講談社学術文庫<br> ある神経病者の回想録

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講談社学術文庫
ある神経病者の回想録

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  • サイズ 文庫判/ページ数 632p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784062923262
  • NDC分類 493.76
  • Cコード C0111

出版社内容情報

フロイト、ラカン、ドゥルーズ&ガタリ……幾多の者たちに衝撃を与えた一人の男。その妄想との壮絶な格闘を記録した稀代の書物。本書の著者ダニエル・パウル・シュレーバーは、ライプツィヒ大学を優秀な成績で卒業したあと、裁判官としてのキャリアを築き、ザクセン王国の最高裁判所にあたる控訴院の議長にまで昇りつめた人物である。ところが、まさに議長に就任した直後、彼を狂気が襲った。
壁の中からかすかな物音がするのを聞くようになったシュレーバーは、やがて絶えず自分にささやかれる声を耳にするようになり、うんざりするような幻覚を見るようになる。彼に語りかけてくるのは「神」だった。世界は崩れ去り、人々はかりそめの存在に変貌する。主治医をはじめ、さまざまな人の姿をとって迫害を始めた「神」が望んでいたこと。それは、シュレーバーを「脱男性化」し、女性となったシュレーバーが神によって懐胎させられて新しい人類を生み出し、その新しい人類によって崩れ去った世界を救済することだった。
……こんな前代未聞の妄想に悩まされた男が書き上げ、1903年に公刊されたのが本書にほかならない。この書物は、まず精神分析の創始者フロイトに衝撃を与え、自分の患者ではないどころか、会ったことすらないシュレーバーを症例とする長大な論文「自伝的に記述されたパラノイアの一症例に関する精神分析的考察」を書かせた。その後、フロイトの衣鉢を継ぐ精神分析家ジャック・ラカンによってたびたび取り上げられたほか、エリアス・カネッティはパラノイアと権力の関係を論じるため、ジル・ドゥルーズとフェリックス・ガタリは資本主義と統合失調症の関係を論じるために、シュレーバー症例を重大な足がかりにしている。
こうして幾多の人々に決定的な影響を与えてきた本書は、20世紀の古典として今後も不滅の価値を持ち続けていくことは間違いない。壮絶な記録を明快な日本語で伝える決定版、全面改訂を経て、ついに学術文庫に登場。

緒 言
枢密顧問官・教授 フレクシッヒ博士への公開状
序 章
第一章[神と不死性]
第二章[神の国の危機?/魂の殺害]
第三章
第四章[最初の神経病と二度目の神経病の初期における個人的体験]
第五章[続き/神経言語(内なる声)/思考強迫/世界秩序が要請する事情としての脱男性化]
第六章[個人的体験、続き/幻影/「視霊者」]
第七章[個人的体験、続き/独特の病的現象/幻影]
第八章[ピエルゾン博士の精神病院での入院生活期間における個人的体験/「試練に曝された魂」]
第九章[ゾンネンシュタインへの移送/光線交流における変化/「記録方式」/「天体への接合」]
第十章[ゾンネンシュタインでの個人的体験/光線交流の随伴現象としての「妨害」/「気分造り」]
第十一章[奇蹟による、肉体的な完璧さの損傷]
第十二章[声のお喋りの内容/「魂の考え」/魂の言葉/個人的体験の続き]
第十三章[牽引の要因としての魂の官能的快楽/帰結としての現象]
第十四章[「試練に曝された魂たち」/それらの運命/個人的体験の続き]
第十五章[「人間遊戯」と「奇蹟遊戯」/助けを呼ぶ声/話をする鳥たち]
第十六章[思考強迫/その現れかたと随伴現象]
第十七章[前の続き/魂の言葉の意味における「描き出し」]
第十八章[神と創造/自然発生/奇蹟によって生じた虫たち/「眼差し調整」/試験方式]
第十九章[前の続き/神の全能と人間の意志の自由]
第二十章[私という人物に関する、光線の自己中心的な見解/個人的状況のさらなる明確化]
第二十一章[矛盾する関係にある至福と官能的快楽/この関連からの、個人的状況にまつわる帰結]
第二十二章[結語/将来の見通し]
「回想録」のための補遺
第一部
第二部
付録
追記
追記 その二
付録(禁治産訴訟の審理からの公文書記録)
A 司法医官の鑑定
B 精神病院地区医官の鑑定
C 控訴理由
D 枢密顧問官ヴェーバー博士の鑑定書
E 王立ドレスデン控訴院の判決
訳者あとがき
参考文献
学術文庫版訳者あとがき
索引


