内容説明
量子論と相対論に代表される二十世紀物理学は物質観を変え技術文明を一変させる一方、人類と地球の危機をも招来した。科学と平和とは。人間の創造性の本質とは。そして素粒子論の行方は―。日本人初のノーベル賞受賞者が自らの人生に真摯に向き合った思索の飛跡。小松左京氏との対話に加え、「この地球に生れあわせて」も収録。
目次
第1部 開放的世界観(私の人生観の変遷;科学と人生論;おりにふれて;科学と平和;宇宙と人間;この地球に生れあわせて)
第2部 象徴と創造(物質と思考;同定ということ;同定の理論序章;天才の諸相)
第3部 物理的世界(古代の物質観と現代科学;物理学的世界について;事実と法則;場の理論の基礎について;素粒子論の基礎について;素粒子の時空的記述;原子論と空間・時間の分割可能性;たとえ話)
著者等紹介
湯川秀樹[ユカワヒデキ]
1907年東京に生まれる。京都帝国大学卒業後、1932年京都帝国大学講師、1933年大阪帝国大学講師を兼ねる。1934年「中間子論」を発表、この業績により1949年、わが国初のノーベル物理学賞を受賞。日本学士院会員、京都大学・大阪大学名誉教授となり、1981年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
20
1971年初出。人生観は人が年齢と共に経験を積むに従って多少ずつ変わってゆく(1954年、14頁)。科学は中立冷静な立場で、真理を見つけ出してゆく(63年、48頁)。歴史は、人間一人ひとり、人類全体が作り出してゆくもの。絶望せずに、一人ひとりが参加することによって、新しい歴史を作ってゆく。平和のために努力する(同年、54頁)。いかにして戦争の起りえない世界を創り出すかが、現代人に共通の課題とならざるを得なくなってきた (同年、89頁)。 2014/09/29
roughfractus02
5
科学的合理性や論理(演繹、帰納)を駆使して従来の理論の統合や刷新を試みる場合、従来のフレームワーク自体を問い直し、隘路に陥る確率波高くなる。その際、他領域の考えを試行錯誤して、新たなフレームを作ることがままある。著者は自らの「飛躍」の例として『荘子』の譬え話を考える=類推する例を挙げる。意味・価値・解釈のシステムを組み替える論理学では仮説推量(アブダクション)、心理学ではゲシュタルト変換にあたるこの飛躍を巡る本書は、グループ研究と機械計算に重心移動して企業化つつある科学を危惧する著者の危機感が感じられる。2022/03/15
gaidara
2
創造性以外にも科学と平和など色々含む。素粒子論は読み飛ばした。2013/04/05
Toshiaki
1
湯川秀樹の著述集。素粒子論についての論文部分は歯が立たず飛ばしてしまったものの、それ以外の箇所は興味深く読むことができた。特に「同定ということ」や「物理学的世界について」には人間の創造性や科学の可能性に関する筆者の思索がよく表れている名文だと感じた。2020/12/12
home alone
1
湯川氏の講演や論文をまとめたもの。最後の方の場の量子論あたり(特に素粒子論)は半分も理解できなかった。予備知識ないと無理です。それ以外は分かりやすかった。いいと思う2012/08/09
-
- 和書
- 健康 実践を支える保育