出版社内容情報
最古の科学=天文学と変遷する宇宙観の歴史人類にとって宇宙とは何か。星座の観測から、占星術の誕生、暦の作成、地動説への大転換、天体力学の全盛、さらに米ソの宇宙開発競争まで、宇宙観の変遷を追う。
内容説明
「天への恐れ」から星の観測は始まり、その意味を説明するために占星術が生まれ、正確な「暦」が権力者の権威を高める。やがて天動説から地動説へとパラダイムは転換し、天体力学の隆盛を経て、天体物理学と宇宙開発競争の時代へとむかう。民俗や宗教、数学や物理学を巻き込んだ展開する最古の科学=天文学の歴史と、人類の宇宙観の変遷をたどる。
目次
1 星座について
2 占星術
3 暦の話
4 時の話
5 宇宙論の歴史
6 天体力学
7 望遠鏡の話
8 天体物理学について
9 結び―あなたにとって宇宙とはなにか
著者等紹介
中山茂[ナカヤマシゲル]
1928年兵庫県生まれ。東京大学理学部卒。専門は天文学、科学史。神奈川大学名誉教授。おもな著書に『占星術』『歴史としての学問』『野口英世』『帝国大学の誕生』『科学技術の戦後史』など。パラダイム論を日本に紹介したことで知られ、訳書にT・クーン『科学革命の構造』、M・クライン『数学の文化史』などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ルーシー
5
タイトルには「科学史」と入っているが、占星術や暦作りなど、まだ「科学」となる前の人類と天空の関わりも詳しく語られている。原本は40年前の刊行であるが、今ではもっと、想像するのも難しいほど宇宙は途方もなく広がっている。著者の言う「あなたにとって宇宙とはなにか」を考えてみたいと思った。/『宇宙は頭で知るだけの対象ではありません。感じる対象でもあるのです。』2024/06/28
Mits
4
初出が80年代なので、最後に「ここで終わり?」と思っちゃったのは仕方が無いことでしょう。でも、その時点までの天文学史を概観するには、とてもいい本だったと思います。もちろん、天文学はこれ以後も目覚ましく発展を続けていて、その話も聞いてみたくはあるのだけど、きっと素人には難しい状況になっていると思うので、ここまでならこれはこれでいいのじゃないかと。 ここから先のためにはきっと別のいい本があるでしょう。2011/12/09
maqiso
3
天文学は天変の観測から始まり、政府のために暦を作るために発展したが、精密な測定が容易だったので、近代になると位置天文学と天体力学が成立した。地上に比べて観察を始めやすいので学問としても近代科学としても古くからあるが、実験が難しいので現代では専門家内部に閉じがちというのが面白い。年代も地域も広いが、パラダイムに沿って説明しているのでわかりやすい。2020/07/04
ウヒュウゆいぞう
3
現代ほどの宇宙や惑星の知識もなく、観測器具もなかった古代において、調べられる範囲・考えられる範囲で、如何に古代人が世界を理解しようと努めていたかを考えると、例えそれが誤っていたとしても、敬意に似た感情を抱かずにはいられない。 それにしても、本書に限った事ではないが、学派の衝突とか、宗教上の理由で、仮説が一蹴されるくだりを読むと、とても口惜しい気持ちになる。2018/02/18
読書履歴
3
1984年朝日新聞社刊。2011年文庫化。黄道座標系は宿命占星術が栄えた西洋で盛んに用いられたが、16世紀に赤道座標系が導入され座標変換に球面三角法を用いた。東洋ではむしろ天変占星術が栄え、また東洋で利用された太陰太陽暦は天体現象密着型だったが、西洋の太陽暦は簡便で日常生活に便利だった、という感じで、1~5章までは、基本的に前近代の東西科学史を概観できる。6~8章では17世紀以降の流れを説明、結びで巨大技術ではなく適正技術としての天文学の健全な発展が提案され、各自が「宇宙観」を持つことが推奨されている。2013/10/21