出版社内容情報
暗闇の中にしか生きられない女の末路は!? 天外(てんげ)家から逃げ出した奇子(あやこ)は、実業家となった兄・仁朗(じろう)のもとに身を寄せるが、長年の地下生活から光に怯える性質に……。戦後史の暗部を背景に描く問題作、完結編! 青年漫画の好短編『鉄の旋律』『白い幻影』『レボリューション』も併録。 <手塚治虫漫画全集収録巻数>『奇子』(手塚治虫漫画全集MT199『奇子』第3巻収録)/『鉄の旋律』(手塚治虫漫画全集MT96『鉄の旋律』収録)/『白い幻影』(手塚治虫漫画全集MT96『鉄の旋律』収録)/『レボリューション』(手塚治虫漫画全集MT96『鉄の旋律』収録) <初出掲載>『奇子』 1972年1月25日号~1973年6月25日号 ビッグコミック連載(※全巻通しての初出)/『鉄の旋律』 1974年6月25日号~1975年1月7日号 増刊ヤングコミック連載/『白い幻影』 1972年8月8日増刊号 女性セブン掲載/『レボリューション』 1973年1月6日+13日号~1月20日号 漫画サンデー連載
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mitei
232
最期までみんなそれぞれの欲がまみえて洞穴で奇子以外のみんなが死に絶えるのも面白かった。全編通して手塚治虫がこのような作品を残していたというのは驚いた。てっきり鉄腕アトムとか暗くてもアドルフに告ぐ、ブラックジャックくらいだと思っていたが、今の漫画家にない多種多様な作品を漫画界に残していたのだと感じた。2017/01/25
gtn
17
誰も因果応報の法則から逃れられない。皆、応分に裁かれる。罪のない奇子を除いて。2023/08/23
hamham
17
「好き」に種類があることがわからず、好意を伝える手段がセックスしかない奇子が悲しい。こんな娘に誰がした。『奇子』は手塚的には未完扱いなようで、私としてもここから先が読みたかった。寄る辺を失くした奇子が社会に出て、その魔性で周囲をたぶらかしつつ、徐々に人間性を得ていくところが見たかった。それでこそ手塚がこの作品で描きたかった「日本人のバイタリティ」が表現できる気がするんだよね。性でしか自分を表現できない奇子に、金でしか主張できない戦後日本そのものの擬人を見た気がした…。奇子、立ってくれ…!日本の代わりに…!2018/01/09
じょう
16
読み友さんの感想を読んで。昔むかしの日本の話ではなく、数十年前の戦後の話。今では有り得ない様に感じるけれど、自分の親世代の人は産まれていて、この「個人より家」の価値観で育っていた。人は集団(家の為等)になると罪の意識が分散し薄れてしまうと改めて感じました。「戦後、相続が兄弟均等になったのは、家制度を崩して日本の弱体化を狙った」と社会の先生が呟いていたのを思い出しました。2017/01/29
こうすけ
14
ドストエフスキーのような家族ドラマに、暗い戦後史が絡む。蔵に閉じ込められた少女、という設定がちゃんと結末に生きてくるのも良い。近親相姦がこれでもかと出てくるおどろおどろしさが、占領下の世相に重なるよう。2020/08/07