内容説明
圧倒的な強さを誇った甲斐武田家の落日。家を滅ぼす二人の裏切者が出る。一人は、信玄の腹違いの弟、武田上野介信友。そして、一門衆筆頭、穴山梅雪。「武田の海」を任された二人は、なぜ「亡国の徒」となり、悲劇の幕を上げたのか―。
著者等紹介
武川佑[タケカワユウ]
1981年神奈川県生まれ。立教大学文学研究科博士課程前期課程(ドイツ文学専攻)卒。書店員、専門紙記者を経て、2016年、「鬼惑い」で第1回「決戦!小説大賞」奨励賞を受賞。甲斐武田氏を描いた書き下ろし長編『虎の牙』でデビュー。同作は第7回歴史時代作家クラブ賞新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ren5000
29
正直穴山梅雪って武田家を裏切ったということで良くない印象を持っていたけど視点を変えればこういった読みかたもできるのが歴史小説の面白いところ。勉強不足で信友のことはあまり知らなかったのでこの本でのイメージがついてしまった。2020/04/12
サケ太
20
「お主をへだてる境を越えてゆけ」本当に素晴らしい物語。妻の死により戦から、家から逃げ出した左藤信安、清安は武田信玄の歳の離れた弟、武田信友と出会う。穴山信君もメインに据えているのが新鮮。基本的にこの三者の視点から物語りは進む。武田信玄、馬場信春、一条信龍などの武田家の面々を含め、戦国の世に惑い、それでも懸命に“地獄”で生きてきた人々の、熱きドラマ。それぞれが抱えた想い。それを抱えながら前へと進む。ここまで穴山信君が好きになるとは思わなかった。「雨風静かに コラサ 穏やかに」「エーンヤーエー」2019/04/27
maito/まいと
14
再読。やはり取り上げた要素を上下巻くらいかけて昇華してほしかったなあ。『虎の牙』読んでから本作読むと、あのときの"呪い"まだ解消できていなかったんだなあ、と涙があふれる。そりゃ信玄も神経すり減らすわ・・・改めて読むと、比重が信友関連多い分、梅雪の描写が薄くなってしまいラストのカタルシスが弱い。その反面、信龍とか、馬場美濃といった渋い面々へのスポットライトが熱すぎる。武川さんどんだけ武田家オジサマ好きなんだ(笑)2019/08/08
ハッチ
13
★★★☆☆武田一門でありながら裏切った信友と穴山梅雪。この二人に焦点を当てた歴史小説。この二人の事はあまり語られないので新鮮だった。読みやすい歴史小説だったと思う。2019/08/07
maito/まいと
11
もう一人の信友と、穴山梅雪が織りなす、武田家最期への道。二人の紆余曲折や、随所で描かれる美しい背景描写と真理とのマッチング、ミステリー要素に男色、トラウマ克服へのエピソードなど、読むべき所が盛りだくさん。信虎のその後、なぜ信玄が勝沼信友の一族を誅殺したのか、といった前作『虎の牙』への解答要素が多く含まれていたことには満足(武田家の血への嫌悪意識が歪みすぎていて怖かった)。その一方で要素収束しきれず、ラストが小さくまとまってしまったのが残念。二人の"武田"の心の動きが浅くまとまってしまったのももったいない。2019/06/28