講談社学術文庫<br> 日本古代貨幣の創出―無文銀銭・富本銭・和同銭

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講談社学術文庫
日本古代貨幣の創出―無文銀銭・富本銭・和同銭

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  • サイズ 文庫判/ページ数 253p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784062922982
  • NDC分類 337.21
  • Cコード C0121

出版社内容情報

謎が謎を呼ぶ古代日本における貨幣誕生。銀銭、富本銭、和同開珎……。律令政府による銅銭導入の実態を考古学的事実と照らして解明。以前からその存在は知られていましたが、1999年に奈良県の飛鳥池遺跡で発見された33枚の富本銭によって、683年頃に発行された日本最古の銅銭であることが確定されました。従来日本最古の貨幣とされていた和同開珎(708)以前に貨幣はあったのです。
しかし実際には、富本銭に先立つ貨幣として無文銀銭(銀の実体価値貨幣)が流通を担っており、その後も数世紀にわたって流通を続けていました。
『続日本紀』によれば、708年「はじめて銀銭を行う」、「はじめて銅銭を行う」として、和同開珎があたかも日本初の貨幣として発行されたかのような記述があるのはなぜか? なぜ、まず銀銭が発行され、その後銅銭が発行されたのか? また蓄銭叙位令のような貨幣流通を促すような法令が出されたのか? 一方で『日本書紀』には、683年に「今より以後、必ず銅銭を用い、銀銭を用いる事勿れ」と、上記と矛盾する記述もあるのはなぜか? 古代の貨幣をめぐって、謎が謎を呼ぶのです。
考古学が専門で、貨幣にも詳しい筆者は、文献資料と発掘資料とつきあわせてその謎を丹念に解いて行きます。また当時の鉱山の発見や大陸との関係も加味して推理を重ねます。すると古代における銀銭の役割と政府が銅銭を流通させることで(皇朝十二銭)、財政を強化しようとした事実が明らかになってきます。
日本古代貨幣史を塗り替える問題作です。刊行後15年を経て、その間に明らかになった事実も筆者の考えを補強するものでした。あらたに一章分加筆し、完全版として文庫化します。

原本:『富本銭と謎の銀銭 貨幣誕生の真相』(小学館 2000)

学術文庫版まえがき
はじめに
第一章 富本銭の発見
    1 文献記録への疑問
    2 江戸時代から知られていた富本銭
    3 富本銭の再発見
    4 飛鳥池遺跡の造幣所跡
    5 富本銭の年代を推理する
    6 富本銭の出土地
    7 富本銭の七星の意味
    8 厭勝銭ではなかった富本銭
第二章 最古の貨幣の追求
    1 貨幣関係法令を読み解く
    2 最古の貨幣についてのさまざまな説
    3 考古学者の考え方
第三章 無文銀銭とは何か
    1 最初の発見
    2 崇福寺塔跡からの出土
    3 無文銀銭の出土例
    4 無文銀銭の年代を推理する
    5 刻印と文字
    6 無文銀銭の重量
    7 無文銀銭は実用流通銭だった
第四章 和同開珎の真相
    1 さまざまな和同開珎
    2 無文銀銭と和同銀銭の交換比率が語るもの
    3 養老六年のレート改定の意味
    4 和同銀銭はなぜ作られたのか
    5 無文銀銭の発行者
    6 和同開珎銀銭と銅銭は等価だった
    7 「和同かいほう」か「和同かいちん」か
第五章 日本の初期貨幣の独自性
    1 中国の銅銭価値との比較
    2 銅銭禁止の真の理由
    3 銅銭の強化策
    4 名目貨幣として作られた銅銭
    5 私鋳の禁止
第六章 貨幣発行の歴史的背景
    1 銀山と銅山の実態
    2 歴史的背景
第七章 貨幣の誕生
    1 貨幣とは何か
    2 国際通貨としての銀
    3 貨幣の誕生と初期貨幣の性格
    4 琉球の開元通寶と中世の貨幣流通
    5 覆された従来の研究
追加新章 藤原京『門傍』木簡の発見??さらなる展開
略年表と資料抜粋
あとがき


