出版社内容情報
藤沢 周平[フジサワ シュウヘイ]
著・文・その他
内容説明
藩主の弟、長門守忠重が自らの嫡子を次期藩主に据えようと、御家乗っ取りを企てた。「長門守一件」として知られる史実を題材にした、のちの御家騒動シリーズの原点とも言うべき表題作。ほか、小藩の小禄武士に嫁いだ女房を描く「夢ぞ見し」など、初期から中期に移る藤沢文学の多彩な五篇を収録した短篇集。
著者等紹介
藤沢周平[フジサワシュウヘイ]
1927年、山形県鶴岡市生まれ。山形師範学校卒。’73年『暗殺の年輪』で直木賞、’86年『白き瓶』で吉川英治文学賞、’90年『市塵』で芸術選奨文部大臣賞を受賞。’95年、紫綬褒章受章。’97年、69歳で死去。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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じいじ
107
嫁いだら家財道具ひとつなかった。そして、何年か過ぎると夫に子種までなかった。でも、仲のよい円満夫婦です。—そんな夫婦のところにある日突然、夫の客人が来訪、長逗留で妻の心うちにさざ波が…。「美男子といる方が女は心楽しいのだ」とは、妻の本心ではないのだろう? 禄高二十五石の下級武士夫婦をユーモアに描いた【夢ぞ見し】。表題作の武士モノ2篇と女たちの生き様をいきいきと表現した市井モノ3篇。藤沢氏らしい味わいのある短篇集です。2019/04/30
shincha
46
久しぶりの藤沢周平さん。武家もの2編、市井もの3編、計5編の短編集。どの作品も余韻を残す秀逸な作品だが、やはり心に残る好きな作品は表題にもなっている長門守の陰謀だ。江戸初期の幕府と地方の大名の立場が確立しきっていない時期に、実際にあったお家騒動を描いている。事実を元に藤沢周平の手によって描かれると脳内に目の前で起こっている出来事のように鮮明に浮かんでくる。あとがきにあったが、既読の他の作品にも影響を与えたらしい長門守事件。それらの作品を再読してみよっと!面白かった!2024/03/04
優希
46
初期から中期の作品を集めた短編集。武家もの、姿勢もの、歴史小説とその作風は様々で読んでいて飽きません。味わい深い語りも良いですね。面白かったです。2023/02/17
ちゃいろ子
45
どの話もそれぞれ味わいがあったが、「夢ぞ見し」がお気に入り。まるで一本の映画を観終わったかのような満足感。昌江の気持ちがこちらにも写ってうっとりしてしまった(笑)大好きなパターンのうだつが上がらないように見えて剣客な夫と、実は!!な居候さん。ああ、素敵!! そして表題の長門守。こちらは教科書のような悪人ぷり。悪人と愚かな藩主により、大勢の命が失われてしまった史実に基づいたお話。 あとがきに藤沢氏によるエッセイが。お元気でいらした頃のお姿が目に浮かび心が温かくなった。2021/03/28
ぶんぶん
26
【図書館】短編集・五編を収録。 なかでも、「夢ぞ見し」が、ほんわかした香りがして良い。 亭主の甚兵衛は無口の堅物、それに連れ添って七年、妻の昌江は苦労の連続。 友達の淑乃とおしゃべりが大好き、居候の若侍のやり取りで鬱憤を晴らす。 二十八歳の昌江と二十三、四の啓四郎、いろいろと想像して盛り上がる。 甚兵衛が剣の達人と分る処がミソ。 最後のオチと幸せなその後を描いて絶品です。 「遠い少女」の男はいつまで経っても夢見るもんだという事、女の現実感は凄いものがあるという事。 五編それぞれの趣がありました。 2022/07/12
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