講談社学術文庫*再発見日本の哲学<br> 埴谷雄高―夢みるカント 再発見日本の哲学

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講談社学術文庫*再発見日本の哲学
埴谷雄高―夢みるカント 再発見日本の哲学

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  • サイズ 文庫判/ページ数 337p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784062923125
  • NDC分類 910.268
  • Cコード C0110

出版社内容情報

『死霊』とはどのような小説なのか。埴谷雄高の生涯にわたる思索に寄りそいながら、独自の哲学の内実を明らかにする決定的埴谷論!埴谷雄高は、『死霊』という難解なことで有名な小説の作者として知られています。一方で、『死霊』は、みごとな情景描写もちりばめられた、きわめて魅力的な小説でもあります。
埴谷の有名な言葉に「自同律の不快」があります。埴谷の哲学を象徴する言葉と言っていいでしょう。
では、これは、いったいどういう意味なのか。そして、小説の形で表現された、埴谷の哲学とは、どのようなものなのか。
伝記的な事実を持ち出せば、戦前の日本共産党の非合法活動に参加し、逮捕されたあと、未決囚の独房の中で、天野貞祐訳、カント『純粋理性批判』と出会います。そこから、埴谷は、終生、哲学的思索を続けるわけです。
本書は、自身、カント『純粋理性批判』をはじめとするいわゆる「三批判書」のきわめて優れた翻訳を世に問うた哲学者による、渾身の埴谷雄高論です。
『死霊』によりそいながら、「私はほんとうに私なのか」という埴谷の「存在の哲学」を読み解き、戦後日本を代表する哲学的思索の全貌を、端正な文体で明らかにする力作です。

序章 存在の不快 ―《霧》―
  一 途絶
  二 情死
  三 泣き声
第一章 宇宙的気配 ―《夜》―
  一 原型
  二 感覚
  三 背景
  四 虚体(一)
第二章 叛逆と逸脱 ―《闇》―
  一 経験
  二 一匹狼
  三 叛逆型
  四 逸脱  
  五 臨死
第三章 存在と倫理 ―《夢》―
  一 死者
  二 存在
  三 根源悪
  四 深淵
  五 希望
  六 虚体(二)


熊野 純彦[クマノ スミヒコ]
著・文・その他

内容説明

存在はなぜざわめくのか。存在のざわめきのなかでなぜ、「破れた音が一つだけ聞えてくる」のか。この問いに応えることが、ある意味で、埴谷雄高の唯一の長編小説『死霊』が設定した課題のすべてである。(本書第二章より)―『死霊』の思考とカントの思考のかかわりを意識しつつ、この国の近代が生んだ枢要な哲学の問題として読み解いた珠玉の一冊!

目次

序章 存在の不快―“霧”(途絶;情死;泣き声)
第1章 宇宙的気配―“夜”(原型;感覚;背景;虚体(一))
第2章 叛逆と逸脱―“闇”(経験;一人狼;叛逆型;逸脱;臨死)
第3章 存在と倫理―“夢”(死者;存在;根源悪;深淵;希望;虚体(二))

著者等紹介

熊野純彦[クマノスミヒコ]
1958年、神奈川県生まれ。東京大学文学部卒業。現在、東京大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

しんすけ

7
複素数は現実にはあり得ない数である。だが複素数を欠いては近代以降の科学は成立しない。埴谷雄高はカントが有り得ないとしたものに立ち返ることで現実を語ろうしたのでないだろうか。熊野純彦が『死霊』を評して/カントが広義の誤謬推理の出発点として拒否した原則を、埴谷雄高は「未出現の宇宙」をみるためにとり上げ/たと語る根拠はここにあるのだろう。以前、『死霊』の感想を記述した際に埴谷雄高のカント理解を疑わしく思ったのも、これが原因ではないだろうか。2018/07/28

Happy Like a Honeybee

7
奴は敵である。奴を殺せ。いかなる指導者もそれ以上卓抜なことは言えなかった…。埴谷雄高の作品に隠された言葉を、熊野氏が解説する内容。カントの最高存在者の理想、神をめぐる諸問題。熱烈な革命家と似非非革命家。死霊という作品が、全体的に霧がかった理由も。2016/07/30

たんかともま

2
存在したのに存在させられなくなった無出現に似たもの、という言葉で『死霊』は戦後文学であり、政治文学でもあり、形而上文学なのだと再確認した。引用が多く、詳しい解説つきで再読しているような心地になる。カントの思想は思っていたほど多くは触れられず、読み解くヒントとして活用している印象。また、そういった思想の根底に夢が用いられていることもよくわかった。可能性という言葉も頻出し、埴谷雄高が現実を基盤としない理由もそこにあるのだろう。夢と虹が重力から逃れているという考えも面白い。本筋とは異なるが情景描写も面白かった。2019/10/18

kyakunon22

1
本書の末尾には、著者が自身の歩みを振り返る一節がある。曰く、二十代から三十代はドイツ哲学の研究に明け暮れ、四十代はレヴィナスに始まり廣松を論じ、そして埴谷に至った、と。つまり、ドイツ哲学→フランス哲学→日本哲学→日本文学…というキャリアを、熊野純彦先生自身は歩んできたことになる。キャリアの円熟期に漸く論じられた埴谷雄高は、しかしながら、熊野先生の読書体験の根底にあるもののひとつのようである。『レヴィナス』において論じられる「死者との倫理」というテーマが、既に埴谷の読書体験から得られていることは興味深い。2020/01/17

check mate

1
難解。2019/06/03

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