出版社内容情報
芭蕉が実際の句作に即して門人に語り残した俳諧観の数々、それが『去来抄』の〈先師評〉だ。古典を読み解き、現代俳句に活を入れる書「俳聖」と称される芭蕉ですが、不思議なことに彼自身の俳諧観を示した論は存在しません。藤原定家の『毎月抄』、心敬の『ささめごと』、世阿弥の『風姿花伝』のような著作はひとつも残されていないのです。あるのは紀行文や書簡、序跋のたぐいや評語だけです。それも片言隻句にすぎません。けだし芭蕉は論の構築、展開について考えるより句作の実際の行為に魅力を感ずるタイプだったのだと思いますが、後世のわれわれにとってはなんとも心もとない話ではあります。
そうした「欠落」を補ってくれるのが支考、許六、其角、土芳らの弟子たちが書きとめておいてくれた「師のことば」ですが、なかでもっとも芭蕉の作句姿勢をヴィヴィッドに伝えてくれるのは、向井去来による『去来抄』です。
『去来抄』は〈先師評〉〈同門評〉〈故実〉〈修行〉の四つのセクションから構成されますが、本書はそのうち芭蕉本人のことばを記した〈先師評〉を読み解くものです。芭蕉が句作に求めていたものはなにかを問うことは、今日にあって俳句を実作する者にとってもきわめて有益な作業になるものと信じます。
発想の機構/発句の条件/名勝俳句の詠み方・読み方/主宰者たる者の姿勢/肯定、評価された俗情/表現の「いやしさ」の排除/主宰の出身地への影響力/類句のこと/釈教句の詠み方/着眼点の模倣/内面世界の形象化/作者と作品/新奇な言葉への警告/一句の働き/作りものとしての俳句の面白さ/「さび」の美のバリエーション/主観句と客観句/鑑賞ということ/時と情/句の構造/〈手柄〉ということ/発句の余情/心余りて詞たらず/作品を理解するということ/俗談平話/俳意/ふれる・ふれぬの論/句のはしり・心のねばり/フィクション俳句/付合の要諦/歳旦三つ物の脇/「手帳」/素材の吟味/花の定座のこと/位のこと/甘味─恋の座/長高い発句/算用を合わせた発句
復本 一郎[フクモト イチロウ]
著・文・その他
内容説明
芭蕉が門人に語り残した俳諧観の数々、それが『去来抄』中の“先師評”である。俳聖が求めてやまなかったものとはなにか。実際の句作に即して具体的に述べられる一語一語は、時空を超えて読む者の心を突き刺し、ゆさぶる。いまを生きる俳人が古典を読み解く喜びを示し、現代俳句に活を入れる。付録に江戸期の田辺文里『去来抄解』の一部を載せた。
目次
発想の機構
発句(俳句)の条件
名勝俳句の詠み方・読み方
主宰者たるものの姿勢
肯定、評価された「俗情」
表現の「いやしさ」の排除
主宰の出身地への影響力
類句のこと
釈教句の詠み方
着眼点の摸倣〔ほか〕
著者等紹介
復本一郎[フクモトイチロウ]
1943年愛媛県生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。文学博士。専門は、近世・近代俳論史。静岡大学人文学部教授を経て、神奈川大学名誉教授。俳号、鬼ヶ城(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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