。笑う。その一つ一つはささやかだけれど、何ものにも代え難いシアワセなのだ。そのことに気が付いた彼は、昨日よりももっとシアワセだ。一人でも生きていけるけれど、誰かと一緒がずっといい。いつも見ている夕焼けも、誰かと一緒なら、ずっと綺麗に思えるはずだ。2020/01/10
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