出版社内容情報
笙野 頼子[ショウノ ヨリコ]
著・文・その他
内容説明
私は猫と出会ってこそ人間になった。猫を知らぬころの悲しみと知ってからの喜怒哀楽をひとつながりに眺めて笙野文学の確かな足跡を示す作品集。単行本未収録の「この街に、妻がいる」を収録。
著者等紹介
笙野頼子[ショウノヨリコ]
1956・3・16~。小説家。三重県生まれ。立命館大学法学部卒業。1981年「極楽」で群像新人文学賞受賞。選考委員の藤枝静男に絶賛される。91年『なにもしてない』で野間文芸新人賞、94年『二百回忌』で三島由紀夫賞、同年『タイムスリップ・コンビナート』で芥川龍之介賞、2001年『幽界森娘異聞』で泉鏡花文学賞、04年『水晶内制度』でセンス・オブ・ジェンダー大賞、05年『金毘羅』で伊藤整文学賞、14年『未闘病記―膠原病、「混合性結合組織病」の』で野間文芸賞をそれぞれ受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yumiha
31
剣道や柔道あるいは茶道や華道のような「猫道」と思い込んで読み始めた。それなのに猫が登場したのは、241ページ。それまでは延々と住む場所探しだった。オートロックや風水にこだわり、不動産業者やら男性編集者やらにメタクソに扱われるいきさつ。笙野頼子だもの、体調を乱し精神的にも追い詰められ夢と現を行き来する。私もいずれ引っ越さなければならないので、かなり身につまされた。そのプレッシャーをあれこれ数え上げ思い浮かべると、なかなか寝つかれなかった。また、全く猫と暮らした経験もないままに猫を飼い始めたいきさつに驚いた。2020/04/02
ふるい
16
生きるってしんどい。おまえはいったい何者か、と問われ続けることは。猫。ただ寄り添ってくれるものの有難さ。2018/11/10
ふくしんづけ
9
そこにあの人が立っていて、あなたはあなたですかと問うと、私は私の鏡像だと言うので、あなたはあなたの鏡ですね、と言うと、違う、私は影だ、と少し憮然として答えてくるのだ。そういう印象があった。影はいつまでもつかず離れず、その実感を掴めずにいるのだった。短編と長編合わせて七つの小説をひと続きの私小説と読むのは易い。だってそうじゃん、と一歩距離を取れば思うのだが、それでも文学という影は正体を失くしてついてくるのだ。何がここまで書きたがらないことを書かせるのか。映画監督のゴダールのような。明から朧になっていく世界。2020/12/17
nyanlay
5
初めての作家さん。本人も既述しているように『エッセイ』ではなく、『私小説』ですね。普段書かれているのは怪奇的な内容らしいので、きっとそちらは手を出さないと思います。図書館で借りて来て、プロフィールを読んで、難病を患っていると知りました。部屋を探している件で体調不良が度々出て来たけれど、診断前だったのでしょうね。知り合いの姿と重ねてしまいました。2017/06/13
葛井 基
3
ものすごく難解で抽象的なだけど心情がわかる観念小説から始まって、居場所もなかった作家が、猫と暮らすという呪文が現実となってヒトになっていく。いつにも増して心を抉る作品集。2017/03/24