講談社学術文庫<br> 『新約聖書』の誕生

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講談社学術文庫
『新約聖書』の誕生

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  • サイズ 文庫判/ページ数 352p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784062924016
  • NDC分類 193.5
  • Cコード C0116

出版社内容情報

イエス死して300年、ようやく新約聖書は成った。その後発の特殊な文書集が、どうして他を圧する権威となりえたのか? 謎に挑む! 新約聖書はキリスト教にとって、この上なく重要な文書集である。しかし新約聖書が現在のものに見合うような形で成立したのは紀元四世紀のことである。地上のイエスが活動をはじめたのは紀元一世紀の前半であり、その後キリスト教運動は紆余曲折を経ながらも、地理的にも人数的にも拡大した。多くの者がキリスト教徒となり、さまざまな活動を展開して、その帰結の一つとして新約聖書が成立したのである。しかしこのことは四世紀になって新約聖書が成立するまでのキリスト教徒には、新約聖書は存在しなかったことを意味する。つまり新約聖書がなくても、彼らはキリスト教徒だったのである。

 三〇〇年ほど存在しなかったものが、大きな権威あるものとして存在するようになったのである。したがってキリスト教徒にとって新約聖書の存在は当然のことではなく、いわば特殊なことである。つまり新約聖書が成立したのは、キリスト教の歴史のなかで特殊な状況が存在したからだということになる。その歴史的に特殊な状況とはどのようなものなのか。そして新約聖書が成立して以来、新約聖書が権威あるものとして存在することが当然のように考えられているとするならば、そのような事態を当然のこととする特殊な立場が新約聖書をめぐって存在していると考えねばならないだろう。その特殊な立場とは、どのようなものなのか。
 (中略)
 本書では、キリスト教における権威の問題に注目しながら、新約聖書がどのような意味で特殊な文書集なのかを探ってみたい。新約聖書の頁をめくって、内容を断片的に読んでいるわけではわからない新約聖書の姿が見えてくることになるだろう。(プロローグより)

プロローグ──歴史のなかの新約聖書
第1章 イエスの時代
第2章 復活した「イエス」
第3章 主の兄弟ヤコブが登場したとき
第4章 パウロの分離
第5章 世界教会の構想
第6章 ユダヤ人社会の危機
第7章 脚光を浴びるパウロ的教会
第8章 模索するキリスト教
第9章 乱立する文書
第10章 独自の聖書
第11章 正典の成立
エピローグ──新約聖書を「読む」ということ


加藤 隆[カトウ タカシ]
著・文・その他

内容説明

イエスが死して三百年、ようやく『新約聖書』は成った。その間、ユダヤ人社会になにがあったのか。マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの相矛盾する四福音書が存在する理由は?あきらかに「後発」で「特殊」な文書集が他を圧する権威となりえたのはなぜか?教団主流派が「異端」活動の果実を巧みに取り入れ、聖なる「テキスト共同体」を創り出すまで。

目次

プロローグ―歴史のなかの新約聖書
イエスの時代
「復活」したイエス
主の兄弟ヤコブが登場したとき
パウロの分離
世界教会の構想
ユダヤ人社会の危機
脚光を浴びるパウロ的教会
模索するキリスト教
乱立する文書
独自の聖書
正典の成立

著者等紹介

加藤隆[カトウタカシ]
1957年神奈川県生まれ。東京大学文学部仏文科卒。ストラスブール大学プロテスタント神学部(学部1年生から博士課程まで)修了。東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学比較文学比較文化博士課程満期退学。神学博士。現在、千葉大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

みのくま

12
初期キリスト教に聖書は存在しない。イエスは律法を乗り越える為に文字から距離を置いたし、パウロは言葉によるコミュニケーションを優先した。つまり「新約聖書」の誕生とキリスト教の誕生は全く関係がないのだ。キリスト教はユダヤ戦争後、ユダヤ教と分かれて独自の進歩を遂げる。その中で教会主流からヘレニスト、パウロ、マルキオン派、グノーシス主義、モンタノス派と多くの分派を生む。教会主流はこれらの異端を排除しつつ一部を受容する。またパウロ以降、教会はローマ帝国の世界支配の手法を取り込んでいく。そして「新約聖書」が編纂される2020/01/13

aisu

12
イエスがいた当時のユダヤの状況、イエスの活動の形、死後の、キリスト教がユダヤ教から分かれていく過程、ユダヤ教の経典でもある旧約聖書が何故必要か、マルコ、マタイ、ルカの福音書の成立、ペテロ、パウロのこと、周辺国への布教、ローマ帝国での国教化…大変興味深く読みました。2017/04/13

ケニオミ

11
「隠れキリシタン」であることを公言している「隠れキリシタン」として、この手の本にはついつい手が伸びてしまいます。(新手の踏み絵ではないかと勘ぐっています。)いや~あ、新約聖書の成立についてとても示唆に富む一冊でした。最初の、イエスの時代のユダヤ教に係るグループの紹介から非常に興味深く、マルコによる福音書、そしてパウロ書簡あたりまで一気に読み進みました。最後の方は少し駆け足気味でしたが、再度聖書を読んでみようかという気持ちになりました。これで「隠れキリシタン」から熱心なキリシタンに変身か!?てなことないか。2017/01/12

刳森伸一

6
『新約聖書』の形成過程を原始キリスト教の変容と発展とともに描き出す。原始キリスト教については不明な点が多いので、致し方ないところではあるけれど、推論が多くなってしまうのは否めない。ただし、出来るだけ誠実に語ろうとしていて信頼できる内容だと思う。2016/11/30

belier

5
イエスが生きていた頃、教えを文書に記録しようと試みた形跡はなく、死後も口承で伝えられてきた。やがて文書が残されるようになるが、ほぼギリシア語圏でのみでアラム語ではほとんど残されていない。ユダヤ戦争後に文書は乱立するようになるが、それらをまとめようという発想はなかった。異端のマルキオンが自身の教義にあった聖典を選ぼうとしたのが始まり。主流派はそれを模倣したのだ。だが何を聖典にするか意見が一致せず、確立したのは4世紀。著者が途中で叙述の流れを崩して長いパウロ批判を展開していて、それが妙に印象的だった。2023/12/16

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