出版社内容情報
飛行機で移動しつつ銀製の捕虫網でアイデアをすくい上げる実業家と、飛行機の上だけで読まれる小説を書く作家の冒険。芥川賞受賞作。無活用ラテン語で書かれた小説『猫の下で読むに限る』で道化師と名指された実業家のエイブラムス氏。その作者である友幸友幸は、エイブラムス氏の潤沢な資金と人員を投入した追跡をよそに転居を繰り返し、現地の言葉で書かれた原稿を残してゆく。幾重にも織り上げられた言語をめぐる物語。〈芥川賞受賞作〉
道化師の蝶
松ノ枝の記
円城 塔[エンジョウ トウ]
著・文・その他
内容説明
無活用ラテン語で書かれた小説『猫の下で読むに限る』で道化師と名指された実業家のエイブラムス氏。その作者である友幸友幸は、エイブラムス氏の潤沢な資金と人員を投入した追跡をよそに転居を繰り返し、現地の言葉で書かれた原稿を残してゆく。幾重にも織り上げられた言語をめぐる物語。芥川賞受賞作。
著者等紹介
円城塔[エンジョウトウ]
1972年北海道生まれ。東北大学理学部物理学科卒業。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。2007年「オブ・ザ・ベースボール」で文學界新人賞受賞。’10年『烏有此譚』で野間文芸新人賞、’11年、早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞、’12年「道化師の蝶」で芥川賞、’14年『Self‐Reference ENGINE』でフィリップ・K・ディック記念賞特別賞をそれぞれ受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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absinthe
182
途方もない分からなさと心地よさ。嫌われるのも無理はない。2回の読了で作品の印象は反対になった。初回は何のことかわからず完全に置いてきぼりにされたが、再読してやっと構造が見えてきた。言葉の持つ心地よさは伝わってきたが、言葉の奔流に押し流されてしまった。初回で諦めないで良かった。absintheの中では分類不能にカテゴライズ。既視感のなさは半端ではない。読んだ直後にもう一回読んでも既視感が無い程だ。何かの類型に当て嵌めようとするのは無駄かも知れない。2021/05/09
k5
78
スタニスワフ・レムかカート・ヴォネガットを思わせる導入でグッと掴まれるのですが、そのあとのグリップ力が弱いんだよなあ。途中で飽きて酒呑んじゃって、分からないのが余計分からなくなるという。なお自分としては芥川賞受賞の表題作より、カップリングの「松ノ枝の記」の方が持続力高く読めました。2020/09/16
ω
63
2012年芥川賞ω こりゃ物理学出身というの納得❗️むっずー。私も理系だけど物理専攻の人だけは脳みその作り違うと思う笑 ふわふわとあちこち舞う蝶になれます。文字を漂いたい方はぜひ。2021/10/04
KAZOO
55
円城塔さんの芥川賞受賞作です。円城さんの小説は何冊か読んでいるのですが(伊藤計劃さんとの共著も含めて)、今までのイメージをまるっきり変えてしまうものでした。私にとってはここに収められている2作ともに教養小説のような感じで読ませてもらいました。短篇ですが中味は結構広がりがあると感じます。2015/01/29
絹恵
54
言葉の海で人間に自由が与えられたのだとしたら、それは言葉を手放すことなのかもしれません。でも言葉を失えば、心は決壊して、海を渡ることは出来ないのだと思います。声にならなくても、それでも私たちには言葉があるから、会いたい人に会いに行くことが出来て、留まって刻まれた歴史を知ることが出来て、そして大切な人と歴史を重ねることが出来ます。それこそが自ら掴んだ自由なら、言葉に囚われるのではなく、また言葉を手放すわけではなく、これは言葉を超えるためのはじめの飛翔でした。物語に収められた言葉に揺さぶられました。2015/01/25