講談社学術文庫
日本“聖女”論序説―斎宮・女神・中将姫

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  • サイズ 文庫判/ページ数 269p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784062920117
  • NDC分類 910.2
  • Cコード C0121

内容説明

継母の嫉妬からいじめにあう中将姫。継子いじめの物語はどうして「女の病」にむすびつき、純潔な聖女となっていくのか。天皇の代がわりごとに伊勢に仕える女性として選ばれる斎宮。未婚の内親王である彼女たちの密通とは。そして三輪明神が女神として描かれる能「三輪」―。さまざまな物語のゆくえをたどり、女性の聖なる力とは何かを考える力作。

目次

第1章 捨てられ姫の物語―中将姫と「女の病」(謎のお姫さま;津村順天堂の伝説 ほか)
第2章 斎宮の変貌―「聖」と「性」のはざまで(禁忌の姫宮;斎宮の誕生 ほか)
第3章 結婚しない女たち―鎌倉物語の皇女(斎宮のその後;物語の中の斎宮・斎院 ほか)
第4章 女神考―神のジェンダーをめぐって(「女神たちの日本」展から;女体の神の出現 ほか)

著者等紹介

田中貴子[タナカタカコ]
1960年京都府生まれ。広島大学大学院文学研究科修了。博士(日本文学)。現在、甲南大学文学部教授。専攻は中世説話文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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ヴェネツィア

233
著者は日本中世文学の研究者として著名な人。この人には、かつて『<悪女>論』という著作もあった。本書は、中将姫、斎宮(これが中心)、女神をとりあげ、様々な古典文献(聞いたこともないものも多い)を駆使して検証してゆく。かつて、この分野では長く、柳田國男の『妹の力』が君臨していた。著者は、その歴史的価値を認めつつ、ジェンダーの観点からそれを見据え直す。また、この人のスタンスは、フェミニズム論とは別の角度から、それぞれの時代の、あるいは普遍的・本質的な次元において、女であることの意味を考え続けているところにある。2013/01/23

Shoji

42
上代から中世にかけての古典文学や神話をじっくり読み込んで、「聖女」のルーツを解明しようとしています。古典文学に登場する女性に焦点を当て、奈良時代や平安時代の女性の心象を復元することで、恋愛、結婚、性愛といった女性の生理を考証しています。中将姫伝説や謡曲「三輪」、葛城の一言主神話など、奈良の文学や歴史の叙述も素晴らしい一冊でした。2018/12/12

りー

8
“女性の聖性”産む性故の神秘性は批判すべき、そもそも原始的な女性崇拝や女神信仰の源泉をたどろうとしても無理・・・という立場から書かれた本。そうしたものは男性が支配する文化のしくみによってつくりあげられたジェンダーだ、と。うーん、この本のどこを読んでも救いは無い。女はどの時代も苦しみ、穢れを負い、救われない存在であったのか?ものすごく苦しくなりました。神にあえてジェンダーを与えた「女神」から性を取り払ったとき、本当に聖なるものとは何か?という問いに未だ答は無いそうです。女性ならではの厳しい論考でした。2019/09/16

犬養三千代

7
女性の漢方薬、中将湯のネーミングの由来になった中将姫伝説をたどり物語の変容を追っている。そして圧巻は斎宮の部分を解説したところ。源氏物語から、鎌倉物語へと皇女の生き方を時代の物語から読み解く。皇女として産まれ回りに翻弄された人。また、准母として「家」を守った人。スキャンダルにまみれた聖女。色々な生き方をあぶり出す。鎌倉物語は低く見られてたそうなのだか、読本としては面白いのではと思った。現代語を探してみよう。2018/01/28

黒い森会長

5
「聖」なる女性について、考察した本。具体的には、中将姫、斎宮、そして中世における女神について、考察する。 特に、半分は斎宮について研究。古代から中世にかけての「変貌」、斎宮をやめた後の彼女たちの立場を描く。いつものように、中世における「鎌倉物語」や室町時代の物語を中心に、その時代の「共同幻想」を紐解いて行く。2020/04/10

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