今村 啓爾[イマムラ ケイジ]
著・文・その他

内容説明

『日本書紀』「今より以後、必ず銅銭を用い、銀銭を用いることなかれ」(六八三)と『続日本紀』「始めて銀銭・銅銭を行う」(七〇八)の記述の矛盾は何を意味するのか。六八三年頃発行の日本最古の銅銭富本銭とそれに先立つ無文銀銭の併存。なぜ、和同開珎には銀銭・銅銭があるのか。なぜ蓄銭叙位令が出されたのか。貨幣誕生の謎を徹底的に解明する。

目次

第1章 富本銭の発見
第2章 最古の貨幣の追究
第3章 無文銀銭とは何か
第4章 和同開珎の真相
第5章 日本の初期貨幣の独自性
第6章 貨幣発行の歴史的背景
第7章 貨幣の誕生
追加新章 藤原京「門傍」木簡の発見―さらなる展開

著者等紹介

今村啓爾[イマムラケイジ]
1946年生まれ。東京大学文学部卒業、同大学大学院人文科学研究科博士課程中退。博士(文学)(論文)。東京大学大学院人文社会系研究科教授などを経て、帝京大学文学部教授。専門は、考古学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

へくとぱすかる

46
三読目。考古学と文献史学とが協同してこそ、研究が進む分野だろう。日本の「お金」がスタートした時点から、市場経済の原理がしっかり働いていて、政府の思惑どおりにはコントロールできなかった点が印象的だ。「和同開珎」という銭文の語句が文献にない理由(次の「万年通宝」が文献に出てくるのに!)や、「古和同」の多くが銀銭で、銅銭がほとんどない理由。富本銭がアンチモンを含む合金である理由、銀銭の「大平元宝」が幻の存在である理由などなどが、無理なく説明できるのだから、ここに述べられた、経済から考察した論理は強力だと思う。2022/06/06

へくとぱすかる

39
今や、日本最古のお金が、和同開珎でないことは常識だろう。しかし富本銭ですら最古でないと言えば、相当に驚かれるだろう。従来は単なる銀塊か、まじない物のように扱われてきた「無文銀銭」こそ日本最古のお金であった。想像以上に流通していた無文銀銭がこれまでネグレクトされていた理由を、著者は古代の政治家にだまされていたのだと述べる。古代の日本人はお金の使い方を知らないとか、慣れていなかったというのは律令政府のウソであったという。それにしても当時から市場原理が存分に働いていたことには驚かざるをえない。2015/05/10

へくとぱすかる

30
再読。今回は琉球での貨幣使用が、本土より進んでいたことに注目した。理由は銅銭を地金の価値で流通させたこと。中国はこれをやっていたが、日本の律令政府は自身の収入増をもくろんで、かえって流通を阻害。古代といえども市場経済の力学はきちんと働いていたというわけ。ならば、正常化の立役者は、平清盛ということになるだろう。宋銭を輸入し、貨幣経済を盛り立てたのは功績。2016/01/15

みのくま

11
都市建設の費用捻出の為に鋳造された富本銭や和同開珎銅銭は、それ以前から流通していたと思われる無文銀銭(もしくは和同開珎銀銭)を前提している。現代人は、貨幣経済は古代人には不可能だとナメているが、そんな事は全くないという事である。当時の律令政府は、銀銭よりも地金価値の低い銅銭を等価で取引きさせようとした。本書ではそれを経済に無知な政府の暴政だと断じているが、電子・仮想通貨が流通している現代と親和性が高いように思う。「貨幣」はなぜ使えるのか、なぜ魅力を感じてしまうのか、という謎がここに集約しているに違いない。2021/03/11

とりぞう

5
「『和銅』というのは、『日本の銅』ではなく、自然銅、製錬する必要のない金属の状態で産出する銅のことである。」なんていう、わかりやすい話も一部にはあり。ただ、基本的には「論文」体裁であり、ただ「ストーリー」を求める人の役には立つまい。テーマに関し、いくつかの本、何本かの論文を読んだことのある人には面白いかもしれない。2022/08/27

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