内容説明
「蒋政権を相手にせず」との声明を出し「暴支膺懲」「聖戦完遂」のスローガンのもと、日中戦争和平への手がかりを消してゆく日本。事態が行詰まるなか「紀元二六〇〇年」の奉祝行事が営まれた昭和十五年は、表の華やかさと裏腹に国際情勢の変化につれて暗雲が兆し始めていた。米国の出方を警戒しつつも南部仏印進駐へと政策展開してゆく過程を検証。
目次
プロローグ 昭和十五年の日本
1 宇垣外相はなぜ辞めたか
2 汪兆銘をどうみるか
3 日中戦争の解決策はなかったか
4 近衛新体制とは何であったか
5 松岡外交は何を意図したか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
BLACK無糖好き
5
日米開戦は避けられなかったのか、との視点から上巻では日中戦争の行き詰まり、三国同盟締結、日米交渉、南部仏印進駐断行までをたどる。特に重慶の蒋介石との和平を目論んだ桐工作と銭永銘工作は大変興味深かった。日中和平協議に入る条件交渉はあったが際どい所で頓挫する。そもそも汪兆銘を担ぎ上げ南京に傀儡政権を作りながらの工作は無理があり、場当たり感は歪めない。軍部に臆することなく工作を進めていた当時のキーパーソン松岡外相が最後しりすぼみに終わったのは、特務機関の児玉誉士夫の脅迫があったとの行(p217)は思わず苦笑。2015/07/05
大道寺
3
『日中戦争への道』の続編的内容。上巻は宇垣和平工作から南部仏印進駐まで。日米開戦を避けられたかもしれない9つのターニングポイントをみていく。我々の普段の仕事の「なんでこんなヤバい案件受注しちゃったの」みたいな反省会に通ずるものもあり、面白い。2022/08/12
しわじい
0
292p このためには一刻も早く日独伊三国同盟、さらにソビエトをくわえた四国協商を結成して米国と対抗することが必要と考えたのである。すなわち松岡外交の核心は、毅然たる態度で三国同盟を結べば、米国は譲歩してくる、米国をして日本の既成事実と大東亜共栄圏を承認させ得るというところにあった。しかしそれは米国を最もよく知っているつもりの松岡の大誤算であった。2015/10/05
-
- 和書
- 手をたたきながら