講談社学術文庫*再発見日本の哲学<br> 再発見日本の哲学 廣松渉―近代の超克

電子版価格
¥880
  • 電書あり

講談社学術文庫*再発見日本の哲学
再発見日本の哲学 廣松渉―近代の超克

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ 文庫判/ページ数 210p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784062923101
  • NDC分類 121.6
  • Cコード C0110

出版社内容情報

戦後日本の社会と歴史を考えるとき、廣松渉を逸することはできない。左翼の理論的支柱であり、かつ独自の哲学を構築した知性とは?マルクス主義によりながら、日本を考え続けた戦後日本の代表的哲学者・廣松渉。難解な漢語を多用する独自の文体で多くの読者を魅了したその思想の本質とはなにか。廣松の高弟でもあった著者が明解に論じ、朝日新聞の「ゼロ年代の50冊」にも選ばれた名著が、待望の文庫化。
たとえば、有名な概念である「物象化」とはなんだろうか。商品には、労働の産物としての価値だけではなく、それ以上の、物神的な性格が宿る。そこには、「物」以上の価値がうまれる。
「価値」は、単純に人間の労働が生み出すだけなのではなく、むしろ社会的な関係から生まれるのだ。これをマルクスは「総労働に対する生産者たちの社会的関係」から価値が決定されると言った。廣松は、マルクスを再解釈しながら、この視点を独自の思考で深めてゆく。「物象化」は経済の概念を超えて、廣松の哲学的思索のカギとなる。
ここには、マルクス主義者として、戦後日本の左翼思想のリードした思想家の側面と、その思想を哲学として深めていく哲学者の側面との両方が、垣間見えるだろう。
日本社会にとって、廣松とは、なんであったのか。
保守もリベラルもなく、ひたすら混乱した政治風土に生きざるをえない現在のわれわれ日本人が、いまこそ読み直すにふさわしい哲学といえる。本書は、その、恰好の入門書である。

序章 乗り越えへの希求
  1.難解な文体の起源をめぐって
  2.宣言する思想
  3.郷里を出る知の型
第一章 近代という問題系
  1.市民社会とネーション
  2.機械的合理主義
  3.アトミズムと主観・客観の分離
第二章 マルクス主義 の地平
  1.疎外論から物象化論へ
  2.世界の共同主観的存在構造
  3.役割行為から権力へ
第三章 日本思想のなかの廣松渉
  1.京都学派批判の意味するもの
  2.近代主義の近代観
  3.近代の超克のパラドックス


小林 敏明[コバヤシ トシアキ]
著・文・その他

内容説明

そもそも資本とは何か、科学技術とは何か、そして結局のところ人間とは何か、そういう大きく根本的な問いが切実なリアリティをもって迫ってくるとき、おそらく廣松の批判哲学は依然として今日のわれわれにとって重要な意味をもちつづけることだろう。左翼の理論的支柱として、戦後日本思想をリードした廣松を日本思想史の中に位置づけた名著の文庫化なる。

目次

序章 乗り越えへの希求(難解な文体の起源をめぐって;宣言する思想;郷里を出る知の型)
第1章 近代という問題系(市民社会とネーション;機械的合理主義;アトミズムと主題・客観の分離)
第2章 マルクス主義の地平(疎外論から物象化論へ;世界の共同主観的存在構造;役割行為から権力へ)
第3章 日本思想の中の廣松渉(京都学派批判の意味するもの;近代主義の近代観;近代の超克のパラドックス)

著者等紹介

小林敏明[コバヤシトシアキ]
1948年岐阜県生まれ。ライプツィヒ大学東アジア研究所教授。専攻は哲学、精神病理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

かんがく

15
ほぼ今まで触れてこなかった思想家だが、京都学派や丸山真男、吉本隆明など同時代の他の思想家との比較や、ヘーゲルからマルクスに至る近代観の変化など、思想史的な解説がしっかりしていたため、廣松渉の位置付けが明確でわかりやすかった。超克の対象としての近代とはなにか、そして辺境において近代を哲学するとはどういうことかが明晰な文体で書かれていた。2023/02/12

無重力蜜柑

9
近代=資本主義の超克というのが根本問題。近代は主観と客観の分離、人間の主体性と自然科学、そこから来る人間主義と機械主義、及びそれをマルクス主義に適用した実存主義とボリシェヴィズムといった対立軸を持ったパラダイムであり、いずれの極においても近代は乗り越えられていない。そこで『ドイツ・イデオロギー』の綿密な解釈を通して主体や個体ではなく「社会的諸関係」を存在論的基盤とし、そこからマルクス主義を再構成していく壮大なプロジェクトが出て来る。これゆえ廣松渉の思考は哲学や政治から経済、心理、社会、科学までを含む。2022/02/06

れぽれろ

7
近代の超克という観点から廣松渉の思想を紹介する一冊。世界は共同主観的であり認識・言語・主体は多重構造を持っており関係性の中で規定される。しかし共同体から自立した個人が主体として合理的に振舞うことが前提とされる近代社会では、本来規定できないはずの主体や物の価値がさも存在しているかのように立ち現れ(物象化)、物象化された役柄が一人歩きし制度化したシステムが悲劇を生みます。本書では、近代を超克すべき対象であると考えた廣松は、近代を徹底しようとする丸山眞男ら戦後知識人よりも、京都学派により近似的だとされています。2015/12/07

ぽん教授(非実在系)

3
もっともマルクス主義を厳密に考察した哲学者を日本思想史に代入すると意外と京都学派への親近感が見え隠れするという面白い内容であった。しかし廣松はそもそもマルクス主義を出発点に置くということが自分にはそもそも時代的な限界を感じざるを得ない。2015/11/20

Ex libris 毒餃子

3
「近代の超克」をテーマに廣松を論じた本。日本思想の中で廣松をとらえる論考はよかった。「近代の超克」の話がメインで廣松の話が少ないような気もしなくはない。2015/08/18

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/9807955
  • ご注意事項