出版社内容情報
松本 宣郎[マツモト ノリオ]
著・文・その他
内容説明
イエスがローマ総督によって処刑されたとき、帝国にとってまだそれは辺境属州の些細なできごとでしかなかった。しかし、やがて彼を神の子と信ずる奇妙な集団が都市にあらわれる。キリスト教徒と呼ばれたいかがわしく忌まわしい存在は、迫害を乗り越え、徐々に信徒の数と伝道の地域を拡大していく。地中海世界そのものをかえた心性のドラマを描く。
目次
第1章 キリスト教徒の誕生(ガリラヤのイエス;イエスからパウロへ)
第2章 迫害の心性(迫害、その現実;キリスト教徒とは何だったのか;「キリスト教徒たる名そのもの」)
第3章 ローマ都市のパフォーマンス(地中海都市の素顔;富める者と貧しき者;奴隷の信仰;キリスト教徒のイメージ)
第4章 性の革命(古代都市民にとっての性;性の饗宴;性と罪)
第5章 魔術師としてのイエス(魔術の風景;魔術師イエスとその弟子たち)
著者等紹介
松本宣郎[マツモトノリオ]
1944年岡山生まれ。東京大学文学部西洋史学科卒業。同大学院人文科学研究科西洋史学専門課程修了。博士(文学)。長く東北大学で教鞭を執る。現在、東北大学名誉教授、東北学院大学学長。専攻は古代ローマ史、初期キリスト教史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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MUNEKAZ
11
初期のキリスト教が、ローマ帝国・市民からはどう捉えられていたのかについて。無神論者、性的淫乱など様々なレッテルを貼られ警戒されていくキリスト教であるが、その迫害の初期の主体は市民にあり、帝国側はむしろ無用な告発を戒める側であったというのは意外である。またキリスト教側も人間の平等性を謳いながらも奴隷制を否定しない、信者の妻帯や蓄財を許すなど、教義の純粋性よりも当時の地中海世界の心性に従って普遍性に重きを置いた活動をした点は、のちの国教化につながる部分として興味深かった。2018/01/16
kure
1
再読。本書は古代キリスト教がローマ帝国において既存の文化や社会システムの中でどのような立ち位置にあったのかを論じているが、社会史のフレームワークを用いてローマ帝国史研究の視座から記述しているのがやはり新鮮に感じた。2020/07/29
tanukiarslonga
1
辺境のカルトの一つだったキリスト教がいかにしてローマの国教になるまで勢力を拡大していったか。明確な理由がわかるわけじゃないが微妙な巡り合わせ的な事情がいかにもリアルな感じ。『沈黙』に描かれるエリートと民衆の神学的同床異夢は別に日本に限られたものではないような。2017/05/10
tanosyk
1
ローマ帝国におけるキリスト教をバランスのとれた叙述で位置づけている。2017/05/05
Nunokawa Takaki
0
キリストが大々的に布教されるよりは前の時代を主に論じており、特に性に対する考え方や偏見が興味深かった。2017/06/23