講談社文庫<br> すべての戦争は自衛から始まる

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講談社文庫
すべての戦争は自衛から始まる

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  • サイズ 文庫判/ページ数 304p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784065143100
  • NDC分類 319.8
  • Cコード C0195

出版社内容情報

20世紀における大きな戦争はすべて「自衛意識」から発動した。過去に学ばず、加害の記憶を消し、この国は再び「戦争」を選ぶのか。歴史上、多くの戦争が自衛意識から始まった。ナチス最高幹部だったヘルマン・ゲーリングは「戦争を起こすことはそれほど難しくない」と述べている。「国民に対し、我々は攻撃されかけているのだと危機感をあおり、平和主義者には愛国心が欠けていると非難すればいい」と。安倍政権は危機を誇張して「抑止力」や「自衛」の必要性を訴えている。「集団化」が加速するこの国は、その意味を深く考えないまま流されてしまうのか。
だから、「戦争はダメ!」と言い続けなければならない。いや、それでは足りない。「戦争はダメ!」だけではダメなのだと言わなければ。なぜなら、それだけでは「戦争を回避するために抑止力を高める」とか「戦争を起こさないように自衛力を身につける」などのレトリックに対抗できなくなる。我々は戦争の被害だけでなく加害の記憶を刻む必要がある。被害と加害の二つの視点を重ねることで、普通に市井に生きていた人が、なぜあれほど残虐な行為に耽ることができたのか、そのメカニズムが明らかになる。理由までは行き着けないにしても、人間とはそんな存在なのだと実感することができるようになる。戦争の悲惨さ、残酷さが初めて、立体的な姿で立ち現れる。
繰り返す。多くの戦争は自衛の意識から始まる。あの国を侵略してやろうなどと始まる戦争はほとんどない。そして自衛の意識が発動したとき、被害の記憶だけでは踏みとどまれない。加害の記憶から目をそむけず、何度でも自分に刻みこむ。それを自虐史観と呼びたければ呼べばよい。胸を張って自虐する。この国が、再び「戦争」を選ばないために。
今、最注目の論考、待望の文庫化!

森 達也[モリ タツヤ]
著・文・その他

内容説明

侵略を目的として軍隊を持つ国はない。あくまで自衛のための軍隊。それは世界共通だ。イスラエルの軍隊の名称は「国防軍」。アメリカのペンタゴンは「国防総省」で、中国は「人民解放軍」。しかし自衛の意識は簡単に肥大する。歴史がそれを証明する。この国が再び戦争を選ばないために。注目の論考、遂に文庫化。

目次

第1章 すべての戦争は自衛から始まる(南京大虐殺、被害者は三〇万人でも一五万人でも(端的に言えば)どっちでもいい
北朝鮮の戦勝記念館には「自衛」のメッセージが溢れていた ほか)
第2章 「自分の国は血を流してでも守れ」と叫ぶ人に訊きたい(冷戦時代の産物だった抑止力は、こうしてまた息を吹き返した;平和で頭がボケているからこそ、気軽に「血を流す覚悟」などと口にできるのだ ほか)
第3章 戦争の責任はA級戦犯だけにあるのではない(橋下市長の慰安婦問題発言は、女性はもちろん、男性をも蔑むものだ;タイトルを勝手につけるな。批判するなら最後まで読め。絶対にまとめるな ほか)
第4章 それでもこの国は、再び「戦争」を選ぶのか(最大の自衛とは、安全を脅かす存在を洩らすことなく消滅させることである;治安維持法制定時の新聞を見て実感、この国はまた同じ時代をくりかえす ほか)
エピローグ 日の丸の小旗を振りながら粛々と集団は動く

著者等紹介

森達也[モリタツヤ]
1956年広島県生まれ。映画監督、作家、明治大学特任教授。’98年にオウム真理教信者達の日常を追うドキュメンタリー映画『A』を公開、ベルリン国際映画祭などに正式招待される。2001年、続編『A2』が山形国際ドキュメンタリー映画祭で特別賞・市民賞を受賞。’16年には、佐村河内守の「ゴーストライター問題」を題材に撮影した『FAKE』が大きな話題を呼ぶ。作家としては、’10年に刊行した『A3』で第33回講談社ノンフィクション賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

rico

44
色々感じるところはあるけど、アウシュビッツやポルポトの例を引くまでもなく、人間は時として、ためらいなく多くの同胞の命を奪い得る存在であることを、心に刻んでおきたいと思います。そしてそれを見つめる勇気が必要なことも。おぞましい100人斬り競争に熱狂した一般庶民も、イノセントとは言えないはず。筆者の後書きが刺さります。「あきらめない。同じことを言い続ける。書き続ける。だって自分が生まれた国だ。子どももいる。この国を愛している。」平成に読んだ最後の1冊。私もあきらめたくはありません。2019/04/30

阿部義彦

26
講談社文庫新刊、森達也さんの時評です。ダイヤモンド社のPR誌「経」に連載された「リアル共同幻想論」が下敷きだそうです。『そう言えば、安倍晋三と百田尚樹の対談本のタイトルは【日本よ、世界の真ん中で咲き誇れ】悪い酒をのみすぎたのだろうか。思わず大丈夫ですか、と言いたくなる。』そして、現在の日本はもう無茶苦茶です。次の選挙では自民党以外に入れます。自民党を下野させて二度と復活させてなるか!もう我慢できねえ。2019/02/11

かふ

22
誰が読んでも憲法と自衛隊は矛盾する。それを解釈で通す。自衛隊を軍隊ではないといい、その論理が通らないと憲法改正だという。すべてそのパターンだ。最初が間違っているのだから後になって間違いの幅が大きくなるのは当然なのだ。アメリカから独立しない限りこの国は変われない。だから誰も責任を取らない。天皇制が続いているのもアメリカの日本を傀儡国家とする戦略だったという。自虐史観という歴史修正主義。ナチスの戦争映画は公開されるけど日本が行った侵略映画は公開されない。敗戦を終戦で幕を引く。朝鮮戦争やベトナム戦争があった。2021/09/10

Kei Ogiso

15
読まれてほしい本。過去の教訓を無駄にしないように。日本の資源状況、食料自給率を考えれば、戦争ができる国では無いのは明白なのにね。だからこそ外交にセンスが求められるのだが。『「誇り高くて気高い私」などと言われて友人になりたいと思うだろうか。』のくだりは笑えるけど、その通りだと思う。2019/02/01

坊っちゃん

12
★★★★1/2 著者は南京、アウシュビッツ、キプロス、大阪にある忘れ去られた陸軍墓地などあらゆる所へ行き考える。なぜ人間はこれほどまでに残酷になれるのか、と。「被害だけを強調して記憶した実例の一つが今のイスラエルだ。その結果として被害は加害にあっさりと転換する」「加害の記憶から目をそむけてはならない。語り継がねばならない。ここは絶対に譲れない一線だ」と語る。まったくその通りとしか言いようがない。自虐史観が云々と語る自称「普通の日本人」な方々に本書を強くお勧め致します。(コメント:2019/07/01)2019/07/01

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