出版社内容情報
『死霊』とはどのような小説なのか。埴谷雄高の生涯にわたる思索に寄りそいながら、独自の哲学の内実を明らかにする決定的埴谷論!埴谷雄高は、『死霊』という難解なことで有名な小説の作者として知られています。一方で、『死霊』は、みごとな情景描写もちりばめられた、きわめて魅力的な小説でもあります。
埴谷の有名な言葉に「自同律の不快」があります。埴谷の哲学を象徴する言葉と言っていいでしょう。
では、これは、いったいどういう意味なのか。そして、小説の形で表現された、埴谷の哲学とは、どのようなものなのか。
伝記的な事実を持ち出せば、戦前の日本共産党の非合法活動に参加し、逮捕されたあと、未決囚の独房の中で、天野貞祐訳、カント『純粋理性批判』と出会います。そこから、埴谷は、終生、哲学的思索を続けるわけです。
本書は、自身、カント『純粋理性批判』をはじめとするいわゆる「三批判書」のきわめて優れた翻訳を世に問うた哲学者による、渾身の埴谷雄高論です。
『死霊』によりそいながら、「私はほんとうに私なのか」という埴谷の「存在の哲学」を読み解き、戦後日本を代表する哲学的思索の全貌を、端正な文体で明らかにする力作です。
序章 存在の不快 ―《霧》―
一 途絶
二 情死
三 泣き声
第一章 宇宙的気配 ―《夜》―
一 原型
二 感覚
三 背景
四 虚体(一)
第二章 叛逆と逸脱 ―《闇》―
一 経験
二 一匹狼
三 叛逆型
四 逸脱
五 臨死
第三章 存在と倫理 ―《夢》―
一 死者
二 存在
三 根源悪
四 深淵
五 希望
六 虚体(二)
熊野 純彦[クマノ スミヒコ]
著・文・その他
内容説明
存在はなぜざわめくのか。存在のざわめきのなかでなぜ、「破れた音が一つだけ聞えてくる」のか。この問いに応えることが、ある意味で、埴谷雄高の唯一の長編小説『死霊』が設定した課題のすべてである。(本書第二章より)―『死霊』の思考とカントの思考のかかわりを意識しつつ、この国の近代が生んだ枢要な哲学の問題として読み解いた珠玉の一冊!
目次
序章 存在の不快―“霧”(途絶;情死;泣き声)
第1章 宇宙的気配―“夜”(原型;感覚;背景;虚体(一))
第2章 叛逆と逸脱―“闇”(経験;一人狼;叛逆型;逸脱;臨死)
第3章 存在と倫理―“夢”(死者;存在;根源悪;深淵;希望;虚体(二))
著者等紹介
熊野純彦[クマノスミヒコ]
1958年、神奈川県生まれ。東京大学文学部卒業。現在、東京大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんすけ
Happy Like a Honeybee
たんかともま
kyakunon22
check mate