出版社内容情報
がんの話がこんなに面白くてよいのだろうか…。 ドイツ在住の詩人が飄々と綴った「闘病小説」。がんの話がこんなに面白くてよいのだろうか…。 ドイツ・ミュンヘン在住の詩人が飄々と綴った「闘病小説」。
ドイツでのがんの宣告、手術、リハビリ訓練、放射線治療、そして得たものは、臍の下の空洞と…。
柴田元幸氏推薦――「前立腺を除去してみれば、おくのほそ道、ダンテの宇宙。詩と散文の、どこか怪しげな、にもかかわらず(否、だからこそ)胸に迫る融合。」
四元 康祐[ヨツモト ヤスヒロ]
著・文・その他
内容説明
長年ドイツで暮らす「私」は、ある日、前立腺がんと診断された。手術、リハビリセンターでの3週間、その後の放射線治療、そして得たものは、臍の下の空洞と…。がんの話がこんなに面白くてよいのだろうか…。ドイツ在住の詩人が瓢々と綴った闘病私/詩小説。
著者等紹介
四元康祐[ヨツモトヤスヒロ]
1959年大阪府生まれ。82年上智大学文学部英文学科卒業。86年アメリカに移住。90年ペンシルベニア大学経営学修士号取得。91年第一詩集『笑うバグ』を刊行。94年ドイツに移住。『世界中年会議』で第三回山本健吉文学賞・第五回駿河梅花文学賞、『噤みの午後』で第一一回萩原朔太郎賞、『日本語の虜囚』で第四回鮎川信夫賞を受賞。ミュンヘン在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いっち
20
前立腺がんを宣告された男の日記。歌日記とあるとおり、日記の間に詩が入っている。がんの闘病と聞くと、シリアスかと思うが、ユーモアあふれる。ドイツで生活する主人公(著者も同じ)は魅力的な女性に弱い。前立腺を摘出すると性的不能になる(絶頂の感覚は残る)らしいが、それを感じさせないほど心は純粋。妻子がいるのに、女性にアプローチをかけようとする。実行に移さなくとも、精神的には不倫。だが笑える。著者の奥さんがどう思っているのか気になる。エッセイに近いが、野間文芸新人賞の候補であることから、文学の位置づけなのだろう。2019/11/04
三柴ゆよし
16
ドイツに住まう詩人・四元康裕に前立腺癌が見つかる。摘出手術、リハビリテーション、放射線治療……というおさだまりの過程が、小説ともエッセイともつかない奔放な散文で綴られるなかに、芭蕉、ダンテ、中原中也、トーマス・マン、三宅勇介……などの引用が自在に挿入される。もちろん四元自身の詩も。著者の病に対するわりきり方というかあっけらかんとした筆致がとてもおもしろい。わりとお気楽な感じで日々を経ていても、彼の前立腺にはたしかに癌細胞という死の表象があり、それを切除したあとには空洞、すなわちなにもないという状態がある。2020/11/18
ぴよ子
12
私も海外在住で入院したことがあるので、なんかその時の経験を思い出しながら読みました。 最初の方は文章になれなくて読みにくかったんですが、なれたらサクサク読めます。 途中途中に歌や詩がなどが挟まれていて、面白いです。 全体的には面白いんですが、なんていうか、プチ浮気みたいな、妻子いるのに女の人誘ったりするところは、嫌悪感が湧きました。私が女だからかもしれませんが。2018/12/09
かやは
9
癌という命に関わる病なのに前立腺という場所ゆえ「シモ」の話になってしまうというちぐはぐさがなんとも言えない。治療もはたから見ていると何処か滑稽に見えてしまうところがとてもよく描写されている。詩の心を持っているからこそ、日常で何かしらの刺激を受けるたびに感性が呼び起こされて言葉が生まれることの素晴らしさを思う。容器に溜まったクランベリー色した尿をトイレ捨てにいく描写の細やかさなどたまらない。「たんたら詩を書く」という擬音もすき。2020/07/03
mawaji
7
通崎睦美さんの書評を読んで、私も著者と同年代で摂護腺が気になるお年頃ということでちょっと予習的な感じで読み始めました。セキララに書き綴られるシモの病気の闘病記はユーモラスかつシリアスに展開し、とても参考になります。それにしてもドイツの先生がたのなんと頼もしいことでしょう。いったんガンを患った者は白と黒の間の灰色の可能性を生きてゆく宿命にある中で「自ら刺激を与えて試してみても術後の回復に差し支えないのでしょうか」という問いにグルッペ先生が力強く頷いた時は、私自身が励まされたようでとても心強く感じられました。2019/03/10