講談社文芸文庫<br> 現代文士廿八人

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講談社文芸文庫
現代文士廿八人

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  • サイズ 文庫判/ページ数 217p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784065118641
  • NDC分類 910.26
  • Cコード C0195

出版社内容情報

文士とはどんな人たちなのか? 読者になりかわって直撃取材。その印象を好悪まる出しで記して好評を博した異色の人物探訪記。 中村武羅夫が文壇に名を売り出すきっかけになったのは雑誌『新潮』に明治41年(1908)からほぼ毎月発表した「作家訪問記」でした。今日風にいえば「直撃取材」し、そこで得た個人的印象、いわば「独断と偏見」を臆面もなく、好悪まる出しで堂々と記したことで、読者の大反響を呼び起こしたのです。俎上にあがったのは以下の文士たち。田山花袋/国木田独歩/生田葵山/夏目漱石/菊池幽芳/小川未明/小杉天外/内藤鳴雪 /徳田秋声/水野葉舟/島村抱月/後藤宙外/徳富蘇峰/島崎藤村/小栗風葉/大町桂月/吉江孤雁/内田魯庵/与謝野晶子/泉鏡花/徳田[近松]秋江/小山内薫/正宗白鳥/蒲原有明/戸川秋骨/柳川春葉/片上天弦/三島霜川
たとえば漱石はこうです。「余は日本室へ通されたのだ。両方の書斎に大きな本箱が並んで、中にはクロース金文字入りの本が一ぱい詰って、ピカピカして眩しいぐらいだ。道具なども好いもので、ことにその机は何という木か知らないが、黒いつやつやして重そうな木である。さすがは文壇の大家たる夏目漱石先生の書斎だけあると、実際つくづく感服してしまった。余のこれまで訪問した文壇の大家で、漱石氏ぐらい立派な家に立派な道具を使っている人はない。とにかく偉いものである。座蒲団なども絹で、綿がぼこぼこと入っている。座ると尻が辷りそうである。(中略)中肉中背で年は四十五六ぐらいであろう。顔は丸からず長からず、二重瞼で、目がいちばん好い。濃い口髯がある。(中略)声には艶も調子もなく、ちょうど蜘蛛の尻から糸が繰り出されるような調子で、いうことに行き詰ったり、つかえたりするようなことはなく、ずるずるとまことに都合よく辷り出る。至って話が聞きやすい。口は早くもなく遅くもない。(中略)おそろしく話の上手な人である。接してみて実に感じが好い。といってなにもお世辞が好かったり、愛嬌があるというのではない。むしろ、不愛想である。もし漱石氏のような人が愛嬌なぞ振りまこうものなら、それこそ、不自然の極、厭みがあって虫ずが走る。お世辞も言わず、愛嬌もなくして、それで接した感じが好いのだから妙だ」
今日からみても、当時の空気や文士の人となりを生き生きと伝えて興味深く、また貴重なものです。
 本書はその連載を書籍化したもので、版元を変えながら刊行されつづけた隠れたベストセラーであり、明治の文壇を知る好資料です

中村 武羅夫[ナカムラ ムラオ]
著・文・その他

内容説明

文士の素顔はいかなるものか?かつて読者の興味を背に、アポなしの突撃訪問をひとり敢行した若者がいた。花袋、独歩、漱石、藤村、晶子、鏡花…。好悪まる出しで印象を記した人物評は大人気となり、雑誌『新潮』の名を一躍高からしめるに至る。いまや文学史のなかに納まっている文豪たちが、生身の“人間”として躍動する探訪記の傑作。

目次

田山花袋
国木田独歩
生田葵山
夏目漱石
菊池幽芳
小川未明
小杉天外
内藤鳴雪
徳田秋声
水野葉舟〔ほか〕

著者等紹介

中村武羅夫[ナカムラムラオ]
1886・10・4~1949・5・13。小説家・評論家。北海道生まれ。『文章世界』への投稿から文学を志し、1907年に上京、小栗風葉に師事。翌年、雑誌『新潮』の記者となって文士の訪問記事により名を上げる。作家論などの新企画を次々に打ち出し、名編集長として知られる。1925年には戸川貞雄、岡田三郎らと雑誌『不同調』を創刊してプロレタリア文学に対抗、新興芸術派運動の中心となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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qoop

8
明治末の文壇で名を馳せていた作家たちを訪れ、第一印象を記した一種のルポルタージュ。斟酌なく辛口で、わずかな時間の邂逅でそこまで云うかと呆気に取られる程。後日に印象が刷新された場合は素直に訂正、謝罪しているとはいえ、自信の目に対して多大な自負を感じさせる。これで新人編集者とは思えないものの、そもそも近代メディアの揺籃期のことであり、のちに名編集者となる人物が物した記事だと思えば含蓄深くも思えてしまう。作家と編集者の関係性がいかなる変遷を辿るのか、ここから追って行きたくなる。2021/11/21

スプリント

7
著名な文士たちへの対談集です。著者が好き嫌いをはっきりしているので単なる提灯対談になっていないのが面白いです。会う前は散々な評価をしていたのに対談後は評価が一変したりと柔軟な面もあるところが更に面白いです。2018/08/10

sk

3
明治の文士たちに実際に会って人物批評している。初対面にかかわらず読み込みがすごい。2019/07/07

rbyawa

1
h075、タイトルに「現代」とあってその年は明治42年、中村武羅夫さんは学生時代だったのかな…。新潮の名物編集者なもののなにかだいぶ悪評も多いよね…新潮系の編集さんたち何度も武羅夫さん来ないか確認されてたりするしね…。大胆な内容なものの面白いのはやっぱり藤村かなぁ(狂気の血筋を理智で押さえているという)、あと、たまに見る田山花袋の「友人たちが先んじて認められ」ってこの時期か…一年内に代表作書くからたまたま記録に残っちゃったのね。正直独善的な観察もある気はするものの…文学趣味の青年でこの冷静さなら十分かな。2018/10/01

飯田一史

1
文芸誌『新潮』編集者にして通俗小説家としても人気を博した著者が、アポなしで田山花袋や夏目漱石、与謝野晶子らの家を訪問し、人物評を記した傑作探訪記。2018/07/10

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