出版社内容情報
辻原 登[ツジハラ ノボル]
著・文・その他
内容説明
映画のフィルム・エディター野添敦子は、かつてレイプされて告訴した押本史夫の逆恨みに脅え、女性探偵の桑村みどりに出所後の押本の尾行を依頼する。みどりもまた、交際していた久我の暴力に苦しめられていた。予想どおり出所するや否や敦子の行方を執念深く調べ始めた押本の足音が、刻一刻と迫る…。
著者等紹介
辻原登[ツジハラノボル]
1945年和歌山県生まれ。’90年「村の名前」で芥川賞、’99年『翔べ麒麟』で読売文学賞、2000年『遊動亭円木』で谷崎潤一郎賞、’05年「枯葉の中の青い炎」で川端康成文学賞、’06年『花はさくら木』で大佛次郎賞、’10年『許されざる者』で毎日芸術賞、’11年『闇の奥』で芸術選奨文部科学大臣賞、’12年『韃靼の馬』で司馬遼太郎賞、’13年『冬の旅』で伊藤整文学賞をそれぞれ受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yomineko@猫と共に生きる
73
2人の陰湿なストーカー男のリアリティが凄かった。実際にはもっと酷いんだろうが怖かった。時々登場する映画の話が結構面白かった。古いフィルムはほぼ滅失しているらしい。探偵業って大変な上に危険が伴う。そんな女性探偵の桑村みどりの協力によりストーカーを徐々に追い詰めて行く野添敦子だた。。。人間味あふれる登場人物が描かれている。でも最後はあっけなくて割と残念感があったものの面白かった。初読み作家さんですが様々な賞を受賞されている事を知ったので他の作品も読みたい📙2023/06/26
JACK
28
☆ 野添敦子は7年前に自分をレイプした押本の出所に怯えていた。彼は出所し次第、逆恨みで復讐に来るに違いない。敦子は探偵の桑村みどりに押本の尾行を依頼する。実は依頼されたみどりも、以前交際していた久我からの暴力に苦しめられていた。みどりは自分と同じ様な境遇の敦子に共感し、彼女を助けようとするのだった。やがて敦子が想像していた通り、出所した押本は彼女の居場所を探し始める。2人のストーカーの狂気と2人の被害者の恐怖。筆者の豊富な知識と緻密な描写に引き込まれる重厚なサスペンス。2018/01/30
Ayako H
6
図書館から。途中、怖くて読むのをやめようかと思いました。映画に関する話はよくわからないけど、それが襲った男と被害者との接点でもあるので省くわけにもいかないのでしょう。世の中には卑劣で自分のことしか考えない悪党がいるんですね。一生そういうのとは縁なく過ごしたいものです。ラストはうまくおさまってよかった。2022/08/31
よし蔵
6
こんな卑劣な犯罪者に何期待しても無駄だけど、いったいどうすれば自分が罪を犯すことなく安心できる状態になれるのかをずっと考えていた。警察も法律も守ってはくれない。奴に手を出せば自分が罰せられる、やらなければやられてしまうのに。恐ろしかった。桶川ストーカー殺人事件を思い出す。みどりがどこまで想定していた結果なのか分からないが、安全にはなったのかもしれない。ただずっと安全なのかはわからない。心の平穏は戻らないのかもしれない。何か良い方法があればいいのに。2017/12/18
けんたん
5
二人の女性に襲いかかる恐怖。それぞれに怯えるストーカーじみた男の影に、周りの人たちもなすすべがないように思える。それにしても被害者女性の心情が、これだけの犯罪に直面しながらも、どこか深い感情の悲哀が見えなかった。2017/05/04