出版社内容情報
2018年1月に逝去した政治家・野中広務の生涯。2018年1月に逝去した政治家・野中広務の生涯。政敵とは徹底的に闘う、強面のイメージが強かった。だが、その一方で、戦争を憎み、沖縄に寄り沿い、平和を愛した政治家でもあった。その素顔に迫る。
菊池 正史[キクチ マサシ]
著・文・その他
内容説明
戦争は二度と起こさない。弱者を決して見捨てない。そのためならば平然と友を敵に回し、敵を友とした―権力闘争を挑み続け、「影の総理」「政界の狙撃手」と恐れられた男。硬と軟、恫喝と懐柔―強面の政治家が生涯を賭けて守ろうとしたものとは。
目次
第1章 「戦争は許さない」という政治(軍国青年;軍隊と暴力 ほか)
第2章 叩き上げの精神(宿命;「帰りなんいざ」 ほか)
第3章 虎視耽々(布石;ものがたりの謎 ほか)
第4章 反逆者との戦い(戦後保守の本質;戦後保守の分岐点 ほか)
第5章 保守本流の敗北(償いの政治;影の総理 ほか)
著者等紹介
菊池正史[キクチマサシ]
1968年生まれ。93年、慶應義塾大学大学院修了後、日本テレビに入社。政治部に配属。旧社会党、自民党など各政党を担当し、2005年から総理官邸クラブキャップ。08年から編成部、11年から報道番組プロデューサー等を経て現在は政治部デスク(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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hatayan
53
現役の政治記者が著す政治家・野中広務の評伝。地元の町長から身を起こし、政権の官房長官に就き総理の座をうかがうまでに。野中の政治手法は恫喝と懐柔、硬軟を使い分けた一見矛盾をはらむものでしたが、根底には被差別部落の出身であり戦中世代として弱者への思いを大切にし、二度と戦争をさせないためには手段を選ばない一流のリアリズムがありました。 小泉政権以降、複雑さより単純さが受けるようになり野中は政界から引退しますが、公明党と自民党との連立に道筋をつけた点において、現在の安倍一強の基礎を築いたと著者は指摘しています。2020/06/26
かおりん
22
見た目怖そうで厳しそうなんだけど、なんて人情味あふれる人なんだろう。戦争を体験し、部落の出身であるからこそ弱者を思い社会の精神構造を変えようとした。戦後の政治の移り変わりを様々な政治家との関わりのなかでどうとらえていったかを知ることができた。大西少尉とのエピソードには泣けた。権力闘争には負けたかもしれないが最後まで戦い抜いた生き様がかっこいい。政治部デスクの著者の温かい見方で、すごく読みやすかったし分かりやすかった。他の著書も読んでみたいと思った。2019/06/01
ちくわん
21
2018年12月の本。「決める政治」の本質を語る。日本のエリートの独裁をどう見るか。そうした意味で野中広務氏は平成の名脇役であった。少しずつ動かしていくことが極めて自然なのかもしれない。2022/06/23
nishiyan
16
野中番の経験もある日本テレビ政治部デスクが書いた野中広務元官房長官の評伝。野中氏の評伝というと野中氏の生前に書かれた魚住昭氏によるものがあるのだか、本作は没後ということもあって新事実が出るのではないかと期待して読んだ。新事実というのはなかったものの、野中氏の功と罪をバランスよく指摘しているところは好感が持てた。安倍政権的なものを作った大元は野中氏ではという指摘は勇み足のように感じた。2019/01/25
梅干を食べながら散歩をするのが好き「寝物語」
14
日テレ記者による野中広務の評伝。差別を嫌い平和を愛する大人の政治家としての野中のことを知りたいと思い読んだ。自身の戦争体験から、戦争を感情的に嫌い、平和を第一義に置いた政治家だとわかる。目の前の弱者を放置できず、時には政党を超えて政治活動をしてきた事実も知った。一部エリートの突進を嫌い「調整型」の政治を極めたが、小泉総裁の登場による「決める政治」への環境変化とともに消えた政治家だ。惜しすぎる。安倍一強と言われた昨今、野中の如く少数意見をも尊重しようとする良心派政治家の登場を政権政党に期待したい。2020/08/27