ダニエル.パウル・シュレーバー[ダニエル.パウル シュレーバー]
著・文・その他

渡辺 哲夫[ワタナベ テツオ]
翻訳

内容説明

「神」の言葉を聞き、崩壊した世界を救済するために女性となって「神」の子を身ごもる…そんな妄想に襲われ、苦しめられた男は、みずからの壮絶な闘いを生々しく記録した。フロイト、ラカン、カネッティ、ドゥルーズ&ガタリなど、知の巨人たちに衝撃を与え、二〇世紀思想に不可逆的な影響を与えた稀代の書物。第一級の精神科医による渾身の全訳!

目次

神と不死性
神の国の危機?/魂の殺害
最初の神経病と二度目の神経病の初期における個人的体験
続き/神経言語(内なる声)/思考強迫/世界秩序が要請する事情としての脱男性化
個人的体験の続き/幻影/「視霊者」
個人的体験の続き/独特の病的現象/幻影
ピエルゾン博士の精神病院での入院生活期間における個人的体験/「試練に曝された魂」
ゾンネンシュタインへの移送/光線交流における変化/「記録方式」/「天体への接合」
ゾンネンシュタインでの個人的体験/光線交流の随伴現象としての「妨害」/「気分造り」
奇蹟による肉体的な完璧さの損傷〔ほか〕

著者等紹介

シュレーバー,ダニエル・パウル[シュレーバー,ダニエルパウル] [Schreber,Daniel Paul]
1842‐1911年。有能な司法官としてドレスデン控訴院部長に就任した直後、精神変調が再発、1900年に「回想録」の執筆を開始

渡辺哲夫[ワタナベテツオ]
1949年生まれ。東北大学医学部卒業(医学博士)。現在、南嶺会勝連病院勤務。専門は、精神病理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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ノコギリマン

30
読むのにすげえじかんががかったすげえ本でした。本物のパラノイアが書いた『回想録』ってことで、そのなかで数多くの幻覚、幻聴が語られています。あと何回か読まないとダメだなー。『ドグラ・マグラ』とかが可愛く見えてきました笑2015/11/23

記憶喪失した男

5
読みづらく、難解だった。1903年にドイツで出版された精神病患者の回想録。120年前のドイツの精神病院も、今の日本の精神病院とたいして変わらないなあと思った。精神病院の中で神秘体験を感じていたシュレーバーだが、確かに精神病院はこのような対応をするだろうという事実が書かれていた。少数派であるといっても、シュレーバーのような精神病患者は一定数いるような気がするので、精神病を理解するのに確かな資料であると思う。2022/01/13

PukaPuka

2
ハードカバーを持っていたが読むことなく、数年前本棚のインテリアを一式古本屋に売ったとき、一緒に売った。今年の私のテーマは、インテリアを読む、にて、文庫で出たものを買い直した。訳者渡辺哲夫先生もご指摘の通り、第1,2章がバリヤーのごとくとりわけ読みにくいが、第4章は過労や不眠を機に病状が増悪する経過が書かれ、わりとオーソドックスな発病経過の患者本人による描写で、シュレーバー氏に一気に親しみがもてた。妄想的な思考がいかに立ち上がるかが細かく描写されて、面白い。「『自由』度の苛烈さ」を堪能できる一冊である。2016/01/23

amanon

1
何となし想像していたものとかなり違っていたのに、驚かされた。時折荒唐無稽としか思えない記述が見られるものの、著者の語り口はあくまで冷静でかつ知的というギャップが何とも不思議。もしもう少し前の時代に生まれていたら、この人は神経病者ではなくて、ある種の神秘思想家として扱われていたのでは?という気にさせられる。そうすると精神分析や人に精神病という判断をくだすことにどういう意味があるのか?というところまで考えが及ぶ。訳者後書きでは翻訳に苦労したとあるが、訳文は比較的分かりやすい。ただ、訳注がないのが残念。2016/02/28

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