講談社学術文庫<br> 天皇の軍隊

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講談社学術文庫
天皇の軍隊

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  • サイズ 文庫判/ページ数 228p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784062923026
  • NDC分類 392.1
  • Cコード C0121

出版社内容情報

民衆の原像たる兵士たちは何を期待し、いかに傷ついたか。天皇を「頭首」とした近代日本の軍隊の本質を、日記や書簡をとおして探る。日本人にとって「軍隊」とはいかなるものだったのか。1945年の敗戦を経過した現代人にとって、「軍隊の記憶」は、明治国家の亡霊を引きずり続けたために、あまりにもばっさりと切り捨てられたかの感がある。しかし、「天皇制軍国主義」という「自明の理」をよりどころに、その封建的体質を指弾するのみでは、近代日本の軍隊の実像はとらえきれない、と著者はいう。
大日本帝国軍隊は、明治建軍から敗戦に至るまで、天皇に直隷し、天皇の統帥下に、その御稜威(みいつ)を世界に輝かせようとした「皇軍」であり、まさに「天皇の軍隊」であった。天皇は軍人の「頭首」として、斃れた将兵を強く意識し、その魂魄を守る者としても存在した。また、こうした天皇像をとおして、兵士は天皇との情誼的一体感を持ち得たのである。
しかし、天皇の名による軍隊生活の実態はどうだったか。本書では、兵士たちの日記や書簡等を多く取り上げ、民衆の原像たる兵士の姿を明らかにする。徴兵の恐怖と「徴兵のがれ」の実相、凄惨な私的制裁、兵士たちの性生活と花柳病、遺された家族の貞操…。戦争が長期化するなかで、軍隊は大衆化し、軍官僚は肥大化して「天皇の軍隊」はおおきく変質していく。
〔1978年、教育社刊の同名書籍の文庫化〕

はじめに
概観
第一章 「国民皆兵」の虚実
第二章 兵営への途
第三章 兵営生活の虚実
第四章 天皇と「股肱の臣」
第五章 兵士たちの素顔
第六章 出征兵士と遺家族
第七章 「皇軍」哀歌
文献解題
陸軍常備団隊配備表


大濱 徹也[オオハマ テツヤ]
著・文・その他

内容説明

日本人にとって「軍隊」とはいかなるものだったのか。一九四五年の敗戦以来、「軍隊の記憶」は、ばっさりと切り捨てられている。徴兵の恐怖と「徴兵逃れ」の実相、凄惨な私的制裁、兵士たちの性生活と花柳病、遺された家族の貞操。民衆の原像たる兵士は「皇軍」に何を期待し、いかに傷ついたか。天皇を頭首とした近代日本の「軍隊の本質」を描き出す。

目次

概観(幻想としての「皇軍」;民衆の原像としての兵士 ほか)
第1章 「国民皆兵」の虚実(徴兵令の施行;免役条項をめぐって;国民皆兵主義の拡大)
第2章 兵営への途(徴兵検査をめぐって;入営の日まで)
第3章 兵営生活の虚実(新兵の日々;内務班の実相)
第4章 天皇と「股肱の臣」(軍人勅諭をめぐって;軍紀と憲兵;兵士と天皇)
第5章 兵士たちの素顔(満たされぬ日々;性をめぐる問題)
第6章 出征兵士と遺家族(遺された者たち;凱旋兵士たち)
第7章 「皇軍」哀歌(大量徴集がもたらしたもの;私的制裁をめぐって;軍中央部と兵士の亀裂)

著者等紹介

大濱徹也[オオハマテツヤ]
1937年山口県生まれ。東京教育大学卒。文学博士。女子学院教諭、中京大学・筑波大学・北海学園大学教授などを経て、筑波大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

樋口佳之

47
軍中央が「天保銭組」、部隊が「無天組」というかたちでの軍の官僚機構化が確立したこと/内務班の事忘れていたな。怖過ぎ。どこの軍隊にも多かれ少なかれある事なのだろうけど。自分なら戦場以前にこの私的制裁で耐えられなかっただろうと読みました。2021/08/15

skunk_c

22
原本は1978年刊。戦中世代の著者が、兵士となった民衆の視点から、国家に組み込まれていく民衆の姿を活写しようとしたもの。様々な日記や軍医の残した統計などを駆使し、古参兵による日常の暴力が日露戦争の頃から常態化していたこと、そして日中戦争期には劣化した下級将校の下でそれが軍の秩序維持のために黙認された面があること、多数の精神疾患者という「精神主義」の軍隊のコインの裏面など、生々しい軍隊生活が描かれる。軍隊は司令を父とする家族、そして臣民の父たろうとする天皇、まさに教育勅語に代表される皇民化がそこに横たわる。2018/01/27

CTC

13
15年講談社学術文庫、初出は78年教育社刊。著者は淑徳大客員教授。「兵士の心情と生活実感の場から」“天皇の軍隊”の実態を考察し、ひいては「近代日本を呪縛した天皇制の構造」をみようとするもの。徴兵制やその免役条項についての考察は詳細で、また兵営での生活や兵の傷病や身体、特に性生活の実態については、内地でのものとはいえ、他にない充実ぶりだ。が、先のような本書の意図と「滅びの哀歌をかなでていた」といった叙情的な記述が散見されること、藤原彰の著作に全面的に信を置いている由に至って、なんとも苦々しい読書となる。2018/06/01

nnpusnsn1945

10
主に前線に行かされる将兵の視点から日本陸軍を論じている。日露戦争時のPTSDを取り上げていたのは新鮮であった。大正・昭和と違って「正しい戦争」とされやすいが、その裏には過酷な現実があったことが改めて実感させられる。2020/10/19

きさらぎ

4
徴兵対象の変遷や徴兵拒否の実態、入隊が決定後の村での日々、兵営の時間割や酒保や外出、性病のこと、兵営の食事に対する都会者と農村者の感じ方の比較など。データも適宜交えながら、兵士の生活感レベルまで降りて描かれる兵卒(この言葉は多分本文にはないが)の実態が中々に興味深く、参考になる。ただ筆者は終戦時8歳かそこらだったとはいえ一応「戦中派」なので、軍の閉鎖性や暴力性・皇軍精神の強要といった事柄への嫌悪の発露がやや過剰で、そこはもう少し「事実をして語らしめる」冷静さが欲しかったなあ、と思うのは個人の好みだろうか。2016/10/07

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