講談社学術文庫
大いなる小屋―江戸歌舞伎の祝祭空間

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ 文庫判/ページ数 441p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784062921114
  • NDC分類 774.5
  • Cコード C0174

出版社内容情報

都市空間に突如出現する異界=劇場。地理条件、櫓、桟敷、幕、鼠木戸、船……。「神/魔物」の場所を構成する驚異の仕掛けを解読する

都市空間に突如出現する異界=劇場。地理条件、櫓、桟敷、幕、鼠木戸、船……。「神/魔物」の場所を構成する驚異の仕掛けを解読する

【著者紹介】
服部幸雄(はっとり・ゆきお)
1932-2007。名古屋大学卒業。千葉大学名誉教授。歌舞伎、芸能、文化史研究家。
著書に、『歌舞伎成立の研究』『変化論 歌舞伎の精神史』『市川団十郎』『歌舞伎のキーワード』『江戸歌舞伎』『江戸の芝居絵を読む』『歌舞伎歳時記』『江戸歌舞伎の美意識』『歌舞伎ことば帖』
『市川團十郎代々』『江戸歌舞伎文化論』『歌舞伎の原郷 地芝居と都市の芝居小屋』
『宿神論 日本芸能民信仰の研究』など多数ある。

内容説明

江戸時代と現代の歌舞伎との断絶。その最たるものが、劇場空間と社会的位置づけの違いである。辺境にある「悪所」は噎せ返るほどの祝祭性を発散し、役者と観客は渾然一体となって別天地に酔った。歴史学、民俗学、人類学などの知見も総動員し、江戸時代の芝居小屋を活写再現する。「紙の上に劇場を建てた」(渡辺保)と評された劇場空間論の決定版。

目次

1(都市の中の芝居町;櫓;積物・看板・提灯;鼠木戸;桟敷;上手・下手;橋・道;船;幕;稲荷町)
2(役者の紋;役者の名;見得)
3(讃州金畏羅大芝居訪問記;現代につくりたい「芝居小屋」)

著者等紹介

服部幸雄[ハットリユキオ]
1932~2007。名古屋大学卒業。千葉大学名誉教授。歌舞伎、芸能、文化史研究家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

HANA

30
江戸時代の芝居小屋を立地条件や櫓、鼠木戸といった構造、果ては紋や見得にいたるまでその意味する所を全て書き出したと言っても過言ではない一冊。これを読んでいると今現在のお高くとまったお芸術としてのものではなく、芝居本来のパワーを持った歌舞伎というものが透けて見えるような気がする。それは本来とても面白いものだったのだろうなあ。以前高知で地芝居の歌舞伎を見たが、あれは見物人との距離が近くて良いものだった。読みながら、金丸座の蝋燭と自然光だけで演じられる舞台がみたくなってしまう。そんな不思議な魅力を持った本だった。2012/12/25

壱萬弐仟縁

10
1994年初出。舞台と観客席、芝居と観客とを明確には区別せず、ある部分では運命共同体ででもあるかのように統一体を形作ったことは、江戸歌舞伎の最大の特徴(14頁)。歌舞伎は衣裳の意味を重んずる本質を持っていた(25頁)。アンビバレントな小屋。粗末な家、仮設の家で、聖と俗の両義(29頁)。懐中電灯としての提灯の原点(120頁)。派生して、定紋や屋号、門前や商家の店先、行列の先頭にも掲げられていった(同頁)。飾る提灯、箱提灯も登場。舞台を彩ることになっていった。観客席に中心を置いて説明(171頁)。2013/11/25

JVSTINVS

5
たいへん勉強になる良書。「歌舞伎って、なんだか通人や贔屓筋が煩わしいし、大袈裟だし……」と思っているわたしのような読者こそ読むべきである。江戸歌舞伎の戯場へのアクセスから大見得まで、建築から人類学的な考察まで、ありとあらゆる角度から、江戸歌舞伎、ならびに地方歌舞伎の、総合エンターテイメントとしての多角的なメディアミックス戦略が語られる。2024/02/10

六点

5
平凡社から叢書、平凡社ライブラリーそして講談社学術文庫に入った名著である。江戸時代の人間にとって歌舞伎小屋はどのような存在か、観衆はどのように考えて見に来ていたか?から始まり、歌舞伎役者の地位や役者紋定式幕に至るまで簡明かつ詳細に説いた歌舞伎入門書とも言える。金丸座や嘉穂劇場での公演実見記も収められ、30年ほど前の著者の感動を追体験できた。近代化の中で失ったもの、変わってしまったものの大きさに寂しさを感じたが、「舞台の幅は大きくなったが、大道具の丈は変化していない」という指摘に大いに「アカンわ」と思った。2018/06/21

筋書屋虫六

1
かの渡辺保氏に「紙の上に劇場を建てた」と評させた名著の誉れ高い劇場空間論の文庫化。江戸時代の芝居小屋の世界観や構造・仕掛けから小物一つに至るまでの意味するコード、役者が備えた要素にもいろいろな意味があり、変容がある。現在の劇場からすると、魅力に満ちた江戸の芝居小屋。金丸座、康楽館と一度体験するとまた行きたくなるけれど、その面白さの秘密やエネルギーの源泉を解き明かされている気がしてくる。何度も読み返したい一冊だ。2012/08/16

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/4812102
  • ご注意事項