内容説明
一二世紀末、ムワッヒド朝グラナダ大守の書記イブン・ジュバイルが美文で綴ったメッカ巡礼旅の記録。アレクサンドリア、カイロ、メッカ、メディナ、バグダード、ダマスクス、十字軍支配下のエルサレム…。カアバ神殿や大モスク、巡礼儀礼を克明に描き、苦難の長旅、諸都市の見聞を通して地中海東方世界事情を生々しく伝える中世「旅行記」の代表作。
目次
1 グラナダ~エジプト
2 メッカ巡礼
3 聖都メッカ
4 メディナ~バグダード
5 マウシル~アレッポ
6 ダマスクス
7 アッカ
8 シチリア~アンダルス
著者等紹介
藤本勝次[フジモトカツジ]
1921年大阪府生まれ。京都大学文学部東洋史学科卒業。関西大学名誉教授。専攻はイスラム文化史。2000年没
池田修[イケダオサム]
1933年兵庫県生まれ。大阪外国語大学卒業。大阪外国語大学学長、四天王寺国際仏教大学教授等を歴任。大阪外国語大学名誉教授。専攻はアラビア語学、アラビア文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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みやったー
5
書記イブン・ジュバイルのメッカ巡礼記。巡礼の最中目にしたものの記述で面白かったのは、エジプトの「ピラミッド」と「老婆の城壁」に関する箇所。 ピラミッドについては、その正体を「コーランに登場する古代のアラブの部族長とその子孫の墓」と考える者がいたらしい。 これは、コーランの記述と関連づけて古代の遺跡を解釈しようという試みで興味深い。また、現代でもなおその正体について異論があるピラミッドについて、「墓」という解釈がどこから生まれたのかも気になる。(つづく)2018/08/24
Saiid al-Halawi
4
初めて読んだ。地中海東岸でフランクとの領土のせめぎ合いが続く頃、アンダルシアからアッコン等の諸都市を経て巡礼しつつまたアンダルシアへ戻ってくる旅行記。同時代人のサラーフッディーン("信仰の公正"の意味)を褒めちぎってる。「徳と公正さで有名なサラーフ・アッディーンは例外である。この名は、その名を持っている当人にふさわしく、名称はそれが示す意味に一致している。他のすべての称号はこれと逆で、単に空気の震えであり、信頼が置けないと反駁された証言のようなものである。」(p.329)。なんという修辞学的素養。2012/01/30
ああああ
2
「1000年前」に「スペイン、アンダルシア生まれの公務員」が「キリスト教徒と相乗りの船」で「アフリカ生まれの人」たちと一緒に「中東旅行」する。まるで名詞が書かれたカードを入れ替える遊びのように、面白い状況だ。でも当時はそれが当たり前だったのかもしれない。はるか昔の旅行記のようでいて世界が近くに見えてくる。2013/01/30
Gladcolza Bambootail
1
中世スペインのイスラム教徒公務員が上司に無理矢理お酒強いられて泣く泣く戒律破って飲んだら上司が「ご、ごめん」的なお詫びにお金くれました→よっしゃせっかくだしメッカに巡礼に行くぜ!という話(!)。昔の旅行事情と昔のイスラム世界の生活を知るには最適です。生真面目に「神よ●●を嘉したまえ」的な敬虔な文言がやたらあって聖都メッカまで読みすすめるの苦労したのにメッカについたら建物や風物の美麗さをひとしきり称えたあと突然「やべえこの市場の果物うめええメッカの羊肉は世界一ィィ!!」テンションになったのはご愛嬌。
壱萬弐仟縁
1
世界史で、イブン=○○○のような人は、シーナーとかルシュドとかハルドゥーンの書いたよものなどの暗記だった。この本は、高校生は知らないイブンさん。しかし、地中海横断しつつ、当時の文物など克明に記録されているので、意欲的な生徒は借りてほしいもの。アリキサンドリアの美点の項目では、「スルターンの最も高貴な行ないのひとつに、外国人の旅行者に対して毎日二個のパンを支給する」(33ページ)とあり、異文化尊重の精神が共感できる。月の運行がかなり重要なことや、メッカの豊かな食糧確保にも感心。平安の都バグダードとは、イラク2012/10/07