出版社内容情報
講釈師にして政治家の伊藤痴遊が巧みな文辞で説く、明治維新の光と影。新政府の基盤が固まるまでに、いったいなにがあったのか?明治維新から150年が経ちます。その間多くの歴史研究が積み重ねられてきましたが、それはそれとして大衆レベルで「いったいなにがあったのか」をわかりやすく解説してきたのが「政治講談」であり、そのジャンルを確立したのが伊藤痴遊でした。いわば彼は「明治大正における池上彰」だったのです。本書の序文で痴遊はこう述べています(抜粋要約、仮名遣いはあらためた)。
維新前後から明治にかけての歴史を部分的に分けて、人物を本位としたものを、いつか書いてみたいと思っていた……(中略)。/本書の体裁も、やはり言文一致のきわめて通俗のものにしてある。昨今に至って、西洋の学問が旺んになったため、外国歴史のことは知っていてもかえって日本の歴史を知らぬ青年が多いようだ。これは大いに注意すべきことである。生れた国の歴史を知らずに、他国の歴史ばかり知っているその人の思想はドンナ風になるか、すこぶる懸念に堪えない。そこで僕は維新前後から明治にかけての歴史を、人物本位で書くように努力して、(中略)……大体の事はかなりに穿ったつもりだ。/ことに、大概な人は遠慮して言わぬことまで、相当にさらけ出してある。したがって、多少の批難の起る事はもとより覚悟の上である。
伊藤 痴遊[イトウ チユウ]
著・文・その他
内容説明
かつて歴史とは、説き去り説き来たるものとしてあった。横浜生まれの自由民権の闘士がその抜群の話術を駆使し、無念にも散っていった有為の漢たちの志と怒りを語り、いつしか時代に取り残されてしまった者の悲しみを嘆じ、いま幅を利かせる顕官の人物と過去の行状を暴くとき、人びとはまったく別の相貌を帯びた維新の姿を知った。薩長中心の見かたから一線を画す、史談史論の雄篇。
目次
徳川幕府の覆滅
遷都の建議
明治政府の樹立
賀陽宮の陰謀
江藤井上予算問題の大衝突
山縣有朋と山城屋事件
長州藩と三谷三九郎
明治初年の暗殺三件
雲井龍雄の陰謀
廃藩置県の断行
尾去沢銅山の強奪
岩倉の洋行と留守内閣
横浜の奴隷解放事件
征韓論の真相
民選議院設立の建白
赤坂喰違の凶変
台湾征伐の内情
江藤新平の挙兵
大阪会議と木戸の再入閣
長州萩の内乱
熊本の神風連
東京の思案橋事件
著者等紹介
伊藤痴遊[イトウチユウ]
1867・3・20~1938・9・25。講談師、政治家。旧姓は井上、本名仁太郎。横浜に生まれる。1881年、自由党に入党し、星亨門下の壮士として活躍する。加波山事件、静岡事件などに関係し処罰されたこともある。1887年からは双木舎痴遊と号して政治講談を創始(のち伊藤と改める)。卓越した話術で幕末維新の激動や政財界の裏話、人物譚などを巧みに談じて名声を得た。一方、東京府会議員などを歴任、1928年の最初の普通選挙で当選し、代議士となる(当選2回)。終生、話芸の向上発展に尽くし、話術倶楽部を創設、『痴遊雑誌』を創刊した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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