出版社内容情報
イエス死して300年、ようやく新約聖書は成った。その後発の特殊な文書集が、どうして他を圧する権威となりえたのか? 謎に挑む! 新約聖書はキリスト教にとって、この上なく重要な文書集である。しかし新約聖書が現在のものに見合うような形で成立したのは紀元四世紀のことである。地上のイエスが活動をはじめたのは紀元一世紀の前半であり、その後キリスト教運動は紆余曲折を経ながらも、地理的にも人数的にも拡大した。多くの者がキリスト教徒となり、さまざまな活動を展開して、その帰結の一つとして新約聖書が成立したのである。しかしこのことは四世紀になって新約聖書が成立するまでのキリスト教徒には、新約聖書は存在しなかったことを意味する。つまり新約聖書がなくても、彼らはキリスト教徒だったのである。
三〇〇年ほど存在しなかったものが、大きな権威あるものとして存在するようになったのである。したがってキリスト教徒にとって新約聖書の存在は当然のことではなく、いわば特殊なことである。つまり新約聖書が成立したのは、キリスト教の歴史のなかで特殊な状況が存在したからだということになる。その歴史的に特殊な状況とはどのようなものなのか。そして新約聖書が成立して以来、新約聖書が権威あるものとして存在することが当然のように考えられているとするならば、そのような事態を当然のこととする特殊な立場が新約聖書をめぐって存在していると考えねばならないだろう。その特殊な立場とは、どのようなものなのか。
(中略)
本書では、キリスト教における権威の問題に注目しながら、新約聖書がどのような意味で特殊な文書集なのかを探ってみたい。新約聖書の頁をめくって、内容を断片的に読んでいるわけではわからない新約聖書の姿が見えてくることになるだろう。(プロローグより)
プロローグ──歴史のなかの新約聖書
第1章 イエスの時代
第2章 復活した「イエス」
第3章 主の兄弟ヤコブが登場したとき
第4章 パウロの分離
第5章 世界教会の構想
第6章 ユダヤ人社会の危機
第7章 脚光を浴びるパウロ的教会
第8章 模索するキリスト教
第9章 乱立する文書
第10章 独自の聖書
第11章 正典の成立
エピローグ──新約聖書を「読む」ということ
加藤 隆[カトウ タカシ]
著・文・その他
内容説明
イエスが死して三百年、ようやく『新約聖書』は成った。その間、ユダヤ人社会になにがあったのか。マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの相矛盾する四福音書が存在する理由は?あきらかに「後発」で「特殊」な文書集が他を圧する権威となりえたのはなぜか?教団主流派が「異端」活動の果実を巧みに取り入れ、聖なる「テキスト共同体」を創り出すまで。
目次
プロローグ―歴史のなかの新約聖書
イエスの時代
「復活」したイエス
主の兄弟ヤコブが登場したとき
パウロの分離
世界教会の構想
ユダヤ人社会の危機
脚光を浴びるパウロ的教会
模索するキリスト教
乱立する文書
独自の聖書
正典の成立
著者等紹介
加藤隆[カトウタカシ]
1957年神奈川県生まれ。東京大学文学部仏文科卒。ストラスブール大学プロテスタント神学部(学部1年生から博士課程まで)修了。東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学比較文学比較文化博士課程満期退学。神学博士。現在、千葉大